日本GP鈴鹿戦直前におさらいする、新生F1グランプリの今季前半の状況とマクラーレン・ホンダF1の顛末について(前編)

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全20戦で争われる2017年F1世界選手権は第14戦シンガポールGPまで終了し、10月からいよいよシーズン終盤戦に突入する。

 

今季のここまでを振り返ると、年初にF1の運営、放映権管理、マネージメントを統括する企業FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)を米メディア関連企業リバティメディアが買収。企業名も「フォーミュラワン・グループ」に変更され、最高責任者には21世紀フォックス副会長のチェイス・キャリー氏が就任した。FOMの創業者で40年にわたりF1のすべて(主にマネー)を牛耳ってきたバーニー・エクレストン氏は新体制から引導を渡され、フェラーリや自身の名を冠したチームの代表等を務めた後、2014年秋から2年半「ガーデニング休暇」を楽しんでいたロス・ブラウン氏がスポーツ担当ディレクターとして迎えられ、F1の現場責任者として辣腕を振るうこととなった。

 

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F1新体制が掲げる改革の目標を突き詰めれば、ここ何年も右肩下がりで落ちていたF1グランプリの人気回復、そして業界全体の収益アップにある。まず車両規則が大幅に改訂され、車体やタイヤが大型化し空力パーツも先鋭化。マシンのセンスアップはもちろん、「世界最高峰」のスピードが戻ってきた。タイヤのグリップ力やダウンフォースの向上により、ストレートエンドでのブレーキングは距離、時間ともに短縮。ドライバーやマシンの力量が試されるシビアでハードな競争がレース中にそこかしこで見られるようになり、ひいては過去3年にわたり圧倒的なアドバンテージで選手権を制してきたメルセデスの一強時代に終止符が打たれることとなった。

 

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とりわけ台頭著しいのがフェラーリで、シーズン序盤の5戦でセバスチャン・ベッテルが優勝2回に2位3回と、ここ何年も見られなかった安定した強さを発揮。対するメルセデスはルイス・ハミルトンと新加入のバルテリ・ボッタスの二人で3勝を挙げたが、新規定タイヤの扱いをつかみ完全に本領を発揮したのは、ハミルトンがベッテルを競り合いの末に下し、最後は3秒以上のリードを奪って完勝した第5戦スペインからだった。。

 

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その後も優勝は両チームの間を行ったり来たりしたが、結局現時点でメルセデスがハミルトンの7勝にボッタスの2勝。対するフェラーリはベッテルの4勝のみと、勝ち数と獲得ポイント数ではメルセデスがフェラーリを引き離している。ところがドライバーランキングでは首位のハミルトンと2位ベッテルの差はまだ28点と、残り6戦でどうにでもなる状況だ。いずれにせよ新体制が改革の大鉈を振るったことで、昨季までの『メルセデス内選手権』状況が打開されたことは喜ばしい限り。欲を言えばトップ2強にもう1チーム、現在ランク3位のレッドブルがより近づいてくれればシリーズがさらに面白くなるのだが、現在のレッドブルでは第8戦アゼルバイジャンでのダニエル・リカルドのように、トップ2チームの4台が優勝争いから脱落したことによる典型的なタナボタ勝利しか期待できない。車体の良さでパワー・ユニット(PU/中身はルノー)の物足りなさをカバーするには限界をあることを、レッドブルの現状は物語っている。

 

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後編へ続く>>

 

リポート 段 純恵 

フォト 熱田 護(Chrono Graphics)

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