新世代DSブランドとしては第4弾モデルとなるDS4。メルセデス・ベンツAクラスやBMW 1シリーズと競合するプレミアム欧州Cセグメントに照準を定めた、全長4.4m級のスペシャリティ5ドアハッチバックだ。“質感モンスター”ともいうべき内装に、新世代インフォテイメントとPHEVパワートレインを備えた野心作の第一報をお伝えする。
「新しく心地よいもの」矛盾した経験へ巧みに誘う
カリスマ性のあるエクステリアから流麗なインテリアまで、いわばDS4は一見して「無駄な直線」を注意深く排している。直線と見えるところも、よくよく観察すると奥行きでは曲線であったり、次の要素へと繋げられている。前衛的であることはDSの条件だが、奇をてらわずして初見から斬新なものであると認識させる点を、プロダクトチーフでDS4以前はプジョーRCZと初代308を手がけたというフィリップ・ウィ氏はこう説明する。
「ユーザーエクスペリエンスを一新すること、その一点に重きを置きました。具体的にはインフォテイメントの刷新と、デザイン的にピュアでシンプル、分かりやすいものであることです」
ここで氏がいうデザインとは、インテリアやエクステリアだけでなく、ドライビングインターフェイスや挙動といったダイナミクスまでを含む。内側から外側へ観察する方が、分かりやすい一台だ。
緩やかに乗員を囲むように、ダッシュボードからドアパネルまで楕円状のステッチラインで包み込む効果は、広々と感じさせつつ車内空間をキチンと定義する。ドライバーの手元、シフトコンソールにはナッパレザー張りのパームレストに、e-トグルというスライド式の8速ATシフトを挟んで、「DSスマートタッチ」という5インチのタッチパネルが備わる。
指先で前後左右斜め方向にスライドすれば、特定の電話番号やエアコン温度など、あらかじめパーソナル設定した6つの機能を呼び出せるタスクローンチャーだ。これは音声認識機能を含む「DSイリスシステム」というインターフェイスと関連づけられ、指での文字入力も可。ダッシュボード上の10インチタッチスクリーン内のウィジェットや機能はすべて編集可能で、メーターパネル内への表示は無論、画面換算で21インチ相当の前方ヘッドアップディスプレイとも連携できる。当然、全機能が日本語に対応する予定だ。
後席は、飛び抜けた広さの足元ではないが、座面長が長く座り心地は上々。さらにセンターコンソールやスキートラップまで備わる上に、荷室容量は390Lを誇る。「旅する術」をアートとして捉えるDSらしい、モダンなハッチバックGTという解釈だろう。
とはいえDS4の本領は目に見える部分だけではない。70%以上が見直され新しくなったEMP2プラットフォームに、1台あたり34m以上に及ぶ圧着溶接を施したボディの恩恵もあり、凄まじい静粛性と剛性感を誇る。逆にいえば180㎰の1.6Lターボ+110㎰のフロントモーターによるシステム総計225㎰/360Nmの「E-テンス225」は、プジョー508PHEVで既出、かつDS9と共通で、車格がCセグであるぶん、静粛性や剛性感に粗が出てもおかしくない。
ところがモーターからICE作動の切り換えやシフトマナー、走行中の風切り音に至るまで、DS4はエレガントなマナーを見事に保つ。それでいてしなやかで俊敏な足まわりと、より積極的に操ることへ誘うようなハンドリングも相まって、ダイナミックさをも増している。
欠点らしい欠点は、好悪の分かれる外観デザインぐらいだろう。だがエッジが立っているようで柔らかな線や造形に収まるという、その抑揚の効いた調教の見事さこそが、DS4そのものなのだ。
【Specification】DS4 E-TENSE 225
■全長×全幅×全高=4400×1866×1470mm
■ホイールベース=2675mm
■トレッド=前1600、後1605mm
■車両重量=1653kg
■エンジン型式/種類=-/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1598cc
■最高出力=182ps(132kW)/6000rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1750rpm
■システム最高出力=225ps
■システム最大トルク=360Nm
■燃料タンク容量=40L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前215/65R17、後215/65R17
※表中はすべて欧州仕様値
この記事を書いた人
1971年生まれ、静岡県出身、慶應義塾大学卒。ネコ・パブリッシング勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・男性ファッション・旅行等の分野において、おもに日仏の男性誌や専門誌へ寄稿し、企業や美術館のリサーチやコーディネイト通訳も手がける。2014年に帰国して活動の場を東京に移し、雑誌全般とウェブ媒体に試乗記やコラム、紀行文等を寄稿中。2020年よりAJAJの新米会員。
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