ニュースなどで度々話題となるあおり運転。よく目にするのは、車間距離を詰めて前のクルマを煽って走行するといった様子です。このようなことを記事にしている教習指導員(普通自動車第一種/普通自動二輪)の資格を持つ筆者も、あおり運転の被害を受けることがあります。ルール通りに運転をしているにも関わらず、車間距離を詰められたときはどのような対処をしたら良いのでしょうか。今回は、あおり運転の典型例ともいえる車間距離を詰められたときの対処法について紹介します。
そもそもあおり運転とは?
そもそも「あおり運転」とは「妨害運転罪」に該当する危険な運転行為です。妨害運転罪が創設されるまでは、あおり運転を取り締まる規定がなく、他の交通違反や暴行罪などを適用して取り締まっていました。
2020年6月に道路交通法が改正され、妨害運転罪が創設されたことで、他の車両の通行を妨げる目的で行う危険行為を取り締まれるようになり、罰則が強化されました。あおり運転として取り締まられる対象は、車間距離不保持(車間距離を詰める)、急な進路変更、急ブレーキなど10類型です。
警察庁「あおり運転に関するアンケート」(令和元年)をもとに政府広報オンラインが作成した情報によると、過去1年間のうちに35%の人があおり運転の被害経験をしたことがあり、そのうち約77%が一般道で被害を受け、後方からの著しい接近をされた(車間距離不保持/車間距離を詰められた)と回答した人が80%以上という結果になっています。
このようなことからも、車間距離を詰めるという危険な運転行為はあおり運転の典型例といえるでしょう。
あおられている……、と感じた時に取るべき方法
車間距離を詰められて煽られていると感じたとき、どのような行動を取ればよいのでしょうか。主な対処法は次のとおりです。
・左側の車線へ進路を変える(片側2車線以上ある道路の場合)
・駐停車禁止場所ではないことを確かめためて路端停車をして煽ってくるクルマを先に行かせる
・ファミレスやカフェに入って休憩する(休憩と同時に気持ちを落ち着かせることができる)
・すぐに後続車を先に行かせられない場合はルールに従った運転をして後続車を譲れるタイミングが来たら譲る
など
このような方法で車間距離を詰めて煽ってくるクルマを先に行かせるのが有効な手段といえるでしょう。
運転は許可されている行為であることを忘れてはならない
あおり運転は交通社会における危険な運転行為です。運転免許を保有している運転者が、他の交通(他のクルマやバイク、自転車・歩行者など)を危険な状態・状況に追い込んではなりません。
そもそも、クルマの運転について道路交通法では、「公安委員会の運転免許を受けずに自動車または一般原動機付自転車を運転してはならない」と定められています。つまり、クルマの運転は法律により原則として禁止されている行為ということです。ただし、公安委員会が行う運転免許試験に合格した場合は、運転免許の交付を受けることができます。
運転免許試験は、次の3つで構成されています。
1.自動車等の運転について必要な適性
2.自動車等の運転について必要な技能
3.自動車等の運転について必要な知識
これら全てに合格しなければ運転免許の交付を受けることができません。つまり、運転免許を保有しているということは、道路交通法をはじめとする交通ルールを知っていて、ルールに従った運転ができるということを意味しています。
公安委員会が交付する運転免許を保有しているという自覚や原則として禁止されている車両の運転を許可されていることなどを再認識することが、安全で快適な交通社会を実現するために必要なことだといえるでしょう。