北海道の尾根を越える標高1139mの国道峠
国道273号は道内の国道では最も高い場所をゆく道で、最高地点の三国峠は標高が1139mに達する。峠のトンネルは、石狩・北見・十勝という3つの地方を隔てる三国山(1541m)の山頂近くを貫いており、さらにその北西には北海道の最高峰、標高2290mの旭岳を主峰とする大雪連峰も連なっている。いわば北海道の尾根を抜けていく道なのだ。
三国峠の南に架かる高さ30m、全長330mの松見大橋。ゆったりとしたS字カーブで原生林の大樹海をひと跨ぎにする。
北の上川町側から国道273号を走ってきて、三国峠の長いトンネルを抜けると、目の前には絶景が広がる。眼下の十勝三股盆地は約50万年前の噴火で形成されたカルデラ地形で、大量の土砂に埋めつくされた現在は、トドマツやエゾマツが生い茂る大樹海となっている。原生林の向こうにはクマネシリやウペペサンケといった東大雪の山々がそびえ、手前には原生林の海を渡るかのように松見大橋が美しい弧を描いている。
三国峠から上川町方面へ30㎞ほど走ると層雲峡。大雪山の雪解け水が柱状節理の岩壁を流れ落ちる滝を見ることができる。
大分水嶺をなしている三国峠の周辺は、天候の変化が目まぐるしく、雲海が発生することも珍しくない。原生林の大樹海の上に雲の海が押し寄せてくる様子は、ほかでは決して目にできない感動的なシーンである。
アクセスガイド
三国峠までは、十勝方面からだと道央道を帯広音更ICで降り、国道241号と273号を走って約85km/2時間の道のり。旭川方面からは旭川紋別道(無料区間)の上川層雲峡ICから約50km/1時間半ほど。上川町から上士幌町までの約110kmの区間には、ガソリンスタンドが1軒もなく、国道273号・三国峠の前後(大雪湖〜三股)には民家さえ一軒もないのでガス欠には注意が必要。峠越えの前に満タンにしておくことをお勧めする。
Data
雲海遭遇率 ★★
雲海の季節 通年
◎所在地/北海道上川町、上士幌町
◎ルート/国道273号・糠平国道
◎区間距離/約54km
◎最高地点/標高1139m
◎冬季閉鎖/なし
【A】ぬかびら温泉郷 湯元館
湯量豊富な源泉掛け流しの湯を堪能
糠平湖南岸の緑豊かな大自然のなかに湧くぬかびら温泉郷。この湯元館は森の中にひっそりとたたずむ静かな温泉旅館で、湯量豊富な源泉掛け流しの湯が自慢。混浴と女性専用の露天風呂もあり、日帰り入浴も可能だ。経営者が高齢のため、現在は素泊まりが基本となっていて、簡単な食事の持ち込みはOK。
●日帰り入浴料800円(13:00〜20:00)/TEL 01564-4-2121/上士幌町ぬかびら源泉郷
【B】三国峠cafe
絶景を眺めながら本格コーヒーを味わう
麓のぬかびら温泉郷に住む若いご夫婦が経営している峠のカフェ。三国トンネルの上士幌側駐車場にあり、眼下の絶景を眺めながら自家焙煎の本格コーヒーを味わうことができる。一番人気は奥様の淹れる可愛いカフェラテ(580円)。手作りケーキやアイスクリームのほか、カレーディップトーストなどの軽食類も用意している。
●8:30〜16:30/定休なし(11月〜4月中旬休業)/上士幌町三国峠
【C】ナイタイ高原牧場
緑のじゅうたんが地平線まで広がる
三国峠の南麓、ナイタイ山の中腹に広がる上士幌町が運営する放牧地で、公共牧場としては日本一の1700ヘクタール(東京ドーム358個分)の広さを誇る。一面に広がる緑の牧草地のなかに気持ちのいいワインディングロードが延び、レストハウス付近からは広大な十勝平野を一望にすることができる。
●入場無料/10:00〜17:00(11月〜4月閉鎖)/上士幌町字上音更85-2
観光情報
層雲峡観光協会 TEL 01658-2-1811
上士幌町観光協会 TEL 01564-7-7272
文:佐々木 節/撮影:平島 格
『雲海ドライブ&スポット』より転載。掲載データなどは2017年8月末時点のものです。実際におでかけの際は、事前に最新の情報をご確認ください。