ターボらしからぬスロットルレスポンス
話をもとに戻そう。スポーツモードに変更した途端、8速DCTがシフトダウン。エンジンの回転数を高めに維持して加速に備えると同時に、排気音が勇ましくなってドライバーの気分を盛り上げてくる。さらにサスペンションも一段階ハードな設定になる。このことはセンターコンソールのインジケーターがひとつ、赤く光って教えてくれる。
さぁ、ついにその時が来た。インターチェンジの速度制限が解除され、周囲にクルマが減ったことを確認してからアクセルを床まで踏みつける! すると刹那にダウンシフト、間髪を入れずカタパルトから飛び出したかのような、しょっぱなからクライマックスな怒濤の加速がドライバーを襲う! やはり0-100km/h加速3.8秒は伊達じゃない。先代ターボはこの点、一瞬のタメというか、とにかくフル加速までに若干ラグがあったのだが、新型はアクセルの動きに対してはるかにリニアにクルマが反応してくれる。このあたりがターボをエンジンのVバンク間に置き、ターボと燃焼室の距離を近づけてスロットルレスポンスの改善を図った効果なのだろう。これはアクセルをそろっと踏んだ場合も同じ。コーナリング中にちょっと姿勢を変えようと、微細にアクセルを踏んだり緩めたり……といった操作に対して、クルマがより敏感に反応してくれる。だから以前に比べ、いっそう繊細なドライビングが楽しめるようになっているのだ。
さらに特筆すべきは200km/hオーバーでクルーズしている時の、あのドッシリした安定感がウソのような、コーナリングでのクルマの軽さ。これはワインディングで明らかになったのだが、実際にはツルシで2トン、フルオプションの試乗車はさらに3ケタkgは重くなっているだろうに、ステアリングを切るとクルマが「グイグイ」ならぬ「ヒラヒラ」と曲がってしまうのだ。以前はハイグリップな偏平タイヤがガッチリと路面を掴み、どこまでいっても離さないようなコーナリングフィールだったけれど、新型はリアタイヤもステアする後輪操舵の効果でもっとずっとホイールベースの短い、コンパクトなクルマを運転しているかのようなのだ。ステアリングの操舵力が軽いこともこの感覚を助長する。「もし911がFRだったら、こんな動きをするのかな……」なんて、そんな考えが頭をよぎったほどだ。
例の快適極まるエアサスペンションもスポーツモードでは適度に引き締まり、ハードに攻めてもウソのように車体をグラつかせることなく、安定したコーナリングを実現。それでいて急に段差に乗り上げてもスッと吸収してしまうのだから、まったくこのアシはどんな魔法を使っているんだ!?