連載【桃田健史の突撃!キャンパーライフ「コンちゃんと一緒」】どうなる? 成熟期に入ったキャンピングカーのこれから 「ジャパンキャンピングカーショー2024」で見るトレンドをチェック!

好景気に沸くキャンピングカー市場

相変わらず、コンちゃんと各地を巡る日々が続いている。1月末は、神奈川県藤沢市内にあるトラック・バス大手「いすゞ」の関連施設に立ち寄った後、日本自動車輸入組合(JAIA)主催の公道試乗会に参加するため同県内の大磯ロングビーチに向かった。
試乗会では、テスラ「モデルY」などの電動車のほか、欧米の1000万円級の本格的オフローダーの走り味をチェック。ランチタイムはコンちゃんの中でゆっくりと過ごした。

その週末、向かったのは千葉県の幕張メッセ。国内最大級のキャンピングカーの祭典、ジャパンキャンピングカーショー2024(2月2日〜5日)である。
ここ数年で大きな変化があった国内キャンピングカー市場だが、ここはそうしたトレンドを肌感覚で捉えることができる貴重な現場である。

さて、日本でもすっかり馴染みになったキャンピングカー。ひと昔前ならば、「お金持ちの趣味」とか「定年後のご褒美」といったイメージが強かったが、コロナ禍での「ライフスタイルの変化」によって、キャンピングカーに対する世間の目は大きく変わった。
国内市場規模もここ数年で右肩上がりの角度が急になり、2023年には国内キャンピングカー販売総額は1000億円の大台を超えるという好景気に湧いている。良い意味で、市場全体が成熟期といった雰囲気があるのだが、果たしてこれから先の国内キャンピングカー市場はどうなっていくのだろうか? 各社のブースで関係者の声を拾いながら、最新トレンドをチェックしてみた。

実需に見合ったカテゴリー構成へ

会場全体としては、とても賑わっているように見える。実際、出展社数171社、また出展車両台数は392台と過去最多だ。会場内は、ホール1~3と、ホール4~5の大きく2つに分かれているが、来場者の中ではそれらをつなぐ通路を出た瞬間、「えっ、まだこんなに出展車両があるの!?」と目の前に広がる様々なカテゴリーのキャンピングカーの姿に度肝を抜かれている人も少なくなかったほどだ。

そんな会場内をまずは一巡した筆者の感想は、「だいぶ地に足がついてきたな」である。 市場の需要に対して、販売する側が適材適所で商品を提供し、それぞれのカテゴリーでコストパフォーマンスが上がっている。
出展の数で見ると、いまだの主流であるトヨタ「ハイエース」ベースのバンコン(バンコンバージョン)の場合、上級志向は「トイファクトリー」など業界大手がベンチマークとなっていることに変わりはない。その上で、「そこまで量産車に手を付けなくても十分に楽しめる」という発想で、様々な仕様を提供する「FLEX」の事業戦略がある。

また、コンちゃんの仲間たちである、トヨタモビリティ神奈川の「アルトピアーノ」が今回、「NUTS」のブースでジャパンキャンピングカーショー初お目見えとなった。ハイエース、タウンエース、それぞれをベースとしたこれまでの売れ筋に加えて、昨年10月に登場したピクシスバンをベースとした軽キャンパーが注目を集めた。

そのほかでは、モデリスタでのハイエースMRTでお馴染みの、トヨタ自動車が株式の90.5%、トヨタグループ企業のトヨタ通商が残り9.5%を出資する、トヨタカスタマイジング&デベロップメントが、ついにキャンピングカー事業に参入し、量産品を搭載したモデルを初披露した。同社関係者によると、本事業はオートバックス富山との共同で行うもの。購入の窓口はオートバックス富山となる。オートバックス各社、またトヨタ販売店などとどのように連携するのか、今後の注目される動きである。

一方、キャブコンと呼ばれる、トヨタカムロードをキャンピング仕様としたカテゴリーについては、未だに一定の需要があるものの「バンコンへの事実上のダウンサイジングや、デュガドベース車へのアップグレードの流れがある」(大手キャンピングカー販売企業関係者)という見方もある。

もうひとつは、ポップアップルーフの多様化だ。 ルーフ部分が跳ね上がり、室内空間が一気に広がることで開放感があったり、またルーフ部分を休憩したり就寝するスペースへ転換することができる。 ただし、カビや雨漏りなどを心配する声があった。
そうした中、注目を集めたのが「ホワイトハウス」のスカイデッキだ。従来製品から大幅ない軽量化を実現し、スチールのプレス成形でミリ単位での高精度かつボディ形状に沿った滑らかな仕上がりを実現した。スマホを使って電動式での上げ下げもできる。さらに、後付けも可能だ。

別の視点で興味深い出展物があったのが、パナソニックだ。 ポータブルの電子レンジについて、来場者からアンケート調査を行ったのだ。2つのコンセプトモデル。ひとつは一般的な電子レンジに近く出力が高いもので、もうひとつが出力を抑えて全体のサイズが少し小さめのものだ。
筆者の意見としては、ある程度の電池容量があるポータブルバッテリーで使うことを想定すると、調理の時間が少し長くても出力が低めの方が良いと思い、その旨をパナソニックの担当者に伝えた。同社としては、今回の調査も踏まえて今後の商品化の可能性について検討するという。

最後に、防災としてのキャンピングカーについて触れておきたい。本連載の先回分でも、防災時に役立つグッズを実際に購入して、その必要性を紹介した。一方、キャンピングカーそのものの防災時の必要性については、コロナ禍でのワクチン接種用車両として、臨時病棟の一部としてなど、キャブコンを主体に活用された事例があった。
直近の能登半島地震については、日本RVキャンピングカー協会が、能登半島現地での応援職員の宿泊場所の提供として、2024年2月1日時点で石川県珠洲市に30台、また輪島市に21台を貸与している。今後、被災した他の市町村向けにも車両支援を拡大する予定だ。このように、様々な観点からキャンピングカーの需要が定着し、そして市場として成熟してきている。
こうしたトレンドが、ブームが徐々に終焉する方向に向かうのか、それとも社会においてキャンピングカーが市民権を得て定着していくのか? 現在は、その分岐点にいるように思える。

フォト=桃田健史 K.Momota

この記事を書いた人

桃田健史

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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2024/02/11 12:00

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