プレミアムセダンの世界的指標
1947年に発表されたW136/191型以来、常に時代に先駆けて革新的な技術を採り入れ、世界のプレミアムセダンの指標とされてきたEクラス。そんな待望の新型Eクラスの試乗会がウィーンにて開催された。ここでは、気になるその第一報をお届けする。
EQの流れを汲むインテリアの意匠
メルセデスのラインナップにおけるEクラスの存在、個人的には「ど真ん中」だと思う。もちろん、誰もが認める不動の四番はSクラスだ。が、その出自からの軸足はショーファードリブンでもある。フリートユーザーも含めてオーナードリブンに軸足を置く最も歴史あるモデルとしては、Eクラスの方が先に立つ。
そういう視点でみれば、どこをスタートとみるべきか判断できない、それほどにメルセデスの歴史を深く担ってきたEクラスの最新モデルが今年デビューした。W214型となるそれは、伝統とデジタルの新たなる架け橋というテーマを掲げ、未来への備えを万全なものにしようとしている。
新型Eクラスのサイズは全長4949mm、全幅1880mm、全高1468mm。日本仕様の詳密なデータは不明ながら、前型に対しては、恐らく全長が10mm、全幅が30mm、全高が15mm、そしてホイールベースは20mm程度大きくなる算段だ。伸び率だけでみれば平穏だが、特に全幅の広がりなどをみると日本での使い勝手も心配になってくる。その埋め合わせというわけではないだろうが、新しいEクラスはSクラス等と同様、最大4.5度の同逆相をもつリアアクスルステアリングを採用している。
現状発表されているパワートレインは全て2L 4気筒で半分がMHEV、半分がPHEVと全て電動化を果たしたかたちとなる。日本仕様の詳細は未定ながら、MHEVの200と220d、そしてPHEVの300eが導入検討されているようだ。
メルセデスはBEV向けに「EQ」ブランドを既に立ち上げているが、長期的にみればEクラスが属する旧来的なラインナップとの合流を考える時が来る。その意向はデザインにも現れていて、新型EクラスではEQシリーズのように灯火類とグリルとが黒縁で囲まれるようなフィニッシュを初めて採り入れている。この流れは今後の新型モデルでも踏襲されることになるだろう。
Eクラスに期待されるのはパッセンジャーカーとしてのトップレベルのドライバビリティだけではなく内外装の設えも然りだ。こちらもデザイン的にはEQシリーズの流れを踏襲、ダッシュボードやドアパネルはメリハリのあるフローティング形状となり、その周縁をアクティブアンビエントライトが取り囲むようなかたちとなる。
助手席からセンターコンソールにかけて2枚のモニターパネルが一体化するスーパースクリーンはEQシリーズとの繋がりを思わせるオプションだ。これらをもって全体的な印象はSクラスに準じる上質感と共に新鮮味も感じられるものとなる。また、いわゆるソフトウェア・ディファインド化も進み、MBUXは強力なチップセットによって多層的なコマンドや将来的なアプリの追加などにも対応する。通信は5Gに適合するが、日本での仕様は未定だ。
中身はデジタル化を突き進めている
エクステリアはヘッドライトの形状に新たなアクセントが加わったことが注目される。ツインビームを視覚的に表したこれは、W210型が流れを作った’00年前後のメルセデスデザインの未来的な解釈でもあるようだ。造型的にはSクラスやCクラスに倣ったテールランプはスリーポインテッドスターをモチーフとするライティングがユニークだが、個人的にはちょっとやり過ぎな印象を覚えた。ルックス的には日本仕様のアバンギャルドグリルとは別に、欧州ではエクスクルーシブラインとしてマスコットを纏った横桟グリルのクラシックな仕様も存在する。
日本導入が想定されるパワートレインに現行型からの大きな変化はないが、いずれも動力性能に不足はない。E200でもISGのアシストが加わり低回転域から過不足ない走りをみせてくれるし、E220dは全域で充分な力強さをみせてくれる。欧州計測モードで100kmの航続距離を実現するE300eは、中高速域でもズシッと押し込みが効いた骨太な加速が心地よい。
試乗車はいずれもオプション扱いとなるであろうエアサスペンションだった点も大きいが、乗り心地の上質さは現行 Sクラスもかくやという印象で、MRA-Ⅱプラットフォームが完熟期に入ったことを思い起こさせる。また、いずれのパワートレインでも静粛性は非常に高く、Eクラスには些か大袈裟な装備にも思えるブルメスターの4Dサラウンドシステムも充分に楽しめそうなほどの快適な空間となっていた。
ちなみにメルセデスは’25年を皮切りに車載OSの大刷新を目論んでいるが、新型Eクラスのインフォテインメント系には、機能拡張やソフト追加などでその考え方が先取りで投入されている。
デジタルテクノロジーの面では、感心させられたのはADASの制御のお見事さだ。欧州仕様ではHERE製のダイナミックマップを搭載、地図データとの連携が図られていることもあるが、速度規制に沿った加減速の滑らかさや入り組んだ交通下での操舵支援の的確さ、車線の認識率や承認の手間も省いた車線変更支援の直感的な使い勝手など、もはやレベル2の枠を超えている感さえある。間違いなく世界最高のADASといえるだろう。日本仕様では地図データの連動がないのが残念だが、その作動質感は長距離ドライブの疲労を大幅に軽減してくれるはずだ。
幾つかの新鮮なアクセントはあれど、新しいEクラスの佇まいはどちらかといえばオーセンティックな3ボックスサルーンのそれだ。が、中身は最新のBEVもかくやというほどにデジタル化を突き進めている。守りと攻めとの連携のコントラストこそがメルセデスらしさということになるのだろう。
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