ニュルを知り尽くしたレーシングチームが協力
ポルシェはこのほど、911GT2 RSがドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおいて、市販車最速となる6分40秒33のラップタイムを記録したことを発表した。
911GT2 RSは2017年6月に英国グッドウッドでデビュー。700ps/750Nmを引き出す3.8リッターの水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、0-100km/h加速を2.8秒でこなす加速性能の持ち主。最高速度は340km/hに届く、まさに911シリーズの頂点の一角を担うモデルである。
実は今回のニュル・アタックで使用された911GT2 RSは、いわゆる“吊るし”の状態ではなかった。ポルシェのエンジニアとドイツのレーシングチーム「マンタイ・レーシング」が協力し、ニュル北コース専用に特別にセットアップを施した「911GT2 RS MR」という名のモデルだったのである。このモデルにはさらに、新しいパフォーマンスキットが装備されていたという。
マンタイ・レーシングは、1996年にドイツ人の元レーシングドライバーのオラフ・マンタイ氏が設立。2006年から2009年までニュルブルクリンク24時間レースを4連覇した実績を持つほか、近年ではWEC(世界耐久選手権)参戦用に911RSRを担当。そのほかロードカーのチューニングも行なっており、ニュルブルクリンクを開発の場とするなど、まさにニュルを知り尽くしたチームだ。ちなみに、現在はニコラス&マーティン・レーダー兄弟が代表を務めている。
今回ニュル・アタックに持ち込んだ911GT2RS MRの具体的なチューニングメニューは、いまのところシャシーとエアロダイナミクスの領域に変更が施されたことしか明かされていない。安全上の理由から運転席をレーシングバケットシートに変更したとのことだが、このシートによる軽量化は否定している。
計測時にステアリングを握ったマンタイ・レーシングの開発ドライバー、ラーズ・カーンは次のようにコメントしている。
「ドライブはとても楽しいものでした。新しいパフォーマンスキットは非常にバランスが良く、速く走るためにリスクを取る必要がありませんでした。すでに日が暮れはじめ、コース上が暗くなってきていたので1回しか(タイムアタックを)チャレンジしませんでしたが、この1回で記録が出せました」
ちなみに、それまでの市販車最速ラップタイムは、今年の夏に登場したランボルギーニ・アヴェンタドールの限定モデル「SVJ」が記録した6分44秒97だった。今回、ポルシェがマンタイ・レーシングとの協力によってそれを塗り替えたわけだが、今後ライバルたちはどんなマシンで記録を更新するのだろうか。
公開された動画はインカー映像のもの。コース終盤の長いストレートでは、ほんの一瞬だが310km/hを超えるトップスピードが確認できる。