いうまでもなく、Cクラス、3シリーズ、A4といえば、各ブランドを代表する基幹モデル。今回は、ベンチマーク的存在のCクラスがフルモデルチェンジを果たして初の三つ巴となった。SUVが人気の昨今だが、クルマ好きならばこの定番対決が気にならないわけがない!
すべてが電動化された新しいCクラス
例えばカラオケに行くと必ず歌う十八番があるように、アウディのA4かBMWの3シリーズかメルセデスのCクラスがモデルチェンジすれば、必ず行なうこれら3台の比較試乗は、自動車媒体の十八番である。ただし、開発サイクルは当然のことながらズレているので、最新作のほうが有利になってしまう傾向がある。2021年にデビューしたCクラスがもっとも若く、2018年にワールドプレミアとなった3シリーズ、そして2015年誕生のA4が最古参となる。A4はCと実に6年もの開きがあるのでちょっと可哀想ではあるものの、2020年に大規模改修を行なっている。そしてあらためて乗り比べてみると、すべての性能面で最新が最良とは限らないと思った。
新型CクラスはMRAⅡと呼ばれるプラットフォームを使用していて、これはSクラスと共にデビューしたもの。SとCではボディサイズがずいぶん異なるが、最新のプラットフォームは設計の自由度が高く、〝エンジンを縦置きにしたFRベース〞という共通項以外の例えばホイールベースやトレッドなどは車格に応じて柔軟に対応できるようになっている。
パワートレインは日本未導入のPHEVの他にガソリンとディーゼルが用意され、最大の特徴はそのすべてが電動化されている点にある。ISG仕様はエンジンの補機類のほとんどを48V電源で稼働させ、通常の内燃機のようにベルト駆動によりエンジンパワーが喰われてしまうことを避けると同時に、スターターモーターを駆動力のアシストとしても使う。これにより、ダウンサイジングエンジンに装着されているターボが不得意とする低回転域を補い、発進直後から力強い加速が得られるようになっている。
ついに最新MBUXを搭載したCクラス
試乗車は1.5Lのガソリンエンジンを搭載するC200アバンギャルドで、オプションのAMGラインが装着されており、AMGスポーツサスペンションと18インチのタイヤ&ホイールが含まれる。実はこの仕様のバランスがあまり芳しくなく、Cクラス本来の乗り心地を実現していない。
ハンドリングは、ステアリン操作に対するレスポンスはいいものの、ヨーゲインはそれほど高くないのでスポーティとまでは言えないと個人的には思っている。ステアリングレスポンスがいいというのは操舵応答遅れがないことを意味しており、これ自体はスポーティでもなんでもなく、最近はSUVだってミニバンだってだいたいのクルマに顕著な操舵応答遅れは見られない。スポーティか否かは、ステアリングを切ったあとのタイヤのCFやヨーゲインの立ち上がり速度の部分で語られるべきである。Cクラスはこの点において、あえて穏やかな味付けとしており、個人的には全体的にしっとりとした上質な乗り味を目指しているのだろうと理解した。実際、本国で試乗したPHEVのC300eや先月号で紹介したオールテレインの乗り味はそうなっていた。
6気筒が楽しいBMWに驚くほど洗練されたA4
3シリーズは318iからM340i xDriveまでの9モデルが展開されていて、今回はよりによって最上級モデルにして唯一の6気筒エンジン搭載車でもあるM340iが来てしまった。
3シリーズは総じてヨーゲインの立ち上がりが早く、これは疑う余地のないスポーティな味付けと言える。数年前に、メルセデスがスポーティ路線に舵を切り、BMWがラグジャリーな方向性を見せ始め、結果としてアウディとBMWとメルセデスが近いところに集まってしまった時期があったけれど、現在はまたそれぞれの立ち位置を明確化したクルマ作りに戻っている。
M340iにはアダプティブMサスペンション(=電子制御式ダンパー)とMスポーツ・ディファレンシャル(=eデフ)が標準装備で、19インチという大径タイヤも見事に履きこなしている。ブレーキを使ったトルクベクタリングではeデフやLSDに似た効果を発揮するものの、当然のことながら制動させているので車速は落ちるしせっかくのエンジンパワーを殺してしまう。いっぽうeデフは例えば100あるパワーを状況に応じて左右輪に振り分けるので損失が少なくコーナリングスピードもキープできる。
3シリーズは渋滞時のサポートも万全
最近の4気筒エンジンだって決して悪くないけれど、6気筒の味を知ってしまうと「やっぱコレだよなビーエムは」となってしまうし、真っ直ぐ走っているよりステアリングを切っているほうが楽しいというBMWの真骨頂がこのクルマでは存分に味わえる。
A4は日本で9モデルが用意されていて、試乗車はディーゼルエンジンを搭載したFF仕様だった。なんとなくいまだに「FFよりFR」みたいな風潮があるけれど、A4の乗り心地やハンドリングを知ると「駆動形式なんか関係ないじゃん」と思えてしまう。2020年のビッグマイナーチェンジにおける性能面でのボトムアップが著しく、登場直後から見違えるほど洗練された。
電子制御式ダンパーを装着していないのに、路面を問わず乗り心地は全般的に良好。ハンドリングはスッキリした手応えと正確さが心地よく、室内にいる限りディーゼルとはほとんど分からない振動とノイズの処理も見事だった。もし今回の3台のどれかで長距離移動をすることになったら自分はA4を選ぶだろう。余計な気を遣わずリラックスした運転が持続できると思うからだ。
A4初のクリーンディーゼルエンジンを搭載
今回は駆動形式がFFとFRと4WDだし、価格もずいぶん差があるので厳密な比較はできないけれど、ひとつだけ確かなことは、Cクラスは室内の質感が他の2台をリードするとともに、価格レンジが上位へ移行してしまった点。A4は463万円から、3シリーズは495万円からであるのに対してCクラスは現時点で651万円からで、200万円近くも高い。それが相殺されるくらいCクラスが他の2台よりも飛び抜けているかどうかはまだ疑問の余地が残る。
【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ C200アバンギャルド
■全長×全幅×全高=4755×1820×1435mm
■ホイールベース=2865mm
■車両重量=1660kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1494cc
■最高出力=204ps(150kW)/5800-6100rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1800-4000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/50R17:225/50R17
■車両本体価格(税込)=6,510,000円
■公式サイト https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/c-class/saloon-w206/c-class-sedan/explore.html
【SPECIFICATION】BMW M340i xDrive
■全長×全幅×全高=4720×1825×1445mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=1730kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2997cc
■最高出力=387ps(285kW)/5800rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1800-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/40R19:255/35R19
■車両本体価格(税込)=9,990,000円
■公式サイト https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/3-series/sedan/2018/bmw-3-series-sedan-inspire.html
【SPECIFICATION】アウディA4 35TDI アドバンスド
■全長×全幅×全高=4760×1845×1435mm
■ホイールベース=2825mm
■車両重量=1610kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1968cc
■最高出力=163ps(120kW)/3250-4200rpm
■最大トルク=380Nm(38.7㎏-m)/1500-2750rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ウイッシュボーン:ウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/50R17:225/50R17
■車両本体価格(税込)=5,460,000円
■公式サイト https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/a4/a4.html
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