往年のレーシングカーがアチラコチラに! ファン垂涎のイベント
ヨーロッパやアメリカで数多く開催されているヒストリックカー・イベントの中でもぜひ一度見てもらいたい! と思うもののひとつが、イギリス・グッドウッド・サーキットで毎年春に行われる「グッドウッド・メンバーズ・ミーティング」である。なぜなら1900年代の太古車から2000年代のLMPマシンまで、様々なジャンルを対象としたこのイベントこそが、世界のヒストリックカー・レースのトレンドを作り出す源泉となっているからだ!
7月のフェスティバル・オブ・スピード(FoS)、9月のリバイバル・ミーティングに続く、グッドウッド第3のイベントとして2014年にスタートしたグッドウッド・メンバーズ・ミーティング。
そもそもはグッドウッド・サーキットを設立した第9代リッチモンド公爵が、自身も所属するブリティッシュ・オートモービル・レーシング・クラブのメンバーのために1948年から66年にかけて開催していたレースイベントであったが、孫の第11代リッチモンド公爵(当時はマーチ卿)が、グッドウッド・ロード・レーシング・クラブのメンバー専用のヒストリック・イベントとして復活させたものだ。
その最大の特徴は、1966年以前という厳格なレギュレーションのもとで行われるリバイバル・ミーティングと違い、グッドウッド・モーターサーキットを舞台に1900年代のクルマから、2000年代のレーシングマシンまで幅広い年式を対象としたレースプログラムを毎年実施していることだ。そしてここで注目されたカテゴリーが、のちに各地のヒストリック・イベントに広まるというトレンドセッターとしての役割も果たしている。
そんな彼らが今年ピックアップしたのは、誕生50周年を迎えたポルシェ917、生誕60周年を迎えたBMCミニ、創立100周年を迎えたベントレー、さらに1979~80年にかけてF1ドライバーを擁して行われたBMW M1プロカー・レースや、2000年代のNASCAR、そしてLMPカテゴリーなどであった。
このうちBMCミニに関しては、60台ものエントリーを集めて(実際の応募は200台もあったという!)ワンメイク・レースを開催。土曜に30台ずつの予選レースを行い、日曜に勝ち上がった上位15台ずつ、合計30台による決勝レースを行ったのである。そのすべてが1967年までに製造されたMk1というだけでも驚きだが、今イギリスで最も熱いミニのチューナーで、ミニ遣いとしても知られるニック・スウィフト、昨年のヒストリックF1のチャンピオンであるニック・パドモア、さらにアストン・マーティン・ワークスのエースであるダレン・ターナーなど、ハイレベルなドライバーが勢ぞろいする、まさにドリームレースの様相となったのである!
もちろん予選レースから、各所でサイド・バイ・サイド、テール・トゥ・ノーズの白熱した争いが各所で繰り広げられ、1周3.8kmのコースサイドを埋め尽くした観客(入場料はメンバーでも2日間で141ポンドと高額なのだが、チケットは完売だった!)は大興奮。日曜の決勝レースではニック・スウィフトとニック・パドモアの息の詰まるような近接バトルがオープニングラップから繰り広げられた末、最終ラップの最終コーナーでスウィフトが逆転勝利を挙げるというドラマティックな展開となった。
一方、50周年を迎えたポルシェ917(この後も各地で様々な催しが行われるようだ)に関しては、昨年ポルシェ・ミュージアムでレストアが完成したばかりの1号車917-001をお披露目した上で、1970年のル・マン・ウィナーであるリチャード・アトウッドと、元LMP1クルーのマーク・ウェバーがドライブを披露。さらにガルフカラーの917K、1971年のCan-Amマシン917/10、1972年のCan-Amチャンピオン917/30、1975年のインターセリエ・マシン917/30(917/20)という917の各モデルが集結。デレック・ベルやニール・ジャニらが乗り込みデモランを行ったのである。
もうひとつ注目を集めていたのが、2000年代のLMPマシンを集めて行われたデモランだ。実はヨーロッパでは一昨年からヒストリックLMPのレースが開催されており、今回もベントレー100周年を祝してベントレーが持ち込んだ2003年のル・マン・ウィナーカー、スピード8(ドライブしたのは当時の優勝クルーであるトム・クリステンセンとガイ・スミス!)を筆頭に、個人所有(!)の2000年型アウディR8、2012年型のプジョー908HDi FAP、2015年型のアルピーヌA450Bなど10台以上のマシンがハイスピード・ランを敢行。もうこの時代のマシンですらも、コレクターズアイテムになっているのだということを、まざまざと見せつけられた。
この他にもBMW M1プロカーのデモラン(台数が少なかったのが残念)や、1920年以前の太古車によるレース、1970年代のツーリングカー・レースなど、様々なプログラムが用意されていたのだが、ヒストリック以外にも大きな話題がふたつあった。
ひとつ目は、先日のジュネーブ・ショーで生産型が公開されたマクラーレン・セナGTRをマクラーレン・オートモーティブ(このイベントのスポンサーでもある)が持ち込み、ブルーノ・セナのドライブで世界初のデモランを披露したこと。そしてふたつ目はロンドンの超低排出ゾーン(ULEZ)規制に合わせてピニンファリーナが開発した1900psを誇るEVスーパーカー、ピニンファリーナ・バティスタのワールドプレミアが行われたことだ。
このようにたった2日間ではすべてを消化することができないほど、様々なニュースと話題に溢れていた77thグッドウッド・メンバーズ・ミーティング。まだ日本では馴染みの薄い存在ではあるが、彼の地のトレンドを知るという意味でも、ぜひ一度見ていただきたいイベントである!
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