いまさら聞けないクルマのアレコレ【AMG GT構造編】

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動的資質を上げる要素とは?

 クルマの機動力を高める為に、車両の資質として大切なのは「軽量」で「重量バランスに優れ」「重心が低い」ことだ。メルセデスAMGとして、初めて自社で開発したAMG GTには、ピュアスポーツマシンとして徹底的に軽さと重量配分と重心高の低さが追求されている。世界中のGT選手権などのさまざまなレーシングフィールドで華々しい活躍をしているAMG GTの強さの本質を、それらの要素を踏まえて見てみたい。

重量のかさむパワートレインをどうするか?

 最高出力476psを発揮する4リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、ふたつの過給器をVバンク内に配置することでコンパクト化、その上でドライサンプ(オイルパンに潤滑油を貯めずにポンプ等で循環させるシステム)とすることでエンジンのマウント位置を下げて重心を下げている。さらに、エンジン自体は完全にフロントアクスル(前輪車軸)後方に搭載されたフロント・ミッドシップレイアウトであり、ヨー(yawing/上下を軸にした回転運動)慣性モーメント(旋回を維持しようとする慣性の量)の最適化に大きく貢献している点も見逃せない。

 そして、エンジンに組み合わされる7速デュアルクラッチトランスミッション(奇数/偶数2系統のギアそれぞれにクラッチを有し交互に変速する機構)はエンジンからトルクチューブ(プロペラシャフトを覆うパイプ状の剛性部品)でつながれてリアアクスルに配置され、その内部には超軽量なカーボンファイバー製のドライブシャフトが入れられている。エンジンから供給される強大なパワーはこのドライブシャフトを通じてリアにマウントされたトランスミッションへと伝達されるトランスアクスル方式が採用されている。重量物であるエンジンを車両後方へ寄せ、変速機をリアに置いたことによって、前47:後53という理想的な重量バランスを実現しているのだ。

「軽い」「強い」「低重心」なボディ

 AMG GTのボディには、一般的なモノコック(車台とボディを一体にして強度を保つ構造)ではなくスペースフレーム(鋼管を柱状にして骨格を形成する構造)が採用されている。シャシーとボディにはアルミ合金が採用されており、フロントセクションには慣性低減といっそうの剛性向上のためにマグネシウム合金が用いられている。
 また、スペースフレームの90%以上にはアルミニウム合金が使用され、ボディシェルの重量も231kgに抑え込まれている。厚くとられたサイドシル(ボディ側面開口部の骨格部品)やブレース(補強用斜材)類の追加、多数のボックス形状構造材を配置するなど、剛性はスポーツカーのベンチマークに値するレベルにあるという。しかも、トランクゲートにはアルミよりも軽量に仕上げられる高強度スチールを採用するなど、軽量化と低重心化に余念のない作り込みといえる。

大御所の模範解答

 全長4545×全幅1940×全高1290mmと大柄なボディではあるが、最高出力476psに対する車重は1680kgでパワーウエイトレシオは3.53kg/psとなる。スポーツカーのライバルであるポルシェ911カレラSは3.48kg/psとなるが、前後/上下の重量バランスではAMG GTに分がある。スポーツカーにとって、どんな構造が最良かは難しい命題だと思う。しかし、正統派メルセデスAMGの模範解答は世界中のレースで結果を残している。

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