WECスパ・ラウンド取材で円安を改めて実感! レースは大勢の観客が押し寄せました【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

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ル・マン24時間前哨戦の結果はいかに?

4月末の吹雪に続き、5月に入って大雨が降って寒い日々が続いたと思ったら、一気に新緑が芽吹いてまるで別世界のように青空と若葉が美しい季節になってキラキラしているように見えるミュンヘンです。自宅付近は首都高速のような道路があり大渋滞地区ながら、そこから200m程離れた自宅の部屋の窓を開けると美しい鳥のさえずりが聴こえ、近所ではリスやハリネズミ、野兎も時折顔を見せてくれるのでとても癒されます。

さて、9月には日本にもやってくるWEC(世界耐久選手権)の第3ラウンドとなるベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットへ取材に行ってきました。自宅のあるミュンヘンからは、片道が役640kmの距離です。

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アウトバーンをベルギー方面へ向かって走っていると、後ろからベルギーナンバーの青いゴルフがめちゃくちゃ煽ってきます。面倒くさいな、と思って走行車線に留まり抜いて行ってくれるのを待ちましたが、一向に抜かれずちょっとイライラ。アクセルを緩めていたのですが、速度制限解除区間という事もあり、私も再び加速するとまたまたぴったり着いてくる。そんな繰り返しを何回かして、横並びになった時にどんなヤツが煽っているのか見てみると、なんと旧知のベルギーメディアのフォトグラファーで大爆笑。私もパッシングで思い切り煽り返して差し上げました(笑)。

さて、次戦はル・マン24時間レースとなるので、それの重要なリハーサルの意味も持つレース。特に今年はハイパーカークラスへ参戦する自動車メーカーが増え、迫力あるバトルがぐっと魅力を増しています。

トヨタの熱心なファンのは有名人。

各チームやメーカーの応援グッズを身に着けたファンの方々でパドックもコースサイドも大賑わいです。このレースウィークは過去最高の88,180名の入場者を記録したそうです。お天気にも恵まれて初夏の陽気のレース観戦日和!

観覧車に乗って見たオゥルージュは最高!

スパはアップダウンが激しいサーキットで、最高の高低差は約104mだそうです。コースサイドを重いカメラやレンズを持って歩くのはかなりヘビーで、腰や両脚に負担が多く掛かりますので、私はいつも仕事用のバッグには湿布を常備しています(笑)。コースサイドをヒーヒー言いながら歩いている横で、ファンのみなさんの楽しそうな姿はウラヤマシイですね。

ベルギー発祥とされるフリッツ。マヨをたっぷりかけるのが本場流。

ベルギーといえばビールの国です。あちこちで生ビールをグビ~っとおいしそうに飲んでおられる方々に見惚れてしまいました。また、ベルギーはフリッツ(フライドポテト)の発祥の国(所説あります)だけに、パドックの露店はもちろんの事、街のあちこちに揚げ物屋さんがあります。確実に肥りますが、このポテトが大好きなので、ベルギーに行ったら必ずどこかで食べます。

ベルギーといえば、焼きたてワッフル。イベントリアでも熱々ワッフルが買えます。

メディアセンターでベルギー人のライターとそれについて盛り上がり、彼らがいうにはフランス人は『フレンチフライ』と言い張るが、ジャガイモを揚げるのを発見したのはベルギー人だ!と。日本でいうところのたこ焼きや焼きそばのような国民的スナック感覚でしょうか?

ポテトひとつの値段は10ユーロでした。約1700円!

私がいつも行っていたお店は、ベルギー人によると街では最低ランクのお店だとおっしゃるではありませんか⁉ 失礼ながら、冷凍のジャガイモを揚げるだけで、どこで食べてもそうたいした差はないのでは? と言ってしまったのでさあ大変。「おい、ちょっと待て、誰がどう揚げるのかが重要なんだよ!」とお叱りを受けました(笑)。

スパのオフィシャルカーの中にはホンダも!

きっと職人さんが揚げてくださる日本の天ぷらや豚カツのおいしいお店が人気なのと同じ感覚なのかな? と理解しました。このフリッツ、お店ごとにマヨネーズや色んなソースが別料金でおススメしてくれるのですが、私は何も付けずに食べる派です。

ロッシショップはいつも大人気。

今年は多くの自動車メーカーが参戦しているので、メーカーのショップや展示車両も例年を上回っていて、それを見に行くのも楽しみのひとつです。取材の合間に何度か寄ってチェックしています。開幕戦のカタールやその次のイモラではなかったWECの新オフィシャルグッズが幾つか増えていました。

ちょっとダサいけど買おうか悩んだWECスパTシャツ。

スパのTシャツはラスト1枚で、ちょっとダサいながらも買おうかどうか迷ってしまいました。ステアリング型のマグネットも気になりましたが、12ユーロ。価格だけ見ると12ユーロ=1200円のような感覚ですが、今の円安で考えるとなんと2千円以上するではありませんか。さすがにマグネット1つで2千円は手が出ませんね。

さすがにマグネット12ユーロは高級。

BMWのショップでは、なにか一つ買うとトートバッグをプレゼントという事で、一番安いソックスを購入してトートバッグをゲット! しっかりとしたキャンパス生地でノベルティとは思えません。しかし、うまく考えてあるのですが、一番安かったソックスでさえ25ユーロで約4200円となかなかな価格ですよね。ユーロ圏に住んでいても、円報酬で生きている私にとっては、ヨーロッパの強いインフレも重なり苦しい限りです。

BMWのショップで貰ったトートバッグは嬉しい。

WECではVIPの方々やチームが食事をする立派なホスピタリティが有名ですが、メディア関係者は基本的にインタビューの時しか立ち入る事が出来ません。ですから、ファンの方と同様にその中がどうなっているのか、とても気になっているんですよ(笑)。

フェラーリのホスピのパンの山は食べられるのかオブジェなのか不明。

このスパではBMWで朝食会があり、ドライバーのインタビューの後は焼きたて熱々のワッフル等が振舞われました。他にもフェラーリのインタビューの際にもホスピタリティに入りましたが、パンのタワーだけがあり、他の物は全て片付けてありました。

メディアセンターの朝食クロワッサン。うかうかするとすぐに無くなります。

では、メディア関係者はレースウィークに何を食べているのかというと、サーキットごとでご提供頂くモノは違うのですが、スパでは朝食にクロワッサンとチョコパンを頂きました。残念ながらランチやディナーはなく、自分で何か持って来る必要があります。

メディアセンターのカップスープ。インスタントながらなかなかおいしいけれど、粉が詰まってよく機械が故障するのが困りもの。

ただ、スパではコーヒーマシンと一緒にカップスープのマシンがあり、スープも飲み放題です。チキン・トマト・ほうれん草の三種類で、トマトとほうれん草のスープがなかなかおいしいですよ。

アルピーヌの水素カー。未来の乗り物感が満載。

フリープラクティスの日にイベント広場を見にいったら、アルピーヌにカバーの掛かったクルマが用意されていて気になっていました。レース決勝日の朝にお披露目になった事もあり、再度足を運んでみると、めちゃくちゃ大きなスポーツカーです。水素のスーパーラグジュアリーカーだそうで、これも未来の世界なのでしょうね。2026年からはWECやル・マンでは水素カーのクラスが新設されるようです。一体、どれだけの台数が集まるのか気になるところですね。

決勝レース日はとても気持ちの良い快晴でした。前日に行われた予選でハイパーカーのポールポジションを獲得したのは50号車のフェラーリでしたが、ペナルティにより代わりに予選2番手だった5号車のペンスキーのポルシェがポールポジションへ昇格しました。LMGT3クラスのポールポジションはピンクの85号車のランボルギーニが獲得、それも女性ドライバートリオとは、なんと素晴らしい!

見事LMGT3クラスでPPを獲得した女性トリオのドライブするランボ

序盤はかなり荒れ、長いセーフティカー導入がありました。ヴァレンティーノ・ロッシらが乗り込むBMW M4 GT3の46号車は2番手からスタートし、トップ争いをしていた良いペースの所に他車のクラッシュに巻き込まれて遭えなく終了でとても悲しかったです。
ロッシのいなくなったレースでがっかりしたのもつかの間。ゴールまで2時間を切った頃にハイパーカーのキャディラックがオーバーテイクに失敗し、ロッシのチームメイトのドライブする31号車のM4に追突する大クラッシュで赤旗が振られてレースが中断。

赤旗でレース中断、延長戦でレース終了時は日没に。

ドライバーの救出(両者とも無事でした!)、車両や飛び散ったパーツやオイルの撤去、ガードレールやフェンスの修理等でその時間は非常に長く、当初のレース終了時刻が近づく中で、もうこれで再開はないかと思った矢先に、赤旗で中断していた1時間44分の延長戦がいきなり発表されててんやわんやでした。

日没間近のゴールとなりましたが、ハイパーカークラスは12号車のJotaレーシングのポルシェ963、LMGT3はマンタイレーシングの91号車のポルシェ911 GT3 Rが優勝し、ポルシェのW優勝で幕を閉じました。

ちみにこの週末にはポルシェはアメリカのラグナ・セカで開催されていたIMSAでもポルシェ963とGT3がダブル優勝、オマケにベルリンで開催されていたフォーミュラEでも優勝するという、一週末で5勝を挙げるという驚異の強さでした。

このレースがあったレースウィークは飛び石連休で、近場にレジャーに行った人々で、翌日もドイツの自宅へ戻るまでに渋滞やノロノロ運転に何度も遭遇しました。

また、いわゆる『サンデードライバー』も多く、ビックリドッキリな運転をされる方々もたくさんおられて困りました。ちなみにドイツにも『ゾンタークスファーラー』といい、日本と全く同じ意味を持つコトバがあるんですよ。その一方で、思わずお手本にしたくなるような、非常にスマートで上手な運転をされる方に遭遇すると、その後を着いて走るととてもスムーズで気持ちが良いものです。

この記事を書いた人

池ノ内 ミドリ

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

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