かくも悩ましいベスト3シリーズ選び
330iのエンジンも絶品だ。最大トルクはディーゼルと同じ400Nmで、しかも発生回転数は200rpm低い1550rpmから。こちらはシングルのツインスクロールターボだが抜群の応答性をみせる。超低回転域のドライバビリティだけでも直4ターボで世界一と言えるが、見所は回していったときのスポーティさ。6700rpmまで弾けるように吹け上がっていく。普段使いでは320iでも十分と思わせるが、こういったステージで走らせるとその差は小さくなく、パワーの大きさがドライビングプレジャーに直結する。
電子制御可変ダンパーがハードになるスポーツモードで走らせると、コンベンショナルサスよりも初期のロールスピードが抑えられているので、ややミズスマシ的な動きに近づくが、それでもコーナリングのプロセスはしっかりと感じ取れてコントローラブル。なおかつ荒れた路面での追従性がワンランク上に感じられる。ソフトにしておけば乗り心地もわずかながら勝っているので、やはり電子制御ダンパーのほうが守備範囲が広いと言える。ただ、コンベンショナルサスもかなりいいので選択は悩ましい。
330iでもライバル達が霞むほどのダイナミクス性能を見せつけるが、M340iに比べるとFRゆえにアンダーステアやオーバーステアに陥りそうな場面があり、アクセルを踏み込むタイミングを少し待ったり、曲げる時間をやや多めにとったりすることはあった。それもまたじっくりとクルマと対話しながらのドライビングを楽しめるが、M340i xDriveはそれだけ高度なハンドリングの持ち主であるのは間違いない。
エンジンやサスペンション、ディファレンシャルの違う4台に乗ってみて感じるのは、G20型3シリーズはスポーツセダンを再定義し、最高のダイナミクス性能を追い求めて開発されたということだ。SUVが巷に溢れ、電動化や自動運転、コネクテッドなどに話題が集中する中で、低全高なセダンだからできることを追求。3シリーズとしての価値を最大化したのだ。
そのために剛性の高い新世代プラットフォームをいかして、快適性を損なわないギリギリまでサスペンションを締め上げている。ストロークはスムーズなので動きのクオリティが高く、もっともハードなM340i xDriveでも乗り心地はそれほど悪くない。路面状況によっては硬さを感じることはあるが、スポーツセダンを求める向きには納得できる範囲だ。
18インチ+コンベンショナルサスvs19インチ+アダプティブMサスペンションは甲乙つけがたい。後者のほうがサスの守備範囲は広いが、前者の小さいタイヤのほうが路面変化による乗り心地の変化幅少なく安定しているからだ。
3シリーズはコネクテッドやADAS(先進安全技術)でもトップランナーだ。渋滞した高速道路という運転を楽しめない状況でハンズオフ機能が使えるのは合理的で、誰にとってもありがたい装備といえるだろう。
最後にベスト3シリーズを挙げたいのだが、これがかなり悩ましい。実走行時の排ガス性能が問われるようになってからフィーリングは落ちる傾向にあるディーゼルなのに、信じられないほど良くなっている320dxDriveの完成度にも惹かれるし、320iの素の感覚も悪くない。ドライビングプレジャーとコストのバランスに優れているのは330iであり、センターオブ3シリーズといったところだ。だがここは、スポーツセダンの最高峰を目指したG20型を象徴するM340iをベストとしておこう。懐具合さえ許せば、確かな満足感を得られるはずだ。