ブガッティ伝説の恐るべき継承者
「21世紀最初の10年を代表するスーパーカー」。その称号に最も相応しいクルマといえば、恐らく誰もが「ブガッティ16.4ヴェイロン」の名を挙げるに違いない。1999年の東京モーターショーにて参考出品された6年後、2005年の同じく東京モーターショーにて生産型が正式発表されている。その名は、1939年のル・マン24時間レースにてブガッティT57Gを駆って優勝したフランス人レーシングドライバー、ピエール・ヴェイロンの名前に由来する。
この写真は2011年ジュネーヴ・ショーで発表された「グランスポーツ・ヴィテッセ」。オープントップのボディに1200psエンジンを組み合わせた「究極のヴェイロン」である。
ヴェイロンで何より話題を呼んだのは、その圧巻のパフォーマンスだろう。コクピット背後に搭載されるのは、8.0L W型16気筒エンジン。これに4基のターボチャージャーを装着し、標準モデルでも最高出力1001ps。そして最大トルク127.5kg-mというまさに驚異のスーパースペックを誇る。 駆動方式はフルタイム4WD。トランスミッションは7速DSGを組み合わせ、最高速407km/h、1-100km/h加速2.5秒という、市販車としては世界最速(デビュー当時)となる、 まさに驚異的なスペックを獲得していたのだ。
すべてのヴェイロンに共通する力感溢れるスタイリングは、VWグループの社内デザイン。
一定の速度を超えると上昇するリアウイングは、フル制動時にはエアブレーキの役割も果たす。
しかし1000ps超のパワーと400km/h超の最高速は簡単に得られるものではない。エンジンや駆動系、あるいはミシュラン社と共同で開発された専用タイヤに至るまで、試作車から抜本的な見直しを余儀なくされた。それがショーデビューから生産型リリースまで6年も要してしまった理由である。
かつてエットーレ・ブガッティが徹底追求し た芸術性を意識し、最上のマテリアルでシン プルにまとめられたインテリア。数多く制作 された限定バージョンでは、さらにエクスクルーシヴな空間が実現されることになった。
マッシブで個性的なボディは、VWデザイン部門のH.ヴァルクスが責任者となって開発。メインモノコックはカーボンで、前後フェンダーとドアがアルミで構成される。一方、インテリアは驚くほど上質なレザーとアルミ、カーボンで構成されており、デザイン/仕上げともに、従来のスーパーカーの常識を超越した美しさが追求された。
V8を二基連結したW16エンジンに、4基のタ
ーボを組み合わせたパワーユニット。標準モデルでも最高出力1001ps、最大トルク127.5kg-mを発生した。
デビュー後のヴェイロンには、タルガトップの「グランスポーツ」、あるいは1200psまでスープアップした「スーパースポーツ」などの派出モデルが続々と追加されたのち、2015年2月に生産を終了。あらゆる点でスーパーなブガッティ・ヴェイロンは、まさしく現代を象徴するスーパーカーとして、歴史の幕を閉じたのである。