富士スピードウェイを安心して攻めていけるセッティングで市街地にも対応
日産ワークスといえばNISMO(ニスモ)。最近ではR32~R34の第二世代スカイラインGT-Rの純正部品を復刻生産する「NISMOヘリテージパーツ」といった活動もしているが、やはり日産ユーザーからすると、その魅力はレース活動から得られたノウハウをフィードバックしたチューニングにある。
さて、そうしたスポーツ派のユーザーに向けて、NISMOが提案しているコンセプトが「クラブマンレーススペック(CRS)」というもの。具体的には、サーキット走行を一日楽しみ、自走で帰宅できることをイメージしたチューニングだ。今回、試乗できたのは2103年モデルのGT-Rをベースとしたクラブマンレーススペックだった。いよいよ2回目の車検も過ぎ、チューニングが本格化していくであろうということで中期型のデモカーを仕立ててきたというわけだ。
その仕様は隙のないもので、まずエンジンはオーバーホールを実施したのちに、ターボチャージャーやカムシャフトを交換、コンピュータに専用プログラムを書き込んだ「S1」と呼ぶトータルチューンが施されている。さらにノーマル比で8kgも軽量化するチタン製マフラーや排気効率を上げるスポーツキャタライザーも備わる(いずれも適合確認中)。
駆動系ではフロントに1.5WAYタイプの、リアに2WAYタイプのLSDをインストール。サーキットでの確実なトラクションを確保する。サスペンションはオーリンズ製4WAYダンパーをオリジナルセッティングしたもの。フロントのアッパーリンクやリアのスタビライザーなどもオリジナルパーツに交換される。
エクステリアではドライカーボン製のエンジンフード(開発中)のほか、フロントアンダースポイラー、フロントフェンダー、サイドスカート、リヤアンダースポイラーなどでスタンスの効いたシルエットを実現。空力特性を改善するアドオンリヤスポイラーやリヤディフューザーフィンセット(いずれもドライカーボン製)はダウンフォースの増大を期待させるアイテムだ。
NDA(日産ドライビングアカデミー)の副校長であり、デモンストレーション走行のドライバーを務めた柳田真孝選手によると「レース仕様よりパワーが出ているんじゃないかと思うほどパワフルですが、安心して乗ることができるよう仕上がっています。富士スピードウェイに合わせてセッティングした状態ですが、とくに100Rのようなアマチュアには難しいコーナーが乗りやすいと感じます」という。
試乗コースとなったのは、低速でタイトコーナーが続くツインリンクもてぎ北ショートコースで、富士スピードウェイ用セッティングにはミスマッチかと思ったが、実際に走らせてみると、けっして乗りづらいということはない。アクセルを全開にしてもトラクションが抜けてしまうようなことはなく、またステアリングを大きく切るようなタイトコーナーでもしっかりと向きを変えていく。そのまま加速すればフロントでボディを引っ張るように出口に向かって加速する。4WDのアンダーステア感もなければ、リア駆動の不安定さもない。本当に安心して走らせることができる。
ブレーキシステムはノーマルのため走行後にはクーリングしたいところだが、10分程度の連続走行では制動力が甘くなるようなことはなかった。たしかに、この仕様であればどんなサーキットでも楽しんで走ることができる。ただし、前後に装着したLSDやサスペンションのセッティングにより低速域でのガチガチ感はあるし、車庫入れなどでは、いかにもチューニングカー的な扱いづらさもある。とはいえ、サーキット走行での余裕を考えれば、この程度は我慢すべき範囲といえるだろう。
前述の「NISMOヘリテージパーツ」といった活動からもわかるように、NISMOはGT-Rの走りを維持することを目指している。それはノーマル状態をキープするということにとどまらない。メーカーがアップデートしてきた最新モデルと同等か、それ以上の走りを実現していることがワークスチューニングたる所以だ。