【フロントライン】ウッドセクションに8000時間、組み立てに5カ月を要する最高傑作。3作目のコーチビルドコミッション「アルカディア・ドロップテール」を発表

ロールス・ロイス アルカディア・ドロップテール

コーチビルドという言葉をご存知だろうか?
自動車が発明される以前、富裕層は自分の好みに応じて馬車(コーチ)のボディを注文していた。その流れは、自動車が誕生してからもシャシーとボディが別体だった1940年代まで続いたが、やがてモノコックボディが主流になるとコーチビルドも廃れていった。
ロールス・ロイスがコーチビルド事業を“再開”する意向を明らかにしたのは2017年。顧客の要望により世界でたった1台だけを製作するワンオフモデルのスウェプテールを発表したときのことだった。
続いて2021年には第2弾となるボートテールを発表。こちらは全世界で3台だけが製作されるフューオフモデルとされた。

薄いヘッドライトと“ パンテオン”が軽快感を生むアルカディア・ドロップテール。傍らに立つのは、コーチビルディング部門デザイン責任者のアレックス・イネス。

去る2月29日、ロールス・ロイスはコーチビルド第3弾となるドロップテールをシンガポールで発表した。それは、このアルカディア・ドロップテールと名付けられたモデルのオーナーがアジア太平洋地域在住であることと、コーチビルドを始めとするビスポーク事業をこの地域でさらに発展させたいとの思いを込めて実施したイベントだった。
純白に見えるボディカラーはオーナーの要望に依るものだが、ここにブルーやオレンジのフレークを封じ込めることで鮮やかなパールカラーとし、自然光のもとでボディの抑揚がくっきりと浮かび上がるように工夫された。

贅沢な作りの2シーターロードスター。複雑な寄せ木細工のように見えるウッドセクションの製作には熟練工の手をもってしても8000時間を要した。

ロールス・ロイスにしてはルーフが短く見えるのは、ドロップテールが贅沢な2シーターロードスターであるため。BMW傘下となって再出発した同社が2シーターロードスターをリリースするのは、今回が初めてとのこと。しかも、通常であれば後方に向けて長く伸ばすことでエレガントさを生み出すリアオーバーハングも、ロードスターという車形ゆえにあえて短縮し、落ち着きのなかにも軽快感漂うプロポーションとした。

“オリベ”の名が付けられたこのビスポーク・ファントムは織部焼のグリーンがボディカラーのモチーフで、エルメス製のレザーを使用。オーナーはあの前澤友作氏である。

無駄を極力廃したシンプルな造形のサイドビューも特徴的。「これは1910年代に時速100マイルの壁に挑戦したロールス・ロイスのスラッガードにインスパイアされたものです」ドロップテールのデザインを担当したアレックス・イネスが語る。「余計なモノを取り除いた機能美を追求するようになったのは、このスラッガードがきっかけでした」
ドロップテールはこのアルカディアを含め、合計で4台が製作される模様。価格は未発表だが、40億円は下らないと見られる。

フォト:ロールス・ロイス・モーター・カーズ ルボラン2024年5月号より転載

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