共通するのは気持ちいいハンドリング
2019年3月の発売当初は330iと320iからスタートしたが、今ではラインアップがほぼ出揃った3シリーズ。今回集結したのはプラグインハイブリッドの330eをのぞく日本仕様の全エンジンバリエーションだ。3シリーズがもっとも輝くワインディングロードでの比較試乗を中心にベストなモデルを探っていくことにする。
M340i xDrive以外はすべてMスポーツだが、330iはファスト・トラック・パッケージを選択しているため19インチタイヤ、Mスポーツディファレンシャル、アダプティブMサスペンションを装着する他、Mスポーツブレーキが標準。320iと320d xDriveは18インチタイヤにコンベンショナルサスペンションで、Mスポーツディファレンシャルはなし。M340 xDriveはアダプティブMサスペンションとMスポーツディファレンシャル、大径Mスポーツブレーキが標準装備となる。
320iは1560kgと軽い車両重量によって走りは軽快だ。同じ2Lターボの330iに比べて最大トルクは100Nm落ちの300Nmになるが、より低い1350rpmから発生するだけあって発進加速は頼もしく、2000rpm前後の常用域も充実していて日常使いでは何の不満もない。
ワインディングを元気に走り回っていると、高回転域ではもうひと伸び欲しいかもしれないと思わせるが、単体で乗っている限りは十分だと納得できる。
ハンドリングも軽やかだ。G20型はシャシーも全面的に進化しているが、なかでもフロントサス取り付け部にアルミダイキャストを採用してフロント周りの剛性が50%も向上しているのが肝でもある。コーナーでは、その剛性感の高さゆえ操舵感がじつに頼もしく、低重心化とワイドトレッド化も相まって最高に気持ちいいハンドリングを堪能できるのだ。
コンベンショナルサスには、ストローク依存型の可変ダンパー(電子制御ではない)が採用されている。フロントは伸び側、リアは縮み側で作用し、ストローク初期はソフトで17mm程度から徐々にハードになっていく。そのため、コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと、最初は比較的早めのロールスピードでスッと前輪の外側に荷重がのっていく。その後は高いロール剛性をみせながら左右のタイヤから効果的にグリップを引き出してグイグイとノーズを引き込むのだ。その動きによってコーナリングのプロセスがわかりやすく、ドライバビリティを高めている。ただロールを抑えてミズスマシのように動くだけではなく、自然な感覚で曲がっていくから一体になれる。
320iはそんな3シリーズの素の良さが存分に味わえた。パワーに対してシャシーは余裕ありすぎ、という気がしなくもないが、安心してハンドリングを楽しめる。
320d xDriveのエンジンは、以前にも増して静粛性が高く、また低回転域のドライバビリティが進化していた。VTG(可変タービンジオメトリー)のロープレッシャー用とノーマルなハイプレッシャー用の2ステージツインターボは、数ある4気筒ディーゼルのなかでも応答性が飛び抜けて良く、回転上昇もスムーズで4200rpmまで綺麗に回る。もちろんBMWのガソリンに比べればスポーティではないが、じつに良くできたディーゼルなのだ。街中や高速道路では無類の扱いやすさがあり、移動の足と考えれば最高だと思えた。
これもコンベンショナルサスだが、xDriveによってシャシー性能は一枚上手だった。安定感があるのはもちろんだが、コーナー進入時にもFR以上に良く曲がってくれるのだ。各種センサーから得られた情報から走行状況を読み取り、先を見越して前後トルク配分を積極的に可変していくxDriveは、4つのタイヤの限界内ならばアンダーステアやオーバーステアを見事に抑制する。しかも違和感が少なく、ひたすらドライバーを気持ち良くしてくれるのだ。それにしてもびっくりするくらいハンドリングがいいなと思って車検証をチェックすると、このモデルだけ前後重量配分がきっちり50:50だった。