大柄のボディを気にせずタイトコーナーを駆け抜ける
今回は一般道で63Sと53、サーキットで63Sを試乗するプログラム。まずはホテルで63Sのキーを受け取り、指定されたコースをひと通り巡りながらサーキットへと向かう。
リアウイングは固定式と可変式があり、可変式は5段階に自動もしくは手動で角度の調整が可能。高速時の安定性を高めるだけでなく、ハードブレーキ時には、ダウンフォースを稼ぐために自動でせり上がる機構も備わる。
用意されていた舞台は、F1のアメリカGPも開催されているサーキット・オブ・ジ・アメリカズだった。最大高低差41mの中に高速S字やヘアピン、複合コーナーなど、大小20ものターンを持つこのサーキットは本格的なグランプリコースで、AMG GT 4ドアクーペのパフォーマンスを発揮するのには、もってこいのステージである。先導するインストラクターは、F1やDTMでも活躍したベルント・シュナイダー。彼のアドバイスにより走行モード切り換え機能のAMGダイナミックセレクトを「スポーツ」「スポーツ+」「レース」の3パターンで試す。当初は1周といわれていた慣熟走行は、なぜかピットアウトから3コーナーあたりをクリアしたところで全開モードに(笑)。早速アクセルを床まで一気に踏み込むと、強烈な加速とともに身体がシートに強烈に押し付けられ、一気にアドレナリンが湧き出てくる。
センターコンソールのスイッチ類は、形状が変更されるとともに液晶カラータイプに。
速い! 車重2トンオーバーとはいえ、クーペのAMG GTを遥かに上回る639ps&900Nmのパワーとトルクは、4マチックとも相まって、強烈なトラクションとともに、車体そのものが高速移動していく。前を行くシュナイダーに何とかついていき、同じ位置からブレーキング、そして同じラインをトレースしていくようにトライしてみると……、さすがにこのスピードではアンダーがるだろうと想像して飛び込んだコーナーを、いともたやすくクリアしていく。まるで自分の運転がうまくなったかのようだ。かなりのハイスピードで抜けるS字も、奥に行くとRがきつくなる複合コーナーも、面白いくらいにステアリングを切った通りにクルマが向きを変えてくれるのだ。しかしこれはもちろん、突然スキルが上達したわけではなく、前後の駆動力配分を絶妙にコントロールしてくれる4マチック+と、旋回能力を高めるリアアクティブステアの恩恵。とはいえ卓越したドライビングファンを味わえることに間違いはない。こんなにサーキットで愉しめる4ドアクーペに仕上げてくれた開発陣には頭が下がるばかりだ。
-
-
走行モード切替ダイヤ ル
-
-
ダンパーと排気の切替ボタ ンが新しく装着された。
今回はオースチン市内の一般道を、63Sと53で150km弱試乗したが、走行モードを「コンフォート」にしていれば、上級サルーンと同等とまではいかないまでも、乗り心地は良好。試乗コースには道幅が狭いワインディング路も用意されていたが、正確なハンドリングのおかげで、大柄のボディをさほど気にすることなくタイトコーナーを駆け抜けていく。時折スコールに見舞われウェット路面も走行したが、4マチックの絶大なる安心感もあり、快適なドライブを満喫できた。
毎日の通勤はもちろん、家族や友人たちとのお出かけにも使えて、時にはサーキットで全開走行を楽しめる。こんなことが可能な4ドアサルーンはポルシェ・パナメーラをおいて他にない。そう、AMG GT 4ドアクーペは、パナメーラのライバルとして、最もふさわしいパフォーマンスを持ち合わせていたのである。
荷室容量は461Lで、40:20:40の分割可倒機構も備わる。ハッチバックタイプのため使い勝手は良好だ。