世界最高峰の金型鍛造製法という強みを持つBBSジャパンは、その伝統芸をバックボーンに、新たな境地を開拓する。ここ数年の大規模な設備投資やリ・ブランディングなどを受けて、新しいBBSジャパンの躍進がいよいよ始まったようにも思える。そこで、東京オートサロン2024で発表された内容をもとに、新たに代表取締役社長に就任した新田孝之氏の言葉に耳に傾けた。
「スタッフ全員で一致団結して、失敗を恐れずチャレンジをしていく。そんな職人集団を支える存在でありたい」
東京オートサロン2024の最中に実施したBBSジャパンのプレゼンテーションは、彼らの伝統を訴えながらにして、栄えある未来を感じさせるものだった。その象徴はLMの30周年にまつわるコンテンツや、または新素材「FORTEGA(フォルテガ)」を持ってBEV向けコンセプトホイールに取り組むニュースだ。これら「伝統と革新」を育んだのは、ここ数年取り組んできた設備投資であり、より多くの人へBBSを知ってもらうためのリ・ブランディングだった。2023年12月に社長に就任した新田孝之氏は、未来へ向けて加速中であるBBSジャパンに対して、情熱を持って舵を切り始めている。もとは異業種からの転向だったという彼の言葉を借りて、BBSジャパンの「いまとこれから」を探りたい。
新田氏が最初に強調したのは、風通しのいい組織をつくろうとしていること。スタッフ全員にBBSジャパンという会社をより好きになってもらうこと。そのためにはトップダウン型の経営ではいけない。誰もが自発的に動ける制度や空気をつくることに尽力する。そのために部門を超えてコミュニケーションの機会を増やして、互いの意見に納得し、信頼関係を構築すべきだ、と。あるいは自発的な挑戦に対して、失敗してもそれを責めるのではなく、その挑戦という行為自体を賞賛する風土を目指す。これら美辞麗句を並べるだけではなく、次々と実践しているところに彼の強さがあると思えた。
「あらゆる施策や決め事を、上の人間があれこれ指示して動かす軍隊的組織ではなく、スタッフの皆さんから自発的に提案していただく。今や世の中は複雑で変化が早い。そういう時流に対応し、または牽引するためには非常に重要なこと。世のトレンドやニーズ、あるいは技術革新の動きなど、現場の人間が一番よく知っています。それをリスペクトしながら、うまくサポートするのがトップの役割ではないかと思います」
先に述べたLMの30周年を受けて、東京オートサロンで記念モデルを発表したが、その提案方法は実にユニークだった。事前に提案した4色(仕様)の中から、一般投票によって販売モデルを決めるというカラーオーディションを開催したのだ。「ベストアンサーは現場にあり、またユーザーニーズにある」というスタッフから生まれたアイディアだった。昨年にはBBSフェスタという社内向けの家族イベントを初めて実現させてもいる。失敗を恐れず挑戦するというのは、何も製品開発だけに限ったものではない。ちょっとしたイベントや訴求アプローチもまた、失敗を恐れず挑戦を続ける動きを加速させている。
「創業から52年間、ホイール生産にしても40年もの時間かけて培ってきた製造技術には確固たる自信がある。さらに磨きをかけようと、ここ数年にかけて総額200億円もの設備投資をしてまいりました。4年前に稼働を始めた四日市の新塗装工場に加え、1万2000トンや9000トンの鍛造プレス機を中心に据えた高岡工場の拡張などが中心ですが、総じて今年度には完成する見込みです。生産能力を増強させながら、より品質を向上させて、皆さまへより高性能なホイールをお届けしたい」
盤石なインフラを構築したその上で、失敗を恐れず挑戦することを推奨するトップがいるからこそ、誰もが伸び伸びとチャレンジできる。その象徴的存在こそがフォルテガだろう。誰もがまだ使っていない素材を研究開発し、それをホイールとして実用化する。それを持って高重量化が著しいBEVの走行性能やドライブフィールの向上を目指す。
そのためのインフラと技術を最大限に活かせる組織が、しっかりと根を下ろし始めている。フォルテガに象徴される新しいBBSジャパンは、これからどのような施策で、あるいは製品展開で、我々を魅了させてくれるのか。期待せずにはいられない。
問い合わせ先=BBSジャパン TEL03-6402-4090 https://www.bbs-japan.co.jp