「200なE」はどんな味?
さきほど「Cは200、Eは320、Sは500」と書いたけれど、なんてことはない、E200でも必要十分以上の動力性能がちゃんと確保されている。それもそのはず、エンジンは2.0リッター直列4気筒だがターボでしっかり過給されており、最大トルクは30.6kg-m/1200~4000rpmもある。ちなみに二世代前のE320(W211型)は、3.2リッターV型6気筒で32.1kg-m/4800rpmだった。E200はほとんど同じ最大トルクを、より低回転域から発生しているのだ。確かに少しアクセルを強めに踏んだ際には6気筒のスムーズさが恋しくなる瞬間もあるけれど、車格なりにしっかりと対策された音/振性能もあって大きな不満にはならないだろう。しかも燃費はJC08モードで14.7km/L。調べたら例のE320はJC08モードよりも約1割ほど高い数字が出るとされる、10・15モードですらたったの8.5km/Lでしかなかった。計算上、E200は同じ1リッターのガソリンでE320のほとんど倍近く走るのだ。
その一方で意見が分かれそうなのはハンドリングかもしれない。歴代メルセデスの美点であった、矢のように一直線に突き進んで行くかのような、ドッシリとした安定感はなりを潜め、Cクラス譲りともいえるスポーティさが際立つようになっている。Cクラスよりもホイールベースが10cmも長いから、身のこなしはそれよりも明らかに落ち着いており、乗り心地も「これでランフラット!?」と思わせるほどにシットリしているのだが、歴代Eクラスを代々乗り継ぐエスタブリッシュメントも多いと聞く。彼らは果たして新型Eクラスのハンドリングにどんな評価を下すのだろうか。
……いや、というより彼らが評価するのはきっと最新の自動運転機能やドライバーアシストシステムであり、安全性なのだろう。レーダーセンサーやステレオカメラを使って周囲を360°監視、「前車との車間距離を一定に保ち、道が曲がっていればステアリングを切り、前車が止まればつられて止まる」のはもはやメルセデスとして半ば常識になっているが(それでもステアリングは握ってなくちゃいけません)、新型Eクラスはこれに加えてウインカーを2秒以上点滅させると自動で車線変更、前走車をパスしてくれるようになった。そのほかにも側面衝突の危険を察知するとシートの片側を膨らませて乗員をドアから遠ざけたり、衝突音で耳がやられぬよう、ホワイトノイズを出してそれを打ち消したりすることまでやってのける。さらに緊急自動ブレーキや自動駐車機能も大幅に強化。このドイツ人のオモテナシには日本人もタジタジだろう。
短い試乗時間ではとてもすべての機能をチェックすることはできなかったが、Cクラスを何千kmも試した経験からすると、確かに前走車や車線の認識精度は上がっているようで、「アシスト準備OK!」というクルマからの合図である、メーターパネル内のステアリングのアイコンがグリーンになる時間が従来よりもずっと長くなり、特に渋滞時は、ほぼクルマ任せ行けてしまうようになった。もう本当に運転してキモチのいいスポーツカー以外は、自分で操作するのがバカバカしくなってしまうほどなのだ。
このようにちょっと欠点らしい欠点が見つからない新型Eクラスなのだが、強いて挙げるとすればその価格設定だろうか。装備内容が違うから一概にはいえないし、E200が導入されて紛らわしくなってはいるが、以前はAMGパッケージ付きのE250アバンギャルドが687万円で買えたのに対し、新型で同等のグレードはE250アバンギャルド・スポーツとなり、756万円に跳ね上がってしまった。これはディーゼルのE220dも然り。まぁ動力性能に不満はないから「200」でも問題はないのだが、保守王道を行く人たちに長年愛されるEクラスだけに、この「エンブレムの数字問題」ついての反応がやや気になるところではある。
メルセデス・ベンツE200アバンギャルド・スポーツ
東京標準現金価格 ¥7,270,000
全長/全幅/全高 4950/1850/1455㎜
ホイールベース 2940㎜
車両重量 1700㎏
エンジン型式/種類 274/直4DOHC16V+ターボ
総排気量 1991㏄
最高出力 184ps(135kW)/5500rpm
最大トルク 300Nm(30.6㎏-m)/1200-4000rpm
トランスミッション 9速AT
燃費(JC08) 14.7㎞/L
サスペンション形式 前:4リンク/コイル
後:マルチリンク/コイル
ブレーキ ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前:245/40R19 後:275/35R19
問い合わせ先 メルセデス・ベンツ日本 http://www.mercedes-benz.co.jp
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