3年ぶりとなる富士スピードウェイでの開催
7月15~16日、富士スピードウェイでランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジア第3戦が開催となり、その2日目を取材した。スーパートロフェオは2009年、ガヤルドの時代から開催されているワンメイクレースで、アジアでは2012年から開催。もっとさかのぼれば、ランボルギーニはディアブロの時代からワンメイクレースを開催している(右写真は1996年のディアブロSVR)。
今年は既にマレーシア、オーストラリアと続いており、富士の次は韓国、中国と続く。最終戦は11月16~17日、イタリア・ヴァレルンガを舞台にアメリカ、ヨーロッパ、アジアの全地域が集結する形だ。なおコロナ禍で中断していたこともあり、富士は実に3年ぶりの開催となる。
マシンはウラカン・スーパートロフェオEVO2を使用していて、富士は今年最大となる20台が参戦した。ドライバーは台湾、香港、タイ、オーストラリア、中国など13ヵ国と幅広く、今回は田代淳/河野駿佑選手がゲスト参戦(#99)している。
インターナショナル色が非常に強い
ロジスティクスも含めたレースウィークの流れはこうだ。月曜日に11個のコンテナが到着、火曜日に荷解きし、水曜日にチームが到着、木曜日にようやくドライバーが現地入りする。金曜日にプラクティスを行い、土曜日は2レース分のグリッドを決める予選Q1、Q2とレース1を実施。日曜日はレース2の決勝を実施し、夕方には片付けを始め、翌日の9時にはコンテナを回収し次の目的地に向かう。このパッケージは専用となるホスピタリティラウンジも含まれている。
ラウンジに入ると、これがアジア・シリーズであることを実感した。日本人のほうが少なく感じるほどの雰囲気で、利用者向けのレース実況も英語になるなど、インターナショナル色が非常に強い。イタリアから来ているという職人が作るピッツァを始めとした、イタリアンがさすがの美味しさだったことは見逃せない部分だ。右の写真は全地域の表彰台で使用するフランスのシャンパンブランドで、ガラスの表面にカーボンが仕込まれている。
クラスはプロ、プロアマ、アマチュア、ランボルギーニ・カップの4クラスが一斉に走行する形で、20台のうち数台は日本のディーラーがサポート。例えば取材に組み込まれたガレージツアーで見た#21のランボルギーニ大阪がサポートする車両は、DWエヴァンスGTというチームが使用し、香港のプロ&アマがドライブする形だった。ドライバーは1名または2名で、スタートから20~30分にピットストップ義務があり(タイヤ交換義務はなし)、前半、後半をどう配分していくかも、ひとつのカギとなる。
レースはさすがのワンメイクレースといった迫力に満ちたものだった。ウラカンのレースカー自体にランボルギーニらしい迫力、力強さがあることもあり、ピットからコースに出ていく様はいかにも勇ましいもの。
ローリングとなる20台のスタートはトップ2台がサイドバイサイドで1コーナーに向かうなど見応えのあるもので、その後も各所でイコールコンディションのワンメイクレースならではのバトルの応酬。ピットでもラウンジでも、関係者の一喜一憂する姿が印象的だった。レースはプロクラスの#84が総合優勝。先にご紹介した#21が11秒差で2位、#99が3位につける結果となった。
アジア、日本での成功はいい意味でサプライズ
レース後、モータースポーツ・ランボルギーニの副社長を務めるマウリッツィオ・レッジャーニ氏らにインタビューすることができた(写真左から、ランボルギーニ・ジャパン代表ダビデ・スフレコラ氏、レッジャーニ氏、ランボルギーニ・アジアパシフィックのフランチェスコ・スカルダオーニ氏)。
レッジャーニ氏は3年ぶりのアジア・シリーズ再開について、「幅広くエントリーを頂けて喜びを感じています。GT3など、他カテゴリーへの自信に繋がりました。アジア、日本での成功は、いい意味でサプライズとなっています」と、まずは安堵といった雰囲気。そこで、改めてスーパートロフェオの魅力を聞いてみた。
「エクストリームで、スポーティで、パワフルという、最初目指した他にはないクルマという部分において成功したと思っています。経験を積むことでプロアマ、プロ、GT3とステップアップできることも魅力です。スーパートロフェオとGT3は挙動も似ていますからね。多くのジェントルマンドライバーに気にいって頂けているところが成功の理由、魅力と言えるのではないでしょうか」
レースカーのノウハウは市販車に生かされている?
「もちろんです。それは空力、ブレーキ、セットアップなど、ガヤルドの時代から続いています。最近ではウラカンSTOで最大限に生かされました。ご存知のようにSTOは、スーパートロフェオ・オモロガート(=ホモロゲーション)の略なのですから」
今後進化させていきたい部分を聞いた。
「様々な改良をしていきたいですね。来年、市販車ではウラカンの後継モデルが登場し、それをベースとしたモデルも後ほど発表いたします。ご存知のようにコル・タウリの戦略(電動化へのロードマップ)により市販車はハイブリッドとなりますが、レースカーはエンジンのみです。先日WECのLMDhクラス参戦マシン『SC63』(下写真)を発表しましたが、できれば来年のWEC富士で、スーパートロフェオを開催したいです。多くの関心を寄せて頂いているので、さらにアジア・シリーズの規模が大きくなればと思います」
3年ぶりの開催となった富士だが、まだアジア・シリーズ転戦は躊躇するのか、日本人ドライバーはゲストひと組といった状況ではあった。しかし、富士にいても感じたインターナショナル色やウラカン・スーパートロフェオEVO2の勇ましさはランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジアならではの魅力といえ、SC63でWECへ新たに挑むなど、ランボルギーニとモータースポーツの距離はますます近くなっている。個人的にはヴァレルンガへ各国から”ファイティングブル”が集結する姿を見てみたくなった。