十字モチーフのグリルがグロリアの特徴
この連載では第14回ですでに330型系・日産セドリック営業車を採り上げているが、今回は同じ330ながら日産グロリアの初期型カタログをご紹介しよう。
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「グロリアの歴史は高級車の歴史」――と言われるほどの存在であるグロリアだが、その五代目モデルとなる330型系は、1975年6月に登場した。なお、兄弟車であるセドリックとしては、330は四代目となる。この330は、ヒット作であった先代230型系のコークボトル・ラインを受け継ぎつつ、よりデコラティブなボディラインとなったのが特徴だった。230ではボンネットの形状に違いを持たせてセドリックとグロリアの差別化を図っていたが、330ではそれもなくなり、前後グリルやエンブレム、バッジ類などに違いがあるのみとなっている。
ボディ形式は先代同様に4ドア・セダン、4ドア・ハードトップ、2ドア・ハードトップ、そしてバンの4種類。当初は2ドア・ハードトップのみが角型2灯ライト、4ドアはセダンもハードトップも丸型4灯ライトであった。グロリアの特徴となるのは、「末永く生き続けるように」と願いを込めた鶴のエンブレム、そしてそれを十字型のバーに変形させたフロントグリルであったが、330では例えば2ドアのグリルを左右2分割にし、その中に十字モチーフをひとつずつ配置する、などの変化が持たされていた。
基本コンポーネンツは先代からのキャリーオーバーでさほどの変更はなく、レイアウトはFR、エンジンはL型6気筒が中心、サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後リーフリジッド。ほぼスキンチェンジと言ってよいが、先代との大きな違いは3ナンバー用のエンジンが2.6Lから2.8Lに拡大されたこと、そして昭和50年排気ガス規制対応のデバイスが装着されたことである。特に排ガス対策では車重の増加が著しく、動力性能の低下という影響が大きかった。
もうすこし具体的に述べると、エンジンは2.8L 6気筒OHCのL28、2L 6気筒OHCのL20、2L 4気筒OHV LPG仕様のH20Pの、合計3種類。2LディーゼルのSD20はセドリックには搭載されたが、グロリアにディーゼル車の設定はなかった。登場4ヶ月後の1976年10月には、排ガス対策による性能低下を補う意味で、L20に電子制御燃料噴射装置(EGI)を組み合わせたL20E搭載モデルを追加している。
登場1年後の1976年6月には、角型2灯ライトを装着しボディ同色のホイールキャップを取り付けた「Fタイプ」を4ドア・ハードトップに設定。これは4ドア・ハードトップの豪華版シリーズで、2800SGLと2000SGL-Eの2グレードに用意された。また、このとき昭和51年排気ガス規制への適合も行われ、型式名が331へと変化している。
1977年6月ではマイナーチェンジを実施し後期型へ移行。細部のデザインが変更され、2.8L車の最高グレード「ブロアム」が追加されている。このブロアムはセダンとハードトップの合計3種のボディにそれぞれ設定されたが、4ドア・ハードトップのそれはFタイプとなる。同時に標準タイプの2800SGLは消滅し、4ドア・ハードトップの2.8L車はFタイプのみということになった。
1978年11月には、ガソリン車の53年排気ガス規制適合(型式名は332に)とともに、ブロアムと同等の内装などを持つ「SGL-Eエクストラ」を2Lモデルの4ドア車に設定。そして1979年6月、モデルチェンジで430型系へと生まれ変わっている。
セドリックに近づいた作りのカタログ
さて、ここでご覧いただいているカタログは、この330型系グロリアの前期型のものである。FタイプはおろかL20E搭載モデルも掲載されていないが、それもそのはず発行は1975年6月、つまりデビューと同時に用意されたカタログということになろう。サイズは302×255mm(縦×横)、ページ数は表紙を含めて全16ページ、いわゆる簡易カタログというものだ。表4にはオマケのようにバンも掲載されているが、営業用のLPG車などは除外されている。
カタログとしては、限られたページ数の中でイメージカットと内容紹介とを両立させた、なかなか巧みに構成されているものだ。230までは、カタログの作りにスカイラインなどと共通したものがあり、同じ日産プリンス系ディーラーでの販売車種として、同一の製作会社が手掛けているのであろうと思わされるものがあったが、330ではグロリアのカタログも大分セドリックに近い印象のものとなっている。ボディパネルの完全共通化と併せ、独自性が失われていく様子に、つい涙を誘われるのであった。