テールレンズは透明部品をクリアレッド、クリアオレンジ、黒、銀などを印刷で彩色し、さらにその奥をシルバーで塗装。トランクリッドのエンブレム類、ナンバー灯も印刷される。
室内は大部分を赤で塗装。こうした凹凸のある部分は印刷では彩色できないので、専用の立体的なマスキング治具を使って塗り分けている。
【写真7枚】360°、どこから観てもうっとりな彩色の「スカイライン」
ミニカーの価格を左右する要素のひとつに「彩色(さいしき)」がある。彩色には、大きく分けてふたつの方法がある。塗料の吹き付けと印刷である。塗料は筆塗りも考えられるが、仕上がりにバラつきが出るため、トミカリミテッド ヴィンテージ(TLV)の製造過程では行なわない。
ミニカーの塗装で一番リーズナブルなのは、ボディを塗って終わりというタイプである。昨今ではTLVの母体であるトミカであっても、ボディ色に加えて灯火類や車名エンブレムなどは印刷されている。1980年代前半のトミカであれば、それらの印刷の無いシンプルなものも存在していた。
また、たとえばヘッドライトなども、ボディに一体成型された当該箇所に銀色の印刷でそれらしく見せるほか、実車のように透明部品に置き換えて表現する場合もある。いずれにしても彩色と別部品化で確実に製造コストはアップする。TLVの場合はクリア部品に置き換えた上に、その奥にある実車でいう反射板の部分をシルバーで塗装しているので、もっともコストのかかる表現方法を採っていることがわかる。
今回の『トミカリミテッド ヴインテージ スカイラインのすべて』の付録となった「スカイライン RS」の場合は、ボディ色の赤を塗ったのち、グレーないしは黒に車体の下半分を塗装し、前後ライトの反射板部分をシルバーで塗装、さらにその中間部分に入るモール、窓枠、エンブレム、ウィンカーなどをすべて別版のパッド印刷で彩色していく、という製造工程を経ている。内装もプラスチック製部品の成型色ではなく、吹き付け塗装で塗り分けられている。
そのいずれもが機械仕掛けではなく、人間の手で一個一個作業されていくと考えれば、非常に製造コストがかかっていることがおわかりいただけるのではないだろうか。
テールライト裏は反射を良くするため、銀色に塗る。車種専用の金属製のマスキング治具を使って吹き付け。塗装は職人が行う。
治具を外したところ。テールライト裏の部分だけ、シルバーの塗装が付着している。この手法でボディの下半分もグレーと黒に塗る。
こちらがパッド印刷。上の黄色いウレタンの先端に、文字や線の形あらかじめ成形されたハンコ状のインクパッドが取り付けてあり、印刷というよりもスタンプに近い方法で彩色する。
窓枠の印刷の施行前(上)と施行後の比較。窓枠は銀1色ではなく、内側に黒い枠があるため、それぞれの色でスタンプを重ねる必要がある。正確な位置にスタンプするのは職人の技。
◆『トミカリミテッド ヴィンテージ スカイラインのすべて』書誌情報
定 価:5,280円(税込)
発売日:2023年7月28日(金)
出版社:カルチュア・エンタテインメント株式会社 ネコ・パブリッシング事業部
予約開始日:2023年6月26日(月)
仕 様:オールカラー80ページ A5サイズ
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