【比較試乗】ラグジュアリーでありながらハイパフォーマンス。頂点を極めたフラッグシップSUVの世界「BMW XMレーベル vs ポルシェ・カイエン Eハイブリッド vs メルセデス・マイバッハGLS600 4マチック vs レンジローバーSV」

最後に数あるSUVの中でも“究極”といえるラグジュアリーかつハイパフォーマンスなフラッグシップSUVを取り上げたいと思う。圧倒的な動力性能か? それとも贅沢を極めた室内空間か? あるいは両方か? SUVの極致ともいえる世界をお届けしよう。

各社の技術と贅を極めたラグジュアリーSUV

今回集められた4台のラグジュアリーSUVは、価格もキャラクターも生産国もバラバラ。「こんなので比較テストが成立するのかな?」と訝りながら試乗したところ、思いがけない発見があった。それについては後述するとして、まずは4台のインプレッションを順に記そう。

BMW XM LABEL/BMW史上2台目となる“BMW M”専用モデル。

まず試乗したBMW XMは、内外色に鮮烈な赤を取り入れた「レーベル」と呼ばれるスペシャルモデルだが、改めてそのステアリングを握って、これは「レスポンスのカタマリ」だと感じた。日本語としてはちょっとおかしいけれど、ニュアンスはわかってもらえるはずと信じて話を進めれば、4・4LV8ツインターボエンジンにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインは「タイムラグって何?」というくらいの勢いでいつでも素早く反応する。スロットルペダルを踏み込んだ量と、その瞬間に発生される加速Gの間にまったくズレがないという、ちょっとSF的な走りが堪能できる。

BMW XM LABEL/M1以来の“ BMW M ”専用モデルとなるXM。ベースモデルでも十分高性能だったが、さらにパフォーマンスを追求したのがこの「レーベル」である。

それはハンドリングも同様で、ガッチリとして遊びが皆無のステアリング系は切った量とヨーモーメントの量が常に完璧にシンクロしていて、まるでスポーツカーみたいなレスポンスが味わえる。これには、いかにも重心が低そうな車両レイアウトも利いているはずだが、今回乗った個体はこれまでの試乗車に比べると足回りの動き出しがさらにしなやかで快適性が増しているように感じた。おそらく、この辺も低重心設計が利いているのだろう。

BMW XM LABEL/最高出力585psを発揮する4.4LV8ガソリンターボエンジンにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせ、システムトータルでは最高728ps、トルクに至っては最大1000Nmをマークする超弩級のSUVだ。

いずれにせよ、こうしたシャープなレスポンス、そしてコーナリング性能の高さなどはBMWの伝統的な特色といえるもの。いっぽうで、2019年にドマゴイ・ジューケッツがチーフデザイナーに就任して以降の、やや奇抜ともいえるスタイリングは健在。その意味でいえば、XMはいかにも現在のBMWらしいハイパフォーマンスSUVといえる。

BMW XM LABEL/内外装に入る赤色のアクセントカラーはレーベルモデル専用装備、スポーティでありながらラグジュアリーな雰囲気を演出している。

続いてカイエン Eハイブリッドに乗り換えると、そこにはまるで異なる世界が待ち構えていた。ステアリング系自体の剛性や取り付け剛性が際立って高いのはXMと同じ。ただし、こちらはパワステの味付けがやや重めで、どっしりとした印象を与える。低速コーナーでのレスポンスに主眼を置いたXMに比べると、カイエンは高速直進性や超高速コーナーでの安心感やスタビリティを重視したセッティングと説明できる。

ポルシェ・カイエン Eハイブリッド/マイナーチェンジで骨太なスポーツSUVに回帰。

乗り心地の印象も、強力なダンパーでボディを支えているあたりがいかにもポルシェ的。しかも、路面からのショックは強靱なボディがすべて受け止めてくれるので、「足が硬い」のに上質な乗り心地が味わえる点もポルシェらしいところ。さらにいえば、これをカイエン Eハイブリッドという、シリーズとしては下から2番目のグレードで実現したところもポルシェならではの設定である。

ポルシェ・カイエン Eハイブリッド/ポルシェ初のSUVとして登場し、世界的なヒット作となったカイエン。現行モデルとなる3代目は2018年に登場。昨年4月にはマイナーチェンジが実施され、内外装をフェイスリフト、それまでのラグジュアリー路線からスポーツ路線へと回帰した。

もうひとつ、最近のポルシェといえば電動化を忘れるわけにはいかない。このカイエンもプラグインハイブリッドシステムを搭載。レスポンスや低速トルクなどの領域では3L・V6を効果的にサポートしてくれるため、動力性能にも不満を覚えなかった。ちなみに0→100km/h加速タイムの4.9秒は4LV8を積むマイバッハと並ぶデータ。最長90kmのEV走行が可能な点も特筆すべきだ。

ポルシェ・カイエン Eハイブリッド/今回試乗したプラグインハイブリッドモデルの「Eハイブリッド」は、3L・V6ターボエンジンにモーターを組み合わせ、システムトータルでは最高出力470ps、最大トルクは650Nmを発揮する。

2017年にデビューした当初の3代目カイエンは、ラグジュアリー色が強くなってやや頼りないと感じる部分があったが、昨年行なわれたマイナーチェンジで一気に骨太なスポーツSUVに回帰した。したがって、個人的にどちらが好みかと聞かれたら、迷うことなく「マイナーチェンジ後の最新モデル」と答えるだろう。

ラグジュアリーSUVの頂点贅を尽くした“おもてなし”

ここからご紹介する2台は、スポーティなXMやカイエンとは趣がガラリと変わり、快適で装備が充実した、本当の意味でのラグジュアリーSUVである。

メルセデス・マイバッハGLS600 4マチック/メルセデス・ベンツGLSをベースに、マイバッハが手を加えたショーファードリブンカー。やはり特筆すべきはリアシートで、シート表皮はもちろん、手に触れるほとんどの場所がレザーで覆われ、まさに豪華絢爛といった造り。シートは最大43.5度までリクライニングするほか、センターアームレスト後方には、シャンパングラスも収納できるクーラーボックスまで備わる。まさに“ 走るファーストクラス”と呼べる存在だ。

メルセデス・マイバッハ(以下マイバッハ)が2021年に世に送り出したGLS600 4マチックは、当時、市場に大きな衝撃をもたらした。それまではSクラス・ベースのリムジンしかなかったマイバッハに、室内高に余裕があるSUVが追加されたからだ。しかも、豪華さや装備の充実度はリムジンに匹敵する内容で、その「おもてなし度合い」はすさまじいとしかいいようがない。

メルセデス・マイバッハGLS600 4マチック/圧倒的な乗り心地と居住性はまさに“走るファーストクラス”。

たとえば、試乗車のようにオプションのファーストクラス・パッケージを装備すると、リアシートはぜいたくにも2脚のみとなるうえ、それが国際線のビジネスクラスもかくやというくらいのフルフラット状態までリクライニング。しかも後席センターコンソール内には冷蔵庫とともにシャンパングラス2個が固定できる台座まで用意されるのだ。シートに用いられるナッパレザーも、以前試乗した初期型に比べると大幅に質感が高まったように思える。

メルセデス・マイバッハGLS600 4マチック/贅を尽くした究極のショーファードリブンSUV。

ステアリングを握った印象もいくぶん進化していた。乗り心地にまとまりが生まれるとともに、パワステのしっかり感が向上しており、クルマの本質的な部分にも手が加わったことをうかがわせた。
ただし、ステアリングは直進付近の感触がややデッドなうえ、コーナリングではブレーキングで前荷重にしないとアンダーステアに陥りがち。そのブレーキペダルにしても、トラベル初期の遊びが大きめなことが気になった。

メルセデス・マイバッハGLS600 4マチック

おそらく、マイバッハはショーファードリブンを主に想定しているのだろう。その範囲でいえば申し分のない完成度といえる。

性格も性能も異なる4台を通して見えてきたもの

残る1台はレンジローバーSV。レンジローバースポーツSVと混同しそうなモデル名だが、後者がダイナミック性能を引き上げたスポーツSUVであるのに対して、前者はあくまでもラグジュアリーSUVとの位置付け。ちなみに“SV”の名は、この世代から「各モデルの特徴をもっとも強調したグレード」に与えられることになった。同じSVでもレンジローバーとレンジローバースポーツでまったく性格が異なるのは、このためだ。

ランドローバー・レンジローバーSV/同じ“ラグジュアリー”でも、ここまで解釈が異なる。

その豪華さはマイバッハに一歩も引けをとらない。もっとも、マイバッハの世界観が「クラシカルでわかりやすいラグジュアリー」だとすれば、レンジローバーSVのほうは「よりモダンで控え目なラグジュアリー」と説明できる。ちなみにレザーはレンジローバーのほうがややソフトなほか、インテリアカラーの微妙な色調は実に繊細で上品。同じ豪華さでも、両ブランドの間にはその考え方やフィロソフィーに大きな隔たりがあるように思えた。

ランドローバー・レンジローバーSV/押しが強すぎない、モダンラグジュアリーを追求。

ドライビングフィールもレンジローバーSVのほうがしっかりと作り込まれていて、ドライバーズカーとしての使い方を想定していることをうかがわせる。リアシートがマイバッハほど大きくリクラインしないのも、「クルマは移動するもの」という前提に基づく判断なのだろう。

ランドローバー・レンジローバーSV/レンジローバーといえば“ 砂漠のロールス・ロイス”とも呼ばれるラグジュアリーSUVの元祖だ。今回の試乗車はロングホイールベースかつ最上位グレードである「SV」で、シグネチャースイートと名付けられたリアシートはまさに贅沢の極み。

つまり、4台の比較テストは、スポーティ系とラグジュアリー系という2組のジャンルを同時に取り扱ったものだったのだ。しかも、同じジャンルでもブランドの立ち位置がしっかりと表現されていることが実に興味深かった。

ランドローバー・レンジローバーSV/エクステリアも含め全体的な雰囲気は、前述のマイバッハに比べると控えめかつモダン。華美になり過ぎない英国車らしい演出だ。

電動化を急ぐ欧州の自動車業界では、エンジンという個性が失われる対策の一環としてブランドの「カラー」を鮮鋭にする動きが強まっている。そうしたなか、今回の比較テストを通じて、ブランドごとのキャラクターがより明確になったとすれば幸いである。

ランドローバー・レンジローバーSV

【OTANI’Sパーソナルチョイス】PORSCHE CAYENNE E-HYBRID
走りとは別に嗜好性で捉えると、XMとマイバッハがギラギラ派、カイエンとレンジローバーはシットリ派とも表現できる。ちなみに私の好みは後者。どちらも魅力的だが、扱いやすさも含め、ここではカイエンを選びたい。
【SPECIFICATION】BMW XM LABEL
■車両本体価格(税込)=24,200,000円
■全長×全幅×全高=5110×2005×1755mm
■ホイールベース=3105mm
■車両重量=2730kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/4394cc
■最高出力=585ps(430kw)/6000rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1800-5400rpm
■モーター最高出力=197ps(145kW)/6000rpm
■モーター最大トルク=280Nm(28.6kg-m)/1000-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:275/35R23、後:315/30R23

問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

【SPECIFICATION】ポルシェ・カイエン Eハイブリッド
■車両本体価格(税込)=13,950,000円
■全長×全幅×全高=4930×1983×1696mm
■ホイールベース=2895mm
■車両重量=2425kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ターボ/2995cc
■最高出力=304ps(224kw)/5400-6400rpm
■最大トルク=420Nm(42.8kg-m)/1400-4800rpm
■モーター最高出力=176ps(130kW)
■モーター最大トルク=460Nm(46.9kg-m)
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション=前後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:255/55ZR20、後:295/45R20

問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911

【SPECIFICATION】メルセデス・マイバッハGLS600 4マチック
■車両本体価格(税込)=32,200,000円
■全長×全幅×全高=5210×2030×1840mm
■ホイールベース=3135mm
■車両重量=2810kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3982cc
■最高出力=557ps(410kw)/6000-6500rpm
■最大トルク=770Nm(78.5kg-m)/2500-5000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:4リンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:285/40R23、後:325/35R23

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

【SPECIFICATION】ランドローバー・レンジローバーSV
■車両本体価格(税込)=33,650,000円
■全長×全幅×全高=5258×2005×1870mm
■ホイールベース=3197mm
■車両重量=2750kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/4395cc
■最高出力=615ps(452kw)/5855-7000rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1800-5400rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:ダブルウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:285/40R23、後:285/40 R 23

問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン TEL0120-18-5568

フォト=佐藤亮太 ル・ボラン2024年7月号から転載

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