炎の心臓を持つ美しき野獣!レースで大活躍した「1955年型クライスラーC300」のメビウスモデル製プラモ【モデルカーズ】

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輝かしい戦績を誇るドリームマシーン

クライスラーC300は、ストックカー・レースでの活躍を目標として開発された最初のモデル、といわれている。搭載されるエンジンは、“ファイアーパワー”という名称の、ヘミ・ヘッド(半球型燃焼室)を採用した名機であった。ビッグスリー中最も高い技術力を誇示するクライスラーらしいユニットである。

【画像15枚】パワフル&ゴージャスなC300をディテールまで確認する!

元々このエンジンは1951年型から、クライスラーの中でも上級モデルのニューヨーカーやサラトガに組み合わされていたもの(すでにファイアーパワーを名乗っていた)で、1953年型ではこのユニットを搭載(出力は235hp)し、かつ足周りも固めたスペシャル・ニューヨーカーを発売、これがNASCARレースで優勝もしている。こうした流れに乗って登場したのが、1955年のC300だったというわけである。このエンジンは4年前から変わらぬ排気量331.1-cid(5.4L)ながら300hpを発揮、もちろんこれがネーミングの由来となっている。

レースでの勝利を目的に開発され、事実同年のNASCARグランナショナルにて40戦中23勝を挙げるなどの圧倒的な強さを見せつけたC300だが、市販車としてのキャラクターは高級なハイパフォーマンス・カーであり、クライスラーのラインナップ中、最もスペシャルなムードを持っていた。

この1955年というモデルイヤーは、それまでの地味なイメージを払拭するべくクライスラー系全ブランドがスタイリッシュな“ミリオンダラー・ルック”に生まれ変わった年であったが、その中でもC300には、アメリカ車らしからぬ独自の性格づけに基づく細かなデザイン処理が施されている。

ボディシェルは他のクライスラーと共通ながら、サイドモールがシンプルな一直線のものとなるほか、フロントグリルは通常モデルの3分割タイプ(上下2段に分かれ上段が左右分割となる)に対して、インペリアルと共通の左右2分割形状を採用。これにクライスラー・ウィンザーの円形のパーキングライトを組み合わせた専用のフロントフェイスが与えられた。

インテリアは当時のアメリカ車としては珍しいタン・レザー。パワーステアリングやパワーウィンドウ、パワーシートなどもオプションで設定され、さらに豪華なモデルとすることもできたほか、数量限定ながらワイヤーホイールまで用意されていた。これらの処理により、C300はヨーロッパ製グランドツアラーと同じ土俵で戦える雰囲気をまとっていたのである。このC300が翌年型では300B、翌々年型では300Cと、末尾のアルファベットを改めていくクライスラー名物“レターカー”となったことは、すでにご存知の方も多いだろう。

充実したキット内容だが組み立てには若干の注意点も
このクライスラーC300は、プロモーショナルモデルを元にしたプラモデルの発売が本格的に行われる以前の年式ということもあり、長らくキット化のない、そして待望される車種となっていた。その願いが叶えられたのは2012年のこと、新興メーカーのメビウスモデルから、1/25スケールで製品化が行なわれたのである。以下、作例の作者・周東氏による解説をお読みいただこう。

「クライスラーC300のモデルキットは今までレジンのものしか無く、1/25ではメビウスのものが初のインジェクション・キットとなる。内容はほぼ満足できるものであるが、ワイパーとドアハンドルがボディと一体のモールドになっているのが残念だ。ほかの部分の出来が良いだけに、この部品はぜひ別パーツとして欲しかったところである。おまけとして実車のカタログ(リーフレット)の縮刷版が付いている。これは何よりのプレゼントで、今後の製品にもぜひ続けて入れて欲しいものだ。

ボディは大柄なスタイルがよく表現されている。ヒケがフロント部分に少し見られるが、パーティングラインもそれほど目立つものではないので、全体を軽く整えるくらいで良いだろう。ロゴ等はきっちりとモールドされている。このモールドを生かすためにも、前後のオーナメントのチェッカーの部分はボディカラーをペイントするときマスキングしておくことを勧める。

ルーフの天井部分に押しピン跡があるのでここは削り取り、ペーパーで整えておくほうが良いだろう。リアピラー内側のU字型のモールドは付属のカタログを見るとすぐ分かるが、丸いルームライトだ。成型の都合でこのような形となってしまったのは仕方ないだろう。作例ではこの部分を削り取り、ジャンクパーツより適当なものを見つけて流用している。

ボンネットはリブの所の表面が若干ヒケているが修正はさほど難しくない。ウィンドウ関係ではリアウィンドウが少々厄介だ。寸法がかなりタイトで、作例のようにベアメタル等を貼り込んでからウィンドウをセットすると、せっかく貼ったものを傷つけてしまうため、注意が必要。作例では、両サイドのコーナー部分を少しだけ削って入れやすくしている。

インテリアはサイドパネルがあっさりした感じだが、実車もこんなものなので特に手を加える必要はない。ステアリングは少しメリハリが利きすぎていてグリップの部分とこれ以外の部分の太さの差が大きすぎる。また、グリップの上のメタル部分の形状も若干違っているが、これらは修正は厄介なのでそのままにしておいた方が良いだろう。

フロアパンはボディへセットするときかなりキツめなので、リアホイールハウジングを削った方が入れやすくなる。シャシーフレームはフロアパンとのダボがキツい所があるので仮組みして調整しておく。フレーム前端部分もボディに対してキツいので、ここも幅を詰めるように調整する。車高及びトレッドはキットのままで問題ないようだ」

作例制作=周東光広/フォト=羽田 洋 modelcars vol.198より再構成のうえ転載

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