MINIの4番目のモデルとして、MINI初のプレミアムコンパクトSUVとして誕生したクロスオーバーが、その名を国際名称のカントリーマンと改め、待望の日本上陸を果たした。サイズもよりビッグになったが、中身の進化もビッグなチェンジだった!
ひと回り大きくなったカントリーマンの登場
2024年はMINIの大変革の年だ。今回紹介するカントリーマンを皮切りに、コアモデルである3ドアが3月1日に発表されて日本でもお披露目済み、MINI史上初のBEV専用モデルのACEMANも年内には発表される。世代交代の波が訪れているのだ。
カントリーマンは、日本においては商標の都合でクロスオーバーと名乗って2011年に初代がデビュー。3ドアなど他のモデルとはプラットフォームからして違い、初の4ドアと大きなボディ、広々とした室内をもつ同モデルは、一部でMINIらしくないという声も聞かれたが、デザインやキャラクターには強く惹かれているけれど家族持ちだから、あるいはアウトドアスポーツ用の荷物が載らないから手を出せないという人たちにもウケて、大ヒットとなった。
本来の車名であるカントリーマンとしてデビューした3代目は、ユーティリティをさらに高めるために大型化してデザインも革新。ガソリン1.5LターボのカントリーマンC、ディーゼル2LターボのカントリーマンD、ガソリン2LターボのカントリーマンS ALL4、ハイパフォーマンスなガソリン2Lターボを搭載するJCW(ジョン・クーパー・ワークス)カントリーマンと4つのエンジン車にくわえてBEVのカントリーマンEおよびカントリーマンSE ALL4も日本導入される。
ボディサイズは全長4445×全幅1845×全高1660mm、ホイールベース2690mmで、先代に比べると全長130mm、全幅25mm、全高65mm、ホイールベース20mmの大型化。特に後席のフットスペースとラゲッジルームが広くなっており、ますますファミリーカーニーズに応えるものとなった。エクステリアデザインは大きくてもMINIらしく、というある種の縛りを開放したようでフォルムはSUVらしい。サイドの面はツルンとしたシンプルなものでフェンダーでタイヤの大きさを強調して逞しくみせている。オーバーハングを切り詰めて軽快感を出すのがMINIのお約束だったが、それもせずにユーティリティを優先したことがわかる。Cピラーの形状はルーフを支えて垂直方向の存在感を印象付けるもので、MINIらしい遊び心だが、SUVらしさでもあるだろう。ヘッドランプはMINIの基本である丸型ではなく、カクカクとしていて八角形のグリルとともにカントリーマン独自の表情を作りだしている。
インテリアで目をひくのは円型センターディスプレイだ。以前のモデルは円型の枠のなかに長方形のディスプレイが埋め込まれていたが、新世代のそれは円型がきっちりとディスプレイになっている。しかも有機ELなので発色が良くて見やすい。ステアリングホイール背後のメーターは廃止され、ヘッドアップディスプレイとセンターディスプレイのみですべてのコンテンツが映し出される。
スポーティなJCWしなやかさが際立つS
今回はカントリーマンS ALL4とJCWをトータル約600kmのロングドライブで試した。ファミリーユースも多いであろうカントリーマンにとってロングドライブ性能も重要な指標のはずだ。
両車ともエンジンはガソリン2Lターボだが、カントリーマンS ALL4は最高出力204ps/5000rpm、最大トルク300Nm /1450-4500rpm、JCWは317ps/5750rpm、400Nm /2000-4500rpmとなり、JCWのほうがハイパフォーマンスで高回転型なのがわかる。トランスミッションはいずれも7速DCTだ。
じつはJCWは欧州でも試乗しており、欧州では荒れた路面での乗り心地の良さに驚いたのだが、日本の路面でも同様なのか知りたかった。その結果は概ね想像通り。日本特有の都市高速のジョイントなどでも嫌な突き上げ感はない。快適だとはいえ、スポーティなMINIのサスペンションは決して軟弱ではなく、それなりに引き締まってはいるのだが、しなやかにストロークさせてタイヤの接地性を高めているのだ。ジョイントのように凹凸が大きくても一発で終わるところでは巧みな足捌きだったが、路面の荒れが連続する場面では少々の硬さを感じることもあった。電子制御の可変ダンパーが装備されているので状況に応じてダンピングを適正化しているが、凹凸が連続すると少し追いつかないことがあるという印象だ。それでもハンドリングがスポーティなわりには硬さは十分に抑えられていると言っていい。
ワインディングでは大きくなったボディをキュンキュンと小気味良く走らせる。3ドアなどに比べるとステアリング操作に対する応答性はそこまで高くないが、しなやかなサスペンションによってしっかりとタイヤを地面に押しつけていく感覚がわかりやすく、バリバリのゴーカートハンドリングよりも、むしろ一体感があるほどだ。
エンジンは、比較的に高回転型と前述したが、それのネガはまったく感じない。エンジン回転数が低くてもアクセルを踏み込めば図太いトルクでグイッと加速が始まり、高回転ではパワーが炸裂していく。迫力あるサウンド、切れ味鋭い7速DCTも相まって、高性能エンジンを堪能する贅沢な気分が味わえる。これだけでもJCWを選びたくなるほどだ。
一方のカントリーマンS ALL4も引き締まったスポーティなサスペンションながら快適性は高いという雰囲気は似ていた。ところがこちらはさらにしなやかで、件の凹凸が連続した場面での足捌きは一枚上手。ゴツゴツッと感じることがなくて終始快適。そのかわりにコーナーでの反応はやや穏やかになる。スポーティと快適性のトレードオフが素直に出ていた。
エンジンは十分にパワフルで動力性能への不満はまったくないのだが、低回転でアクセルを踏み込んでいったときの力強さはJCWにかなわない。高速道路で巡航から追い越しへと素早く移行したいときなどに差がでる。JCWならば右足をグイッと動かせば思い通りになるが、カントリーマンS ALL4で同じような気分で加速したいのならパドルシフトで予めシフトダウンしておくべき、というくらいの差は感じられた。
新型カントリーマンはMINIらしさを残しつつ乗り心地のクオリティを高めてきた。マニアックではないものの、ちょっとスポーティなファミリーカーとして理想的な仕上がりなのだ。
【SPECIFICATION】ミニ カントリーマンS ALL4
■車両本体価格(税込)=5,660,000円
■全長×全幅×全高=4445×1845×1660mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1640kg
■エンジン形式/種類=B48A20P/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1998cc
■最高出力=204ps(150kW)/5000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1450-4500rpm
■燃料タンク容量=54L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=13.1km/L
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18/225/55R18
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-3298-14
【SPECIFICATION】ミニ ジョン・クーパー・ワークス カントリーマン
■車両本体価格(税込)=6,670,000円
■全長×全幅×全高=4445×1845×1645mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1680kg
■エンジン形式/種類=B48A20H/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1998cc
■最高出力=316ps(233kW)/5750rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000-4500rpm
■燃料タンク容量=54L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/40R20
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-3298-14
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