クルマの乗り心地を決める要素は数多くありますが、その中でも影響が大きいのはサスペンションのセッティングです。クルマのサスペンションのセッティングは、各メーカーごとに異なるだけでなく、そのクルマが目指す走りの方向性によっても異なります。そこで今回は、乗用車の基本的なサスペンションのセッティングに注目し、クルマの出身国によってサスペンションの基本的なセッティングがどのように異なるのか、なぜそのようなセッティングなっているのか解説します。
クルマの乗り心地は生産する国によって異なる!?
クルマの乗り心地を決めるサスペンションの基本的なセッティングは、そのクルマの出身国によって異なります。なぜ、国ごとに乗用車のサスペンションのセッティングが異なるのでしょうか。それは、その国の土地や道路事情、速度域などが異なるためです。
日本も含め、各国や地域・場所によって道路事情はさまざまです。キレイに舗装されている道路もあれば、穴・くぼみがあったり荒れたままになっていたりする道もあります。また、石畳が多い地域や直線が長く続く場所など、同じ国の中でも道路事情はさまざまです。
さらに、各国や地域によって最高速度も異なります。日本の道路における最高速度は、一般道が60km/h、高速道路が100km/hまたは一部120km/hです。一方、自動車大国としても知られるドイツでは、一般道の最高速度が100km/hの道があったり、速度無制限の高速道路があったりします。
このように国・地域・場所、道路環境や最高速度の違いなどによって、クルマの乗り心地に対する考え方は異なります。
世界各国の乗り心地に対する考え方とは?
日本では、サスペンションのセッティングが柔らかめだと「乗り心地が良い」と言われるケースが多いです。なぜなら、日本の道路の最高速度は諸外国と比べると低く、狭い道路や交差点が多数あり、高い速度まで加速する必要がないケースが多いため、柔らかめのサスペンションセッティングで路面の凹凸を吸収する方が質感が良いと感じるためです。
一方、速度無制限の道路があるドイツでは、日常的に運転する生活道路でも日本の高速道路の最高速度程度の速さで走行することも珍しくありません。また、高速道路では、200km/h以上の速度で走行し続けることもあります。そのため、高い速度域でも目線がブレることがないサスペンションのセッティングが求められます。
つまり、単に「乗り心地」と言っても、道路環境や速度域によって求められるサスペンションセッティングが異なるのです。よって、日本では柔らかめの足まわりの方が「乗り心地がいい」とされ、ドイツでは高速域でも目線がブレないしっかりとしたサスペンション(ダンピングが効いている足まわり)が「乗り心地がいい」とされます。
このように、道路環境や速度域など、国や地域ごとに異なる運転環境によって、クルマに求められるサスペンションのセッティングや乗り心地に対する考え方が異なることを理解しておくと、クルマの見方や選び方などが変わってくるのではないでしょうか。