2年目にしてV8エンジンを追加
スペシャリティカーというジャンルを確立した名車、初代フォード・マスタング。そのボディのコンパクトさも、ヒットした要因のひとつだったはずだが、世の常に倣い、初代マスタングは徐々にボディサイズを拡大させていった。
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1964年の登場時にはホイールベース108インチ(2743mm)、全長181.6インチ(4613mm)だった初代マスタングだが、ラストとなる1973年型では全長193.8インチ(4923mm)に及び、ホイールベースは1971年型の時点で1インチ延長され109インチ(2769mm)となっている。こうした部分も影響したものか、年々セールスが低下していくマスタングであったが、当時のフォード社長にしてマスタング生みの親であるリー・アイアコッカも、販売悪化の原因をあまりに肥大化したボディと判断し、ダウンサイズを決定。
こうして1974年型で登場したマスタングⅡは、フォード・ピントをベースにホイールベースを変更したシャシーを採用。ピント94.2インチ(2393mm)に対し、マスタングでは96.2インチ(2444mm)となる。これは初代マスタングより約12インチ(305mm)も短く、全長は175インチ(4445mm)でしかなかった。ボディはノッチバッククーペの“ハードトップ”とハッチバック(”2+2”とも呼ばれる)の2種類。ハードトップには、バイナルルーフが標準装備となるラグジュアリーモデルのギア(従来のグランデの後継的モデル)も存在した。
1975年型ではギアのリアピラーが太くなるなどの変化があったが、最大のニュースは、搭載エンジンにようやくV8が加わったことだった(前年型は直4とV6のみ)。このV8ユニットは最高出力122hpを発揮する302-cid(5L)で、全モデルにオプション設定。なお、V6は97hpの170-cid(2.8L)で、ハッチバックのスポーティモデルであるマッハ1のみに搭載されている。ただし、マッハ1でも直4(140-cid/2.3L)を選ぶことは可能だった。マッハ1はボディ下半分をブラックアウトし、メッキリング付スチールホイールを装着するなど、外観もスポーティに演出されていた。
足周りのセッティングにひと工夫で曖昧さを回避
当初は好調なセールスを記録したマスタングⅡだが、やはり数字は落ち込みを見せ、1979年型でモデルチェンジを実施。初代に比べると短命に終わったマスタングⅡではあるものの、プラモデルの世界では意外と人気があったのか、わが国の日東などからも製品化されているが、本国アメリカでの1/25スケール・キット化は、MPCとAMTの2社から行われた。ここでご覧いただいているのは、MPCの1975年型マスタング・マッハ1をストレートに組んだ作品だ。以下、作者・畔蒜氏による解説をお読みいただこう。
「1974年型以降のマスタングのプロモーショナルモデルはAMTからMPCに移ったが、AMTも並行してマスタングのモデルを生産していた。両者甲乙付けがたいが、フロントマスクはMPCの方が実車に近い印象。
今まで気づかなかったが、登場直後の1974年型と翌年型以降では、外観上の大きな違いがふたつある。エンジンフード前方の平面形が、1974年型は直線であるのに対し、翌年からは少し前方に張り出していることがひとつ。もうひとつは、左リアフェンダー上フュエールリッドの位置が、1975年からやや上に移動している。この辺りは両社ともしっかりフォローしている。
このキットはなぜかフロントバンパーのみボディと一体成型で(AMTは前後別パーツ)、ややリアリティに欠け塗装もし難いので、一旦切り離し塗装後取り付けた。バンパーのメッキモールは別パーツで、その中央部にパーティングラインが走る。一見不自然だが、実車も僅かに峰が立っているので間違いではない。
難点は足周りの位置決めが曖昧なことだ。まずフロントサス周りをシャシーに組み立て、リアアクスルを貼り合わせる。この段階ではまだリアサスはシャシーに接着しないが、リアサスのピンは取り除き、後ほど微調整可能とした。ボディにウィンドウとインテリアを仮組みしてシャシーの位置を決め、シャシーからインテリアにピンを打って位置を確定、4輪のインナーホイールを仮組み、タイヤもセットして足周りをチェック。
幸いキットのままで車高やトレッドに問題はなかった。ただ、アウターホイールの直径が大きく、タイヤに上手く収まらない。ホイール側リムを残してフランジ状に内側を削り、タイヤにフィットさせた。
シートの幅がやや不足しているが、インテリアも特に手を加えていない。エンジンはコンパクトな2.8リッターV6、補器類も含めそのまま塗装して組み立てるだけで問題はない。プラグコードを付ける場合、デスビのファイアリング・オーダーは時計回りに1-6-5-4-3-2で、シリンダーはリア側の右が1番である」