DBXは実際に触れてもらえばアストンマーティン以外の何物でもないことがわかります
8月某日、アストンマーティンのアンディ・パーマーCEOがひさびさに来日? 帰国? されていた。常日頃からこのタイミングでそこまで語っちゃっていいんですか? と聞き手が驚くぐらいメディアに対してもフレンドリーな方らしく、今回はプライベートな短い滞在の中で時間を割いて、グループインタビューというかたちではあったが僕達のリクエストに応えてくださった。
昨年の10月にロンドン証券取引所に株式を上場したアストンマーティンは、ここまで他のプレミアム・スポーツカーのブランドではかつて見たことないほど立て続けにニューモデルのローンチや新工場の設立などの攻めの姿勢を見せてきたが、英国のEU離脱などの先行き不安な要素が影響してか、この春、株価を下げた。が、アストンマーティンはその辺りを冷静に分析し正確に把握している模様で、パーマーCEOが就任してからの成長は現在も続いているようだ。
「全世界での実売で見ると、実は対前年比で26%増えているんです。アメリカ市場ではほぼ倍。日本でも40%増です。そんな自動車メーカー、他にはあんまりないでしょう。そうした推移をちゃんとお伝えできてなかったのですが、成長率としては好調なのです」
グループインタビューはその辺りのおかたい話題からスタートしてしばらくその分野のお話が続いたが、相変わらず好調であるということが明確に理解できたということだけお伝えすることにして、クルマ好きとしてワクワクするわけでもないお話は割愛。ただひとつ、パーマーCEOはそこに関連して興味深いことを語られた。話題がアメリカ市場の好調に及んだときだ。
「ひとつはヴァンテージの売れ行きが伸びていることですね。デビュー当時はそれまでのアストンマーティンとのイメージの違いに戸惑いがあったようですが、そのルックスに慣れて、魅力的なものとして受け入れてもらえるようになりました。そしてもうひとつは、リースのプログラムを導入したことです。アメリカ市場ではリースで購入する人が圧倒的に多いのです。ちなみに日本でもつい最近、同様のリース・プランをスタートしました。頭金は他のブランドと較べてちょっと高めですが、毎月の支払額は半額ぐらいです」
これまで手が届きそうにないと半ば諦めていた人や、少しでもリーズナブルにアストンとつきあいたいと考えてる人には朗報だろう。
パーマーCEOが打ち立てたセカンド・センチュリー・プランがほぼ計画通り順調に進んでいることや、今後のモデル展開については、今年の5月、同社の副社長兼チーフ・マーケティング・オフィサーのサイモン・スプロール氏に聞かせていただいていて、そこに変更はないようだ。なので、これから登場が予定されている個々のモデルについて、もう少し深くお話をうかがうことにした。
まずは今年の12月頃に発表予定とされている、アストンマーティン初のSUV、DBXについて、だ。タイミングとしては開発の最終段階に入り、生産に向けて力を注いでいる頃合いだろう。パーマーCEOはカー・ガイとしても知られているから、当然ながら御自身で試乗もされてることだろう。
「もちろんです。何度か乗ってますよ(笑)。量産型ではなく、開発を進める過程での試作車ですが、オンロードだけじゃなくてオフロードも走らせています。このカテゴリーでは最も高いハンドリング性能を持っていますし、アストンマーティンらしいクルマに仕上がっていると思いますよ。世界で最も美しいクルマを作るというのが私達のDNAなので、それがSUVであっても、やっぱり美しくなければいけない。そしてハンドリングも、アストンマーティンらしくなければなりません。最終的には皆さんに判断していただかなくてはならないわけですが、実際にDBXを見て、走らせて、サウンドを耳にしていただければ、アストンマーティン以外の何物でもないということを感じとっていただけると思います」
僕達ファンとして気になるのは、クルマの成り立ちは具体的にどういうものなのか、ということだ。スプロール氏によれば、サイズは大柄で、おそらくV8エンジンを搭載し、AWDのシステムはメルセデスのものを利用する、ということだった。パーマーCEOは“巨額を投じて他メーカーと同じような技術を開発するのはナンセンスだ”と公言しているが、それはどこまで及んでいるのだろう?
「具体的なことは、クリスマスまで待ってください。私達からのクリスマス・プレゼントです(笑)。ただ、リスクを抑えるという点からも、流用できるものは最大限活用していくべきだと考えているのは確かです。だからDB11やヴァンテージから流用するものもありますし、メルセデスAMGからのものもあります。DBXはボディもプラットフォームも全く新しいものになります。プラットフォームについてはメルセデスのものを利用するという選択肢もありましたが、これまでにスチール製のプラットフォームを自分達だけで生産するという経験がないので、リスク軽減や設計・デザインの観点から、ほかのモデルと同様のアルミ製プラットフォームを採用するべきだろうという結論になりました。リスクを最小限に抑えて品質を最大限に引き上げる、というのが私達の哲学のひとつなのです」