過去に生産されたポルシェの約70%が現在も現役であるという。その理由の一つは、当サイトでもご紹介したサービス「ポルシェ クラシック」にある。クラシック・ポルシェオーナーのサポート活動を本社が統括して、あらゆる年代のクラシック・ポルシェのメンテナンスサービスを世界各国で展開している。
とは言え、オーナーがポルシェを愛してしまう理由は何処にあるのか? それはドイツ工業製品の象徴とも言える機能美にあるのか、あるいはクルマ好きでない人が見ても一目でポルシェとわかる独特のエクステリアにあるのか……結局のところ、それは人それぞれとしか言いようがないのかも知れない。
今回は、クラシックポルシェに魅せられたものの、一度はオープンカーに浮気して手放してしまったポルシェ356Aクーペを買い戻して、元の鞘に収まった一人のオーナーの話を紹介しよう。クラシックポルシェそのものの魅力を解き明かす鍵になるかも知れない。
美しいシルバーメタリックの356Aクーペとの出会いは1969年
その一人のクラシックポルシェのオーナーというのが南アフリカ在住のアンドリュー・グン氏。本業はワインメーカー経営者であり、アートコレクター、そして自他共に認めるポルシェ愛好家である。彼が所有するのは1958年式356Aクーペ。ナンバープレートは CEO 356だ。
現在の同車は確かに美しくレストアされているものの、ホイールハウジングを覗くと、今もしっかり走行していることが分かる。ミュージアムに飾られているタイプの個体ではない。
アンドリューと、この美しいシルバーメタリックの356Aクーペとの出会いは、1969年のこと。大学にてシビルエンジニアリングを学んでいたその頃、唯一無二の美しい局面を描く356Aクーペと出会った。南アフリカには限られた数の個体した輸入されなかった356Aだが、アンドリューは休日をアルバイトに費やし、手に入れた。当時の彼は若干19歳。やっかむ人も少なくなかったことだろう。周囲の人には「今からあんなクルマに乗っては、彼が学問を続けられるはずがない」と言う人も居た。実際、アンドリューは一度は大学を辞めている。しかしそれは、ポルシェのせい、ではない。大学ではなく実学を学ぶために社会に出たのだ。5年後には大学に戻り、きちんと学位を取得している。
ところが、1970年代には、ヨーロッパ製のスポーツカーがわが世の春を謳歌していた。オースチン、MG、トライアンフなどである。もちろんアルファ・ロメオもそこに加えねばならない。ある日、オースチン3000に出くわしたアンドリューも、その魅力に取り付かれてしまった。彼の愛車356Aクーペにはない直列4気筒3,000ccエンジンのサウンドと、そして何より”オープン”であることが、その理由だったという。未だ若かった彼には2台を所有する余裕もなく、かと言って、オースチン3000の魅力も贖えず、結局356Aクーペを手放してしまった。
オースチン3000から次のクルマに乗り換えて、というのが一般的なクルマ好きのパターンだろう。だが、アンドリューは違った。既に記した通り、彼は一度大学を辞めて復学、学位取得を果たしたのだが、その頃にちょうど経済的な余裕ができたのだろう、再びあの356Aクーペを取り戻したいと考えた。幸いにも、車両はすぐに見付かった。アンドリューから譲り受けた男性が、そのまま所有していたのだ。ところが……彼の356Aクーペは、もうあの頃の姿ではなかった。
シルバーメタリックの美しかったエクステリアには、雑にペイントが施されたように見えたし、エンジンはVWのソレに乗せ換えられていた。上品なブラックレザーが際立つシンプルな内装には赤いファーのカバーが装着されていた。アンドリューは356Aクーペを手放したことを後悔し、再び買い戻したいと申し出たものの、当時のオーナーは応じなかった。アンドリューは今度も諦めなかった。粘り強く交渉を続けた結果、この個体の共同保有者となること、そして車両をオリジナルの状態に戻す(レストアを施す)ことを認めさせたのだ。
南アフリカ・ポルシェクラブ会長も務めた愛好家!
アンドリューは決してポルシェ・コレクターではないものの、それでも80年代~90年代に掛けて、軽量なRSモデルを含めた数多くのポルシェを所有した。そのうちの何台かは、南アフリカに数台、という希少車も含まれていたという。またレース界でも活躍していた彼は、この頃、南アフリカ・ポルシェクラブ会長を務めていたこともあるという。そんなクルマ好きの彼だから、現在も、もう1台のポルシェ、991GT3 RSを所有している。500馬力を発揮するこのモデルだが、アンドリューにとってのナンバーワンは、今でも19歳のときに手に入れた356Aクーペだという。991GT3 RSは他のモデルに代わられるかも知れないが、アンドリューは「356Aクーペだけは決して手放すことはないね」と断言している。
アンドリューの356Aクーペへの愛情がいかなるものか、ご理解いただけたことだろう。だが、クラシックポルシェの何が人を惹き付けるのか? その答えは……オーナーにならなければわからない、ということで間違いないだろう。
車名:ポルシェ 356 A 1600 Super
エンジン:水平対向4気筒
総排気量:1582 cm3
ボア×ストローク:82.5 × 74 mm
圧縮比:8.5:1
最高出力:75 HP @ 5,000 rpm
最大トルク:117 Nm @ 3,700 rpm
トランスミッション:4 速マニュアル
車両重量:885 kg
全長×全幅×全高さ:3,950×1,670×1,310 mm
ホイールベース:2,100 mm
最高速:175 km/h
0–100 km/h:約15 秒
■関連記事
- ポルシェのデザインスタジオの舞台裏を独占取材! ポルシェの”クルマづくり”のインスピレーションの源。
- 「911ダカール」の生産終了記念、特別なデザインで輝く「ポルシェ911ダカール・ゾンダーヴンシュ」を製作
関連記事
新たに2バージョンが加わり、11のファミリーが完成! 新型ポルシェ「タイカン4」「タイカンGTS」の予約受注開始
ニューモデル
2024.11.13
「ポルシェ963」のサクセスストーリー! 「ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ」が7つのタイトルを獲得
ポルシェ
2024.11.11
ポルシェ専門誌『ORIGINALE』が10周年に。記念号は、伝説の名車とそのオリジナルパーツの物語を100P以上で特集
ニュース&トピックス
2024.11.11
「マカン」が東京マラソン2025を先導!ポルシェジャパン、東京マラソンとのオフィシャルパートナー3年契約を締結
ニュース&トピックス
2024.11.07
愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?
複数社を比較して、最高値で売却しよう!
車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。
手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!
一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!
【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>