マツダの衝突性能開発に対する最先端の取り組みとは?(後編)

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 マツダの衝突性能開発は、マツダ本体の衝突性能開発部に加えて、子会社のマツダE&Tに衝突実験の実施、開発の一部を委託している。同社の三次自動車試験場にある衝突実験棟は、現在の1号棟、2号棟に加えて、新衝突実験3号棟が今春にも竣工予定となっていて、最新棟は屋内の車対車の衝突試験設備になるそうだ。

 

衝突性能開発でもコンピュータをフル活用

前面オフセット衝突のCAE解析画像

 マツダは、国産自動車メーカーの中では早い段階となる1980年代からモデルベース開発に取り組んでいて、さらに近年では先行開発(一括企画)を取り入れ、長いスパンを見据えた「モノ作り」を推進している。これにより、初代CX-5から始まった現在の新世代商品群(第6世代)として我々に提供されていることになる。
 衝突安全性能の開発でも「先行開発(一括企画)」から「個別車種開発」という大きな流れは同じ。先行開発(一括企画)では、開発の主体はコンピュータ技術を使った「CAE」となっている。なお、マツダのスーパーコンピュータの保有能力は、他社を凌いでいるそうだ。
 具体的には、ほとんどシミュレーションで骨格を決定するそうで、CAEは車体に対してはかなり得意な方だという。フルカーのCAEを経た後に、ユニット試験、そして実車衝突試験での最終確認になる。
 1990年くらいまでは、年間500~600台という台数で実車衝突試験を行ってきたようだが、CAEの進化により台数を大幅に減らすとともに、開発期間の短縮、そして「デミオもCX-5もつぶれる量は同じ」という現在の衝突性能開発につながっているのだろう。

 

前面衝突のコンセプトは「車体特性の最適化」「内装特性の最適化」

CX-8のエンジンルーム。燃料経路などにペイントが施されていて、衝突後でも確認しやすいように工夫されている

 具体的に見ていくと、CAEの技術レベルで、車体のつぶれ方の特性や、エアバッグ展開、ベルト非装着の小柄乗員の拘束性などを確認。また、マツダの構造化技術では、前面衝突に関しては、「車体特性(減速G)の最適化」、「内装特性(乗員拘束装置)の最適化」という両面を中心に、開発が進められている。

CX-8のラゲッジルームには、約250チャンネルのデータサンプリング装置やビデオ撮影用機材などが搭載されていた

 今回、取材陣の前で行われたCX-8の64km/hオフセット前突試験では、約250chのサンプリング装置がダミー(60ch/体)、車体(40ch)、エアバッグセンサー(21ch)などに装着され、荷室にはデータサンプリング装置やビデオ撮影用の機材が積み込まれていた。
 ダミー人形は、運転席と助手席にアメリカの標準的なダミー(AM50)を、後席に6才児、10才児ダミーを搭載。さらに、エンジンルームには赤や青のペイントが燃料経路などに施されていて、衝突後でも部品の位置や損傷具合などが分かるように工夫がされている。

ダミー人形の足元を照らすことで、衝突時のビデオ撮影の分析をしやすくしている

 

64km/hオフセット前突衝突では、エアバッグの展開なども確認

 ビデオ撮影は16台の高感度カメラを使い、車体の下側からも撮影。ビデオ映像、ダミーの加速度計データなどを使い、ボディのつぶれ方や乗員障害値などの確認、分析がされる。
 目の前(斜め下)で繰り広げられた64km/hオフセット前突試験は、衝突現象がわずか約0.1秒、エアバッグのセンシングは0.01秒という一瞬だったが、衝突後には、ドアが人の力で開くのはもちろん、乗員のスペースがしっかりと確保されていることを確認できた。
 さらに、3列シートSUVのCX-8では、3列目の追突安全性も確認されていて、ドアが人力で開くのはもちろん、3列シート乗員の空間が確保されるという。

 衝突性能開発には、ほかにも歩行者保護(頭部保護、下肢への障害値軽減など)など多岐にわたるが、CAEを主体にリアルワールドでの事故分析、大学との人間研究など最先端の取り組みを盛り込みながら、マツダ車が関わる死亡重傷者ゼロを目指して日々開発が推進されている。

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