燃料電池とプラグインハイブリッドの組み合わせは世界初!「メルセデス・ベンツGLC F-CELL」【試乗記】

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いまのメルセデス・ベンツを知りたい人にとっては、試す価値の高い一台

メルセデス・ベンツの新型車開発プログラムには次世代技術に関するものが多くある。そのひとつが燃料電池車の開発だ。FCVやFCEV、メルセデスでF-CELLと呼ばれるそれは、水素と酸素の化学反応で発生する電気を利用したモーター駆動の電気自動車で、二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギー車である。1994年にはメルセデスにも世界にとっても初めてとなる燃料電池車Necar1(New Electric Car)が登場。その後も研究開発は連綿と続けられ、昨年、市販車として日の目を見たのが、ここに紹介するGLC F-CELLだ。

エクステリアはGLCと似通っているが、フロント&リアバンパー、ホイールのデザインが異なるほか、各所にブルーのアクセントが施される。サイドには「F-CELL」のデカールも。

燃料電池車というと、先述のような電気を発生させる装置(燃料電池スタック)や水素タンク、バッテリーなどを組み合わせた特別なシステムを搭載する必要があるため、車体は専用設計されることが多い。身近なところではトヨタ・ミライやホンダ・クラリティがそれだ。そんななか、メルセデスのF-CELLは既存のGLCをベースに作られた。

エンジン部分は燃料電池スタックに置き換え、車体後部に水素タンクとバッテリーを配置。そうした変更により、本来4WDであったものはリアモーターの後輪駆動となり、水素タンクの搭載位置やそれを保護するカバーなどで最低地上高も低くなったため、GLCが持っていたSUVの要素はかなり薄まっている。むしろちょっと背の高いRWDハッチバックと見たほうがいいかもしれない。

コンソールにあるモード選択ボタンで、燃料電池とバッテリーを適宜切り替える「HYBRID」、バッテリーだけで走行する「BATTERY」、燃料電池だけを使って走行する「F-CELL」、バッテリーに充電をさせながら走行する「CHARGE」の切り替えが可能となっている。

さらに、GLC F-CELLはプラグイン方式を採用する点が新しい。燃料電池スタックで発生した電気によるモーター駆動はもちろんのこと、13.5kWhのリチウムイオンバッテリーに貯めた電気も駆動用として使われる。このバッテリーは外部電源からの充電も可能なプラグイン式となっており、満充電時の航続距離は41kmを標榜。燃料電池での電気駆動による航続距離は336kmと公表されているから、合計で377kmの航続が可能ということだ(数値はいずれも欧州参考値)。そんな燃料電池とプラグイン式のハイブリッドは世界初のもの。GLC F-CELLは国産FCVの2台とくらべてもチャレンジングなモデルだといえよう。

モーターは最高出力200ps、最大トルク350Nmを発生することで、2ドン超の車重ながら走りは意外と軽快。充電は右リアバンパーの充電口から200Vの普通充電のみに対応、水素の充填は右リアフェンダーからで4.8kgまで入る。

システム的には複雑かもしれないが、ともかくこのクルマがEVであることに変わりはない。だからその乗り味は、同じくGLCをベースにしたメルセデス製のピュアEVであるEQCと非常に似通っていた。パワーとトルクの数値を見比べてみると、GLC F-CELLの160kWと350Nmという値はEQC(300kW/765Nm)の約半分ということがわかるが、車重は350kgほどGLC F-CELLのほうが軽いからだろう、アクセル操作に対するパワーの湧出遅れがない、EV特有のリニア感は健在だった。

しかもそれを後輪だけで路面に伝えていくため、姿勢変化は比較的大きいものの、他のメルセデス製RWDモデルのようにひらりひらりと身を翻していける、素直なハンドリングとフットワークが楽しめた。この挙動はGLC F-CELL独自の味わいだと思う。また、試乗車特有のものかもしれないが、以前に試したEQCよりも突き上げが少なく優しい乗り心地だった。試乗時は雨だったがスプラッシュ音はしっかりと遮断されていて静粛性も高いように感じた。

GLC F-CELLは一般販売される燃料電池車ではあるものの、水素タンクの耐久性を加味した4年間のクローズエンド方式(期間終了後は車両を返却)によるリース販売として扱われる。加えて水素ステーションの数は全国で170箇所程度であり、航続距離もEQCには少々及ばない。そんなふうにまだいろいろと制約があることは頭においておく必要はあるものの、GLC F-CELLには連綿と続けられてきた燃料電池車の技術の粋とともに、実用性や安全性、運動性能におけるメルセデスならではの深い味わいが凝縮されている。いまのメルセデス・ベンツを知りたい人にとっては、試す価値の高い一台だと思う。

インテリアの基本構成はベースとなるGLCと同一だが、メータの表示は専用デザインとなっている。

 

今回車両を返却する前に利用したのは有明の水素ステーション。箱根までの往復で、途中バッテリーが空になったのでフル充電した。水素は満タンで3.41kg充填できたので、約1.4kg残っていたことになる。ちなみにこちらの水素ステーションは1kg1100円だったので、ランニングコスト的にはガソリン車よりはリーズナブルといえるだろう。

【Specification】メルセデス・ベンツ GLC F-CELL
■車両本体価格(税込)=10,500,000円
■全長×全幅×全高=4680×1890×1655mm
■ホイールベース=2875mm
■車両重量=2150kg
■モーター最高出力=200ps(160kw)/5400rpm
■モーター最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/4080rpm

■リチウムイオンバッテリー容量=13.5kWh
■燃料タンク容量=77L+37L(水素)
■航続可能距離(参考値)=約377km
■トランスミッショッン=1速固定式
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後235/50R20

公式サイト
メルセデス・ベンツ日本 https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/glc/glc-suv/glc-f-cell/model-year-update.module.html

フォト=宮門秀行/H.Miyakado

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2020/11/05 13:00

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