EVの負のイメージを根本から払拭した「BMW i3」【世界の傑作車スケルトン図解】#19-2

EVの泣き所は航続距離だがレンジエクステンダーもあり

今あるEVの中でもi3には特別な存在感がある。もちろん理詰めでことを進めるドイツ的設計ゆえとも言えるが、それよりむしろ理想主義的と見える感性を持つことに魅せられる。たとえばEVは搭載バッテリーのせいで車重が重くなるが、i3はそれを当然とはせず、CFRPとアルミ合金で軽量化して、重量的ハンデを消し去った。自動車は鉄で出来てるのが相場だから、これは英断だ。なぜなら生産手法からすべてを変えていく必要があるからだ。しかしEVに限らず、自動車の未来に軽量化技術はとても重要。だからあえてこの時点で新しい素材と生産技術に挑戦したわけだ。

EVはモーターの大トルクのおかげで発進は力強いが高速になると非力、重いバッテリーのせいで機敏な走りが苦手、そんなイメージを根本から払拭したのがBMW i3だ。

チャレンジではあるが得るものも多い。この新素材は生産工場で必要とするエネルギーが従来よりも少ない。おかげでi3を生産するライプツィヒ工場は風力発電による循環型エネルギーのみで稼働している。

クリーン&エコなコンセプトは細部まで徹底。ケナフを使ったトリム、繊維強化ナイロン樹脂のシートバックフレーム、斬新なダッシュボードを裏で支えるのはマグネシウムダイキャスト製だ。

BMWのクルマづくりには「駆けぬける歓び」というスローガンがある。躍動的で運転して楽しくなければクルマじゃない、ということだ。これはi3においても貫かれている。だからi3は後輪駆動だし、前述の軽量さに加え、ほぼ前後均等な重量配分で軽快なハンドリングを見せる。大径・幅狭なエコタイヤを履いていて、それでもなお機敏なのだから脱帽する。

i3は技術革新の塊。キャビンは構造接着で組み立てられた軽量なCFRP製モノコックで、金属と違い大型プレスも溶接も不要。シャシーはアルミ押し出し材とダイキャストというハイテク&エコ。

モーターはIPMSM(埋込永久磁石式同期モーター)という最新の方式を採用。これは通常の同期モーターに見られる磁力によるトルクだけでなく、リラクタンストルク(磁気抵抗が小さくなる方向に働く吸引力による)も利用するハイブリッドな仕組みなのだ。

i3のバッテリーは車重の軽さを利して、同等の航続距離を持つ競合車より小さめ。これには充電時間も短めという副産物も。

前者のトルクは低速域で大きく、後者は相対的に高速域にトルクの山がくる。これを上手く組み合わせる制御を与えることにより、i3のモーターは低速一点張りでなく中速以上までしっかりトルクを出し、伸びやかな加速性能を得ている。だから並みのEVのように「発進は力強いが高速は伸びない」ような眠たい出力特性ではないのだ。

BMWが現在のEV技術で市場性ありと見るジャンルはふたつ。i3のようなEVタウンカーとi8のようなプラグインハイブリッドスポーツカー。i8はエンジンで後輪を駆動し(走行中に充電もする)、モーターでフロントを駆動する。

またi3の軽量さにはバッテリーが他車より小さめということも効いている。車重が軽いのでバッテリーは小さく軽い方が良いという判断だが、とはいえ航続距離は他車に見劣りしない。さらにi3にはレンジエクステンダー(発電用小型エンジン)という隠し技もある。重量は120kgほどだが、9.0Lの燃料で約100km航続距離を伸ばす。大型バッテリーを搭載するよりも安心感は上だ。バッテリー技術は急速に進歩し、モデルライフ中期を迎える頃には同サイズのバッテリーで数10%もの性能向上が予測されており、この意味でも今のバッテリースペース設計は正解なのかもしれない。

解説:竹平誠

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