VWは売上高が30兆円に。ダイムラー、PSA、ルノーともに利益は大幅増
欧州メーカーの業績が好調だ。別表でも分かる通り、’17年はドイツ、フランスの主要メーカーに加えてボルボも売上高、営業利益、純利益ともに増加。純利益は6社がすべて2ケタ増以上、世界販売も全社プラスとなり、マイナスの数字が全く見当たらない年となった。 販売台数世界一の座を守ったフォルクスワーゲングループ(VW)は売上高が約2307億ユーロまで伸び、1ユーロ=130円で換算すると30兆円に迫る。トヨタ自動車は’17年3月期の予想売上高を29兆円に上方修正しているが、それを上回った形だ。為替レートの影響もあるので単純に比べられないが、アメリカでのディーゼル排ガス不正で大きなマイナスを背負ったことを考えると、この増収は大きい。営業利益もほぼ倍増、純利益も2.2倍と絵に描いたようなV字回復を見せており、VWの底力を感じさせるに十分な数字だ。
ダイムラーグループも世界販売の増加にともなって増収増益となり、’16年はトラック部門の不振でマイナスとなっていたEBIT(利払い・税引き前利益)も回復。売上高および大きく伸びた純利益ともに過去最高を更新しており、SUVを始め、メルセデス・ベンツブランドの高価格車が好調だったことを物語る。
BMWグループは世界販売、売上高、利益ともに8年連続で過去最高を更新。ロールス・ロイスの販売は減少したものの、BMWブランド車とミニがそれをカバー。モデル末期の3シリーズは台数減となったものの、X3、5シリーズ、7シリーズに加えて1シリーズも好調で、グループ全体の底上げに貢献している。
フランスメーカーにも注目したい。PSAグループはオペル/ボクソールを傘下に収めたことで販売台数が大幅増。プジョー/シトロエン/DSの販売台数の伸びは2.6パーセント程度だったが、2ブランドが加わったことで15.1パーセント増の大幅増となり、当然のことながら売上高も2割増。営業利益、純利益ともに2ケタ増となり、欧州で台数を稼げる2ブランド買収が功を奏した形だ。
ルノーグループも世界販売台数が過去最高を更新し、売上高も2ケタ増。欧州での販売好調に加え、ロシアやウクライナなどユーラシア地域でセールスを伸ばしている。日本でもこのところ存在感を強めているルノーだが、新興国でもジワジワとシェアを広げている。小型車主体ゆえに売上高や利益の金額はドイツメーカーにおよばないものの、ブランド力を着実に強めている。
そして日本でも人気の高いボルボカーズは、販売台数はひとケタ少ないが、売上高は1SEK(スウェーデンクローナ)=13円で換算して約2兆7400億円と稼ぎは大きい。世界販売は年々伸びており、営業利益は3割増、純利益は4割増と、その勢いはドイツメーカー以上。’18年はXC40と新型V60シリーズの追加などでさらに伸びることが予想され、一段と存在感が増すはずだ。
こうして我が世の春を謳歌しているように見える欧州メーカーだが、ドイツメーカーおよびボルボはメインマーケットの中国経済の伸びの鈍化、フランスメーカーは主力としてきたディーゼル車の規制強化など、厳しい局面に立ち向かわざるを得ない面もある。’18年も中国や新興国を中心に新車販売の伸びは続くと思われるが、電動化に向けての開発投資、工場への投資など出ていくお金が増えるなかで、利益の確保は簡単ではない。興味深いニューモデルの登場も期待される’18年ではあるが、欧州メーカーはどう知恵を絞って時代の波に立ち向かっていくのか、今後も目が離せない状況が続くことは間違いないだろう。