レクサスのミッドサイズサルーン、ISがマイナーチェンジ。とはいえ、手が加えられた箇所は多岐にわたり、実質的にはフルモデルチェンジといって差し支えないほどの内容となる。国内での正式発表を前に、プロトタイプをサーキットで走らせてみた。
ドライバーの意思にきちんと応えてくれる
新型ISはフロントウインドー以外のほとんどの外板が新しくなっている。それでも“マイナーチェンジ”とレクサスが呼ぶのは、プラットフォームやパワートレインが基本的に従来型からの流用だからだ。誰もが次期ISはレクサスLCとともにデビューを果たし、現行クラウンにも使われているGA-LのFRプラットフォームになると信じていた。それをしなかったのは、ボディサイズや質量が大きくなってしまうからだという。ISの魅力は“コンパクト”なFRセダンであることで、そこだけは譲れなかったとチーフエンジニアは語っていた。
中身は流用だからといって、そっくりそのまま使っているわけではない。細部に渡って改良が施されている。ボディのスポット溶接の打点を追加したり、ラジエターサポートサイドやCピラーインナーの剛性を上げ、フロントドア/リアドア/トランクリッドの軽量化も図っている。サスペンションは前後のアッパーアームの軽量化、コイルスプリングの材質変更による軽量化、スウィングバルブダンパーの採用などが主で、新たに19インチのホイール&タイヤを装備する。通常、インチアップをするとばね下が重くなるが、新型ISでは従来型(18インチ)と比較しても、ばね下重量はほとんど変わっていないという。
個人的にもっとも感銘を受けたのはハブボルトの採用である。日本車の多くがスタッドボルトとハブナットの締結だが、特にドイツ車でハブボルトは一般的である。ハブボルトのほうがばね下は軽くなるし、締付トルク値を高くできる(=締結力が上がる)などメリットが多いので、ようやくそれが採用されたというのはなんとも嬉しい。
実際、新型ISの足元は以前よりも引き締まったように感じられるし、ばね下はむしろ軽くなっているんじゃないかと思うほど足さばきがいい。同時に、ステアリングにはダイレクト感が増してレスポンスも向上している。クルマの挙動はよりソリッドになり、無駄な動きがほとんどなくなった。インチアップしたタイヤの性能も上手に使いこなしている。ISはスポーツカーではないけれど、ドライバーの意志にきちんと応えてくれる様は、まるでクルマとの会話を楽しんでいるようでもある。
パワートレインは、2Lの直列4気筒ターボ、3.5LのV6自然吸気、そして2.5Lの直列4気筒+モーターのハイブリッドの3種類で、それぞれIS300、IS350、IS300hとなる。トランスミッションはガソリンモデルが8速ATだ。ハードウエアはまったく同じだがソフトウエアは刷新されていて、たとえばハイブリッドは中間加速のレスポンスが向上。モーターのサポートを受ける発進の力強さがそのまま法定速度までずっと続くようになった。8速ATは、これまで無反応だったりビジーだった部分が大幅に削減されて、DレンジのままでもドライバーがMTで操作しているかのように思い通りのギアを選んでくれた。
個人的には3種類の中でもっとも軽快感のあるIS300が、このクルマのキャラクターには合っていると思った。従来型から劇的な変化はないけれど、乗れば乗るほどに良さがジワジワと染み出てくる、分かる人には必ず分かる熟成の味が新型ISには宿っていた。
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