【ニューモデル情報通】Vol.13 待望の新型ランドクルーザー300、出陣! 〜これまでのランドクルーザーを総ざらい

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日本を代表する4輪駆動車「トヨタ・ランドクルーザー」。中でも大型プレミアムSUVでありながらも高い悪路走破性を両立する「ステーションワゴン系」のランドクルーザーは、北米・中東をはじめ世界中で愛されている。

2021年6月末現在のラインナップでは、2007年登場の「200系」がステーションワゴン系を担ってきたが、トヨタは2021年6月10日、後継モデル「300系」をオンラインで発表。14年ぶりのフルモデルチェンジとあって、大きな注目を集めている。フルモデルチェンジの詳細はリンク先で詳報しているので、ぜひご覧いただきたい。

https://carsmeet.jp/2021/06/21/196031/

世界有数の高級SUVであるランドクルーザー「ステーションワゴン系」モデルの最新作が、2021年6月に発表されたばかりの「300系」。

ところで、ランドクルーザーと言っても高級SUVもあれば、かつてのジープのように機能・実用性を重視したクロスカントリーモデルも思い浮かぶ。また、2014年頃に日本市場で復活販売を遂げた70系や、同じくランドクルーザーの名を持つ「プラド」など、長い歴史の中で実に多種多様なモデルが存在している。

そこで今回は、300系ランドクルーザーの登場に合わせ、フルモデルチェンジ時の情報では捉えきれない「ランドクルーザーの系譜」をおさらいしたい。

その1……「ヘビーデューティ系」と乗用モデル「プラド」の系譜

現在世界で販売されているランドクルーザーには、3種類のモデルレンジがある。ひとつめが、300系に代表される「大型ステーションワゴン系」で(いわば「大ランクル」)、次に “タフな道具” という元来の4WD車としての本分である「ヘビーデューティ系」、そして最後が、ステーションワゴン系よりひと回り小さな車体を持つ「ライトデューティ系」だ(上記系譜図参照)。

そこでここからは、それぞれのレンジごとに歴史を遡っていきたい。まずは、ランドクルーザーが登場して以来の重要なモデル「ヘビーデューティ系」から見てみよう。

ランドクルーザーの前身、「ジープBJ型」

ランドクルーザーの前身「ジープBJ型」。BJのBは、「B型エンジン」、Jは「ジープ」を示す。1954年には消防車用に3.9L直6の「F型」を積んだ「FJJ型」も追加。

ランドクルーザーという名称は1955年に登場した。しかしそれ以前にも、ランドクルーザーの歴史を語る上で重要な車種がある。それが陸上自衛隊の前身「警察予備隊」用として1951年に登場した「ジープBJ型」だ。トヨペットSB型トラックのラダーフレームを改良し、3.4L直6のB型ガソリンエンジンを載せた本格的な4輪駆動車である。警察予備隊用車両は三菱・ジープが採用されたが、1953年以降に警察・官公庁・消防用として生産を開始した。また同時期、「ジープ」という名称が本家ジープと同じことから「ランドクルーザー」に改名。一般用としての販売も始まった。

【20系】「ランドクルーザー」らしさが萌芽 海外輸出も本格化

当初20系に搭載のエンジンはB型と3.9LのF型で、のちにF型に統一。3種類のホイールベースが選べるようになった。写真はショートホイールベースの「FJ25型」。警察用に後輪駆動モデルも供給された。

「ジープBJ型=初代ランドクルーザー」は、1955年にフルモデルチェンジを行なって「20系」に。外観上では40系以降の「ランドクルーザーらしい姿」を得た。大排気量ゆえに副変速機を持たない、初代の独特なメカニズムなどは基本的に踏襲された。また、この代から、北米市場など海外への輸出もスタート。タフなランドクルーザーの評価は、世界各国で次第に高まっていった。

【40系】ランドクルーザーの名声を世界に広げた「ヨンマル」

ランドクルーザーの代名詞ともいえる40系。写真はショートホイールベースの「FJ40型」で、登場時はこのようにとてもシンプルな姿だった。

1960年、3代目となる「40系」が登場。20系をベースに快適性を向上させ、トランスミッションの歯車比変更、サスペンション設定変更などの細かな改良を盛り込んだ。デビュー後も小変更・バリエーション追加・エンジン変更・ボディプレス変更などを繰り返しつつ、1984年まで生産された。世界中で販売された40系は、強靭なシャーシと高い耐久性、タフなエンジンなどで実用車として高い評価を得ており、現在もランドクルーザーの代名詞として世界中に根強いファンを持ち続けている。

幾度か改良が行われた40系。1979年のマイナーチェンジはその中でも大掛かりだった。外観上ではヘッドライトを含むグリルが四角形になったことで見分けがつく。写真は、ミドルホイールベース+2B型ディーゼルエンジンを積んだ「BJ44V型」。

初代から設定されていたピックアップ。写真は1979年以降のモデルで、形式は「BJ45PL」。40系のホイールベースは、20系同様にショート、ミドル、ロングの3種類でスタート。のちにさらに長いスーパーロングも設定した。2種のロングシャーシは、ボディバリエーションに応じて使い分けた。

【70系】40系の魂を継ぐ「ヘビーデューティ系」は現在も生産中

1984年デビュー時の70系。ホイールベースは5種類を設定。2ドア(ソフトトップ・ハードトップ、FRP製トップ)、4ドアなど豊富な種類のボディが架装された。エンジンは大排気量の直6がメインで、3F型・1FZ型ガソリン、3B型・1HZ型ディーゼルなどが積まれた。1999年にはフロントサスペンションをコイルスプリングに変更し、操縦性・乗り心地を向上させている。

ヘビーな用途に活躍した40系は、改良を重ねてロングセラーモデルとなったが、発売開始20年を超えて旧態化が目立ち、またクロスカントリー車にも乗用車的な快適性が求められるようになってきたこともあり、1984年登場の「70系」に後を譲った。70系では、40系のムードを残しつつモダンにアップデートされたデザイン・一気に快適になった内装と装備が与えられ、一般ユーザーへの敷居を大幅に低くすることに成功した。

2007年に大きく変更を受けた70系。海外では2ドアロングの「トゥループキャリアー」(写真中)も人気が高い。

70系では、40系直系のヘビーデューティ系のほか、乗用ワゴンとしての性格を強めたライトデューティ系(後述)に分化したことが特徴だ。日本では、70系ヘビーデューティ系の販売は2004年で終了しているが、世界各国には、現在もなお供給が行われている。

その海外向け70系は、2004年以降も進化を続けており、2007年には、1VD型4.5L V8ディーゼルエンジンを搭載するためにフロントを大改修した。日本でもこのマスクの70系が「70系30周年記念」として、2014年から2015年にかけ限定販売された。搭載エンジンは4L V6ガソリンの1GR型が選ばれている。4ドアバンのほかダブルキャブのピックアップも設定され、大きな注目を集めた。

【70系プラド】快適さとタフさを兼ね備えた「ライトデューティ系」のプラド誕生

前述の70系ライトデューティ系である乗用版は、「ランドクルーザーワゴン」と呼ばれて1985年に登場。大きなポイントは、エンジンをハイラックスサーフと共用の直4とするために、フロントドアから前の造作が異なり、乗り心地向上のためリアサスをコイル化するなど、かなり大掛かりに違いが持たされていたこと。単にハード系に快適装備を増やして乗用車に仕立てたのではなかった。

ライトデューティ系では、2.4L直4ディーゼルの2L型エンジンを積む。ヘビー系とよく似ているが、マスクがかなり異なることに注意。海外向けでは仕向地に応じて「バンデラ」「ランドクルーザーII」などの名称を使い分けており、写真は「ランドクルーザーII ソフトトップ(LJ71型)」。

ランドクルーザーワゴンは、1990年に乗用車としての快適性をさらに高めた際、独自のマスクと「プラド」というサブネームが与えられている。プラドでは2ドアモデルにソフトトップ・FRPトップも選べるようになったほか、4ドアワゴンが新たに登場。これ以降の主力車種となった。プラドは、クロスカントリー車のタフさと乗用車の快適性・高い利便性を両立したこと、適度なボディサイズなどで、高い人気を獲得していくことになる。

2トーンのボディカラーが高級感を漂わせる初代プラド。日本仕様のエンジンは2L-T型ターボディーゼルのみだったが、1993年になって3Lの1KZ型に換装している。3ドアショートと4ドアロングを設定したボディは大型化され、全車3ナンバーになった。

【90/120/150系プラド】適度なサイズの高級SUVとして、完成度を高めていくプラド

1996年、プラドはフルモデルチェンジを行って2代目の「90系」に。さらに乗用車的な性格へと変化している。シャーシは従来通り本格的なラダーフレームだが、ハイラックス・サーフとの共通化が進んだため、前後サスともにリジッドから独立懸架へ大幅に進化。乗り心地も向上した。90系からは3.4L V6エンジンを追加しており、高品質を誇った内外装と合わせ、高級SUVの印象を強くした。

写真は、2代目プラドの前期型3ドアショート。2代目ではフルタイム4WDになったこともトピックだ。前期型の3ドアは、スポーティな印象を強める丸目ヘッドライトだった。

3代目プラド(120系)誕生は2002年のこと。高級SUVらしさを増した洗練された外観デザインは、欧州トヨタのデザインスタジオによる。3ドア・5ドアともに車体サイズを拡大。ラダーフレームも新開発されて、ねじり剛性を大幅に強化した。トルセンLSDを用いたフルタイム4WD、車両の姿勢を制御するVSC、サスペンションの減衰特性を変化させるH∞TEMSなどが採用され、悪路走破性のみならずオンロードでの操縦安定性を高めたことも特筆される。

日本仕様の120系には、3.4L V6(5VZ型)・2.7L(2TR型)ガソリン、3L(1KD型)ディーゼルターボエンジンを積んでいたが、V6はのちに4Lの1GR型に換装している。写真はニュージーランド仕様。仕向地によっては、プラドではなく単に「ランドクルーザー」と呼ぶこともあった。

現行型となる4代目プラド・150系は2009年に登場。120系の延長上にある世代だが、電子制御化が一層進んで悪路走破性を高めており、オンロードでの静粛性・操縦性も高めている。2013年と2017年にマイナーチェンジを行っており、最新版では落ち着いたマスクになった。なおこの代から、日本市場では3ドアが消滅している。

兄貴分の200系ランドクルーザーと見間違うほど立派に、高級になった現行型プラド。とはいえまだ、小山のように大きな200系との差は大きく、日本の路上では、プラドのボディサイズは(ギリギリ)適している。

その2……「ステーションワゴン」系(大ランクル)の系譜

【55型(55/56型)】40系から派生した独自デザインの4ドアバン/ワゴンモデル

40系から派生したステーションワゴンの「55・56型」。40系よりもぐっと近代的・モダンなデザインとなった。写真は、国内仕様の「FJ56型」。

ここからは、最新モデルの300系につながる「大ランクル」の話だ。そこで20系・40系まで歴史を戻そう。

20系には4枚ドアを持つステーションワゴン型モデルのFJ35Vが存在したが、後継の40系にも、同タイプのFJ45Vを設定していた。しかし1967年、40系の4ドアワゴンを廃止した代わりに、乗用ステーションワゴンとしてのキャラを強く持つ「55型(55/56型)」が登場した。なお「50系」と呼ばれない理由は、別に50系が計画されていたこと、さらにブラジル生産の40系「バンデランテ」が50系を名乗っていることも関係する。

【60系】乗用車的な快適性を向上 現在も中古市場で大人気

フロントタイヤ周辺に。古いモデルのフェンダーラインの面影を残す60系。F型ガソリンエンジン(2F型→のちに3F型)、2種のディーゼルエンジン(3B型・2H型)などを積んだ。写真は、日本向けのバン標準仕様。

ステーションワゴン型ランドクルーザーの55・56型は、20系・40系などのジープ・タイプランドクルーザーとは別の流れを生み出した。そこでトヨタは、これの後継車をより本格的なステーションワゴンとして開発。「60系」と銘打って1980年に発表。ランドクルーザー初の上級トリムバージョンも登場し、やがて来る高級クロスカントリー車の時代を予感させた。しかし、あくまでも登録は「商用バン」であった。もちろん悪路走破性・信頼性は高く、従来通りのヘビーな用途にも耐えることができた。現在でも、中古車市場で高い人気を誇る。

1987年のマイナーチェンジで、角型4灯のヘッドライトに変更。1988年には、商用車設定のみだった60系に、初の乗用ワゴン版も生まれている。写真はアメリカ仕様の「FJ62型」。

【80系】高級4WDしての存在感を確立

80系では、ガソリンエンジンはワゴンに、ディーゼルエンジンはバンに搭載された。写真は北米仕様で、1993年の「FZG80G型」。ガソリンエンジンは当初の3F型から、新開発の1FZ型に置き換わっている。

1989年、60系を継ぐ「80系」がデビュー。まだ無骨でハードな乗り物だった60系に比べ、ワゴン版が販売の主流に。乗用仕様のフルタイム4WD化・サスペンションのコイルスプリング化・エンジンの拡大・オートマチックの電子制御化・内装の高級化などを行い、高級クロスカントリー車としての雰囲気や装備、それに見合う乗り心地や操縦性も得た。海外市場での販売を視野に入れ、車体もさらに大きくなっていた。

日本では高級SUVというイメージが強い80系だが、世界各地で活躍するクルマの中には、ランクル本来の「働くクルマ」という側面を色濃く残すモデルも多かった。写真はその姿を留める輸出仕様。

【100系】悪路走破性をさらに向上 プレミアムSUVのステータスも盤石に

1998年登場とは思えないほど、優れたデザインの100系。ランドクルーザー初のV8エンジン搭載モデルでもある。

大きな車体、類稀なる悪路走破性、上質なキャビン、豪華装備といった現在につながる「大ランクル」の要素を確立した80系。その思想を受け継ぎ、さらに深化して開発された100系の登場は1998年。80系よりもさらに高級車としてのオンロード性能と、悪路走破性の双方を向上させた。エンジンはついに4.7L V8エンジン(2UZ型)を搭載。フルサイズSUVの王者の風格も得たことで、世界中で長年培ってきた、“ランドクルーザー” というブランドとプレミアムSUVのステータスを絶対的なものとした。

レクサスLX470としてレクサスブランドにも投入された100系。日本では、LX470を上位版の「シグナス」として販売した。なお、80系もレクサス版の「LX450」が存在していた。

【200系】よりタフに、より豪華に進化

100系に引き続き、ガソリンエンジンモデルはV8エンジンを搭載。当初は2UZ型だったが、2009年に1UR型に変更した。写真は2009年の日本仕様。

200系ランドクルーザーは2007年に登場。80・100系からの流れをさらに昇華し、タフネスと高級感を高めた。伝統のラダーフレームは新設計がなされ、電子デバイスによる悪路走破性もアップ。最新モデルでは、4WDの性能を最大限に引き出す「マルチテレインセレクト」も採用している。

200系のレクサス版は「LX570」。5.7L V8の3UR型を積む。日本市場にも2015年から導入されている。

世界に誇る日本の本格的4輪駆動車、ランドクルーザー。300系の登場で、その伝統や伝説はより深みを増していくことと思う。1日も早い日本での発売を期待したい。

この記事を書いた人

遠藤イヅル

1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。

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2021/07/01 15:00

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