やはり気になるのは新インフォテイメント
このように走りのポテンシャルも高かったクラスA・セダンだが、もうひとつのトピックは、すでにハッチバックに採用されている対話型のインフォテイメントシステムのMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)であろう。「ヘイ・メルセデス」と声をかけて起動するこの対話式音声認識機能は、目的地入力、電話通話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、気象情報といった多くのインフォテインメントに加え、エアコンや、照明などにも対応。従来の音声認識機能は命令語が決まっており、ユーザーがそのとおりに発話する必要があったが、MBUXでは、事実上ほとんどの命令に従うことで、インフォテインメントおよび車両操作関連の文章を認識・理解することができるという。つまり人間が機械に合わせるのではなく、その逆ということだ。これは遠まわしな表現にも対応し、例えばエアコンの温度を下げる場合、「温度を24度にして」という具体的な命令ではなくても、「暑い」と言えば理解してくれるのだ。先に導入されたハッチバックについては、日本仕様では、「ハイ、メルセデス」というキーワードで起動、ラジオなどの和製英語はもちろん、大阪弁にも対応可能で、学習能力も備えていることから、クラウド上のソフトウェアモデルによって新しい流行語を覚えたり、時代による言葉の用法の変化を学習するとのこと。対話についても、定型文言ではなく、受け答えがさまざまに変化するそうだ。
さらに人工知能AIも備わっていることで、ユーザーが次に何をしたいかを予測。よく電話をする相手がいると、その時刻になるとディスプレイに相手の電話番号を「おすすめ」として表示したり、決まった時刻に同じラジオ番組をよく聴いている場合には、切り替えを提案してくれたりするのだ。またナビゲーションシステムでは、ユーザーがよく通行するルートを検知すると、そのルートを使う目的地への案内を早速バックグラウンドで開始。ナビ画面に、例えばフィットネスクラブなどを「おすすめ目的地」として表示してくれるのだ。渋滞に関する警告など、ルートに関するあらゆる情報もリアルタイムで知ることができる。
こんな便利な機能が備わっているMBUXだが、普段からボイスコマンドを使用していないと最初は恥ずかしいというか、慣れるまで時間が掛かるかもしれない。だって初めて助手席に乗った人の前で、「ハイ、メルセデス」なんて声を掛けたらきっとビックリされるだろうし(笑)。
と、MBUXの話に多くのスペースを割いてしまったが、それは今後クルマとの付き合い方(!?)が劇的に変わる革新的システムだからに他ならない。
このAクラス・セダン、今回試乗したグレードは残念ながら国内には導入されない予定で、ハッチバックと同じくA180と他のモデルが2019年中を目処に上陸する予定だという。
ただひとつ、心配なのはCLAクーペやCクラスと競合してしまう可能性がありそうなこと。まあこれは蓋を開けてみなければわからない部分ではあるが……。
とはいえセダンならではの利便性が活かされた実用性の高さに加え、スタイリッシュさも際立ったモデルに仕上がっているゆえ、セールス的にもに期待が持てそうだ。