「クールジャパン」のレーシングコンストラクターが復活! 再び動き出した「童夢の野望」とは? 【後編】

将来的にはロードゴーイングスポーツカーを出したい

そこに4月1日から50%スケール・ムービングベルト風洞施設『風流舎』が加わることで、童夢ではあらゆるニーズに対応できるハイスペックな研究・開発を製造まで含めたパッケージで受けられる理想的な体制を手に入れることとなった。

「コンパクトにしたのに、結局元の体制に戻ってしまいましたね(笑)。エンジニアなど社員の数も昔と同じくらいになったし、若い有能な人材も入ってきてくれています。もちろん最新の設備が揃っているのも大事ですが、童夢の財産は何と言ってもそれらを正しく使いこなし、常に新しいものを追い求める能力を持った豊富な人材と、40年間にわたり開発してきたデータとノウハウが充実していることです。そういう意味では工場ではなくR&Dセンターという方が正しいかもしれません」

2017年からシビックTCRでスーパー耐久ST-TCRクラスに参戦を始め、同年にチャンピオンを獲得。FK8型となったシビックTCRで戦った18年もチャンピオンを獲得した童夢レーシングチーム。この参戦には市販車をベースとしたレーシングマシン作りのデータ収集という意味合いが強い。

その上で、髙橋社長は童夢オリジナル・マシンの開発計画を話してくれた。

「まずはリージョナルF3 (今後世界で展開される地域F3規格)用のニューマシン、童夢F111/3Rを発表する予定です。既存のF3に比べ量産エンジン、小排気量ターボを使うため、ネガティブなイメージが持たれがちですが、他社のシャシーを検証してみると、まだやれることがいっぱいあります。また2024年にFIA F4が新型に変わるので、それに合わせたF111/4の開発も進めています。この2台のモノコックは基本的に同じもので、“HALO”が付くなど安全性の高いものとなります。その他マザーシャシーもGT3規格にあわせアップデートを予定しています。マザーシャシーに関しては、レース以外の色々なところからのオファーや要望も多いので、より安全性の高いマザーシャシーを作ることも目標です」

そしてもう一つ、髙橋社長には実現を渇望するプロジェクトがある。

「ゆくゆくはスーパーフォーミュラを作りたいし、ル・マンにも復帰したいという目標がありますが、それよりも前に童夢の悲願である、ロードゴーイングスポーツカーを出したいと思っています。まだ具体的なビジョンはありませんが、何百馬力もあって何億円もするスーパーカーではなく、童夢らしいコンパクトで乗って楽しめるライトウェイト・スポーツが理想ですね」

現在、童夢ではホンダ・シビックTCRを擁してスーパー耐久のST-TCRクラスに参戦を続けている他、昨年からスーパーGTのGT300クラスでマザーシャシーを使用するCars Tokai Dream28のロータス・エヴォーラMC、さらに今シーズンからTEAM UPGARAGEのNSX GT3のメンテナンスを行っている。

「童夢は自分たちのクルマを走らせるレーシングチームとしての活動はしてきましたが、メンテナンスガレージとしての活動はほとんどしてきませんでした。今こうしたレースやメンテナンスを行っているのは、これからさらに伸びていくと思われる市販車をベースとしたレーシングカーのノウハウを学ぶ目的もありますが、いつでもチームとして第一線に出ていけるように力を蓄えているという意味もあります」

 そうした髙橋社長の話を聞いていると、林みのる氏が理想としてきたレーシングカー・コンストラクターとしてのビジョンがひとつずつ形になり、ビジネスになっていることが実感される。

「林みのるから受け継いだ“遺言状”を見ながら忠実に守っていますから。僕がやっているのは、それらを実務レベルに落としているだけです」

と髙橋社長は謙遜するが、考えうる理想の体制を整えた童夢が、さらなる飛躍を果たすのは間違いなさそうな気配である。

取材協力:童夢 http://www.dome.co.jp/

フォト:童夢

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