移動手段の多様化が進み、さまざまな乗り物を目にするようになりました。交通社会を見ると、クルマやバイク、自転車や原付き、電動キックボード、歩行者など、さまざまな乗り物に乗った人や道を歩いている人を目にします。一方、交通手段の多様化に伴い、これまでになかったトラブル、事故寸前のヒヤリ・ハット、交通事故が増えてきました。今回は、前回の電動キックボードに関連して「特例特定小型原動機付自転車」について解説します。
電動キックボードの「特例特定小型原動機付自転車」とは?
特例特定小型原動機付自転車は、前回解説した特定小型原動機付自転車に「特例」と付いていることから、電動キックボードではあるものの何かが違うのだろうという推測はできるでしょう。
一般的に「特定小型原動機付自転車」と「特例特定小型原動機付自転車」は、まとめて「電動キックボード」とされてしまうことが多いため、具体的な違いがわからない方も多いのではないでしょうか。
ここからは、「特定小型原動機付自転車」の概要を簡単に紹介した後、「特例特定小型原動機付自転車」について解説します。
特定小型原動機付自転の基本
特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード)は、大きさが普通自転車と同程度であることなど、一定の基準に該当する電動キックボードのことです。通行する場所は、車道、普通自転車専用通行帯や自転車道となります。細かな規定などについては、前回の解説をご覧ください。
特例特定小型原動機付自転車は歩道における電動キックボード
では、「特例」の2文字が付く「特例特定小型原動機付自転車」とはどのような電動キックボードなのでしょうか。
特例特定小型原動機付自転車は、特定小型原動機付自転車のうち、1〜5の条件に該当する電動キックボードです。また、他の車両を牽引していないもの(遠隔操作により通行させることができるものを除く)をいいます。
つまり、電動キックボードのうち、次の5つの条件に該当していれば、「特例特定小型原動機付自転車」となるのです。では、5つの条件を見ていきましょう。
1.歩道等を通行する際に最高速度表示灯を点滅させていること
2.最高速度表示灯を点滅させている間は、車体の構造上6km/hを超える速度を出せないこと
3.側車を付けていないこと
4.ブレーキが走行中容易に操作できる位置にあること
5.鋭い突出部のないこと
この5つすべてを満たしていなければ、特例特定小型原動機付自転車として認められません。また、アクセルの操作によって特定小型原動機付自転車を6km/hを超えない速度で走行させている場合は、特例特定小型原動機付自転車に該当しないものとなります。
特例として認められる5つの条件のすべてを満たしていれば、電動キックボードで歩道を通行することが可能となります。ただし、通行できる歩道は「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識等が設置されている歩道に限られています。そのため、条件を満たした電動キックボードで全ての歩道を通行できるということではない点に注意しなければなりません。
特例の条件を満たした電動キックボードで歩道を通行するときは、歩道の中央から車道寄りの部分または普通自転車通行指定部分を通行します。また、歩道では歩行者が優先です。そのため、歩行者の通行を妨げることになるときは一時停止する必要があります。加えて、特例特定小型原動機付自転車は、道路の左側に設けられた路側帯(歩行者用路側帯を除く)を通行することができますが、歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません。
同じ電動キックボードでも走行する場所で呼び方が変わる
一言で電動キックボードといっても、車道を走行する際は「特定小型原動機付自転車」となり、歩道を走行する際は「特例特定小型原動機付自転車」となります。走行する場所で呼び方が変わるため、電動キックボードを利用する際は注意しなければなりません。また、「特例」として認められるためには、5つの条件すべてを満たす必要があります。1つでも条件を満たしていない場合は、「特例」として認められません。この点も電動キックボードを利用するときに気をつけましょう。