【国内試乗】「ラングラー」こそがジープの正統後継車

買い物から家族でのドライブまでこなすブラッシュアップ

そんなモデルでありながら、ルビコンは日常域での快適性にも差し障りはない。乗り心地は細かな突き上げも丸く収め、無駄なバウンジングや派手なロールに見舞われることもなくフラットかつスムーズに速度を乗せていく。先代からの大きな進化点である静粛性についても他モデルに劣るところはないが、高速域ではタイヤ由来の高音的なノイズが増すのは致し方ないところだ。その特性を思えば、コーナーでは無理せず、速度は控えめにというのがルビコンの正しい乗り方ということになろう。ちなみにこのモデルはピュアオフローダーでありながら、ACCやブラインドスポットアシストなどのADASも標準で用意されている。

ルビコン専用の17インチアルミホイールには、マッド&テレインタイヤが組み合わされるほか、標準仕様のサイドステップは車体のダメージを緩和するロックレールへと変更される。

ルビコンを含めたアンリミテッドを日々のアシとして扱うに、その敷居は高くない。操作に対する応答の穏やかさは悪路走破において欠くことのできない要素だが、街中での交差点や駐車時などの繊細な速度コントロールには、それが扱いやすさに少なからずプラスとなる。そして新型では後席の居住性も高められており、大人4人のロングツーリングさえそつなくこなしてくれるだろう。相変わらず気遣うことといえば高床ゆえの乗り降りのしずらさや、ロングホイールベースゆえの小回りの効かなさくらいだろうが、それとて絶望的なほどではない。JL型ではバックカメラもスペアタイヤカバーの中央に据えられ、視認の平衡性が高まっている。先代を購入したユーザーの多くに該当するだろう、平日はお母さんが買い物などに使い、休日はお父さんが運転して家族でドライブというファミリーカー的な用途にも丁寧なブラッシュアップの跡は端々みてとれた。

リアシートを倒すと約2,000Lの広大なカーゴルームが出現。

とはいえ、ルビコンの本懐がどこにあるかといえばゴリゴリにハードなオフロードセクションだろう。その名の由来は、ジープが長きに渡って性能指標のテスト地にしているユタ州の山間路にあるが、以前そこを先代のアンリミテッドで走った時は、ロングホイールベースをものともしない強力無比な走破性に心底驚かされた。

独立した副変速機を持つのは、昔も今も変わらぬジープのアイコン。新型ではマニュアルで切り替える伝統的なパートタイム4×4に加え、自動的に前後輪に駆動力を分配するフルタイム4×4システムを初採用。

もちろん、日本で使うにそこまでの能力を発揮する機会は滅多にない。が、とかく独善的になりがちな自動車趣味において、家族や仲間や日常生活との調和をとりながら、ドライビングプレジャーだけでなく自らのポリシーもライフスタイルまでもアピール出来るクルマとあらば、このラングラーシリーズに勝るものはないと思う。

リポート:渡辺敏史/T.Watanabe フォト:郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年8月号より転載

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