初代ランサーに続いてラリーで活躍
三菱と言えばラリー、ラリーと言えば三菱。そして三菱のラリー用マシーンと言えば昔ランタボ、今ランエボ。……という訳で、久しぶりの「魅惑の自動車カタログ・レミニセンス」、今回はランタボことランサーEXターボのカタログをご覧いただこう。
【画像18枚】今なお根強い人気のランタボ、その初期カタログを見る!
ランサーEXは、三菱の小型セダン、ランサーのモデルチェンジによって1979年3月に登場した。先行してFF小型車のミラージュがデビューしており、このミラージュとギャランΣの間を埋めるモデルとして、ランサーEXはわずかにランクアップした形となる。初代ランサーにはセダンにも2ドアと4ドアがあり、さらにバンも用意されていたが、ランサーEXは4ドア・セダンのみとなっていた。エンジンは1.4Lと1.6Lの4気筒があり、レイアウトはFR、サスペンションはフロントがストラット、リアが4リンクとなる。
デビュー後数度の改良により、エンジンにはさらに1.8Lと1.2Lが加わって、ラインナップは充実していったが、そこへ1981年11月に追加されたハードモデルがターボである。これは1.8L OHCのG62Bにターボを装着したエンジン(135ps)を搭載したもので、もちろん足周りなども強化されていた。グレードはGTとGSRのふたつがあり、GTはランサーEXデビュー当初から、そしてGSRは1.8Lが追加されたときから、それぞれ存在していたネーミングであった。GTの方が簡素なモデルとなっており、時計もラジオも付いていないので、競技用のベース車両という位置づけになろうか。
「マニアのガレージ」といった趣の、建物内に収まるランサーEXターボが表紙となる。黒いボディにオレンジのウィンカー、オレンジの文字、オレンジのフロアジャッキと、上手い具合に色調がまとめられている。
このターボは、以前からヨーロッパ向けとに2Lのターボが存在していたのを、諸事情により排気量を減らして国内向けにもラインナップしたかたちである。ターボ登場より前からラリーやダートトライアルで活躍していたランサーEXだが、ターボによってその戦闘力は大いに向上し、国内・国外問わず好成績を収めるようになったのであった。1983年11月にはインタークーラーが装着され最高出力は160psにアップ、また、インタークーラーなしのGSLターボというモデルも加わっている。このあたりで、すでに旧態化は目立ってきていたのだが、以後も硬派なスポーツセダンという独特のキャラクターで、1987年まで生き延びた。
イメージ優先な部分は少なめなカタログ
さて、ここでお目にかけているのはそんなランサーEXのうち、ターボのみを掲載したカタログである。サイズは294×255mm(縦×横)、表紙を含めて全12ページ。掲載されているのは初期のターボであり、発行年月も「(81-10)」との記載から1981年10月と思われるので、ターボのデビューと同時に用意されたものであろう。表紙にもある通りGSRとGTの両グレードが掲載されているが、内容としてはGSRがメインとなっている。
カタログ全体の印象としては、ページ数が少ないこともあり、ターボの高性能ぶりやスポーティな走りを支える各種装備が具体的にアピールされていて、イメージ主体の部分は少ない。表紙を開くとすぐ次のページでは、派手なグラフィックのターボの写真に「ゼロヨン加速16.0秒」の文字が添えられている。この0-400m加速は、後のインタークーラー付きでは15.5秒になるとのことだ。インテリアのページではシートの紹介が大分小さく、またメカニズムの面でもトランスミッションの解説が皆無である点は若干気にかかる。
表紙の写真は、マニアのガレージといったムードで撮影されており、スポーツ走行の爽快感のようなものはもちろん表現されておらず、悪く言うと少々「閉じた」感じがある。旧世代のスポーツセダンといった印象で、他からは隔絶した存在として屹立し続けたモデルライフ後半が、ここですでに暗示されているようにも見えるのであった。