LMの30周年を記念する限定販売モデルが孤高のオーラを放つ。次の30年、いや未来永劫、主役であろうとする意思表示のように。姿カタチは不変のまま時代を駆けぬけるBBSの象徴的存在──。LMを前にして偉大なるそのエンジニアリングに敬意を払いたい。
最新モデルでも違和感なく溶け込むミラクルホイール
BBSホイールの代名詞的存在であるLMが2024年で30周年を迎えた。サイズやカラーバリエーションこそ拡大し続けているが、その造形は30年前のまま。基本的な姿カタチを踏襲しながら、ここまで生き長らえる工業製品などほかを見渡しても皆無だ。発売当初からオーバースペックと言えるほどの性能を持っていた証であり、時間軸を超えて人々の琴線に訴えかける美しさがあるからだろう。
10交点クロススポークのディスクとリムからなるアルミ鍛造2ピースホイールというのがLMの骨格だ。現在は17〜21インチの幅で、多種多様な車種へと適合する。写真はLM30周年記念モデルのDG-BKBD。2024年中の限定販売で30周年記念ステッカーが付属する。
気をてらわずド直球でBBS哲学を表現する10交点クロスポークをはじめ、あらゆるコンペティションユースやサイズマッチングに対応するための2ピース構造、サークル形状のセンターパートなど、どこをとっても機能美の追求を感じる。同様のアプローチを7交点クロススポークに置き換えて2007年に発売したLM-Rは、もともとLMの後継モデルという位置付けだった。しかしフタを開けてみたら両方とも快進撃がとまらない。今も双方がカタログモデルとして現行型であり続けている。
1983年にドイツBBSとワシマイヤーとの技術提携により日本BBSが誕生。その後、一連のRSシリーズが生まれ、ル・マンを含むレースシーンではBBS製のレーシングホイールが活躍した。そうしたバックボーンを経て生まれたのがLMである。
なにしろ最新車両に持ち込んでもまるで違和感がない。無理くりレトロっぽさを強調するわけではないし、リバイバルモデルという風情でもない。30年もの間、あらゆる車種にすっと溶け込むデザイン性には感服させられる。隣り合うスポークを交わらせる、あるいは1本のスポークを分割しつつ、リムとの間で三角形を形成するクロススポークは、応力分散の面から最適な形状だというエンジニアリング上の視点も見逃せない。
1994年にLMが新発売された際のカタログ。当初は17、18インチで国産スポーツカーのみを想定したラインナップだった。しかしポルシェ製レーシングカーの写真が用いられるなどレーシング直系を示唆させるものであり、その後は輸入車への適合も始まる。
BMWチューナーの大御所にして一連のBBSを長らく取り扱うスタディの会長、鈴木“BOB”康昭氏は、かつてLMを履かせたデモカーを前にこう言っていた。「僕らは常にトレンドを見据えて、あるいはそれを牽引しようとしてさまざまなアプローチを続けている。だけど、悔しいけれどLMにはいつの時代も“絶対的王道感”がある。これを選んでおけば安心みたいな。どんなに技術が進化し、トレンドが移り変わって新作が出てきても、やっぱりLMに終始するって人の気持ちがわかる」
彼が述べた意見はLMに対する最大の賛辞なのだろう。それほどまでに王道的存在だからこそ、LMは今日も生き続けている。近頃はユーザー投票によって2024年度における限定販売モデルを決めるというオーディションを実施し、晴れてダイヤモンドゴールドディスク/ブラックブライトダイヤカットリムが選ばれた。エントリーの中には新時代を感じさせる色味も見受けられたが、それでもやっぱり「LM×ゴールド」が支持されるあたり、伝統芸を好む人々の熱量が証明されたかのようだ。それでも新設されたオートメーションの塗装工場を含めたあらゆる技術革新によって、塗装品質は日増しに進化を遂げている。
E30 M3を筆頭にBBS製クロススポークとBMWとの親和性は高い。その印象を基にしてBMWチューナーやユーザーは、率先してBMWにLMを組み合わせてきた。またアバルト124スパイダーなどのスポーツカーにもLMは似合ってしまう。日本では国産4ドアセダンに乗る層から支持された歴史もある。
BBSは時代ごとに新しいクロススポーク像を次々と表現している。その勢いには圧倒されつつも、同時に30年選手であるLMがここまでの存在感を持つことに驚く。流行は目まぐるしくうつり変わるものの、本物は永遠に輝きを放ち続ける。そんなことを訴えかけてくるような10交点クロススポークを前にして、物語はこれからも続いていくと確信した。
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