アオシマ往年の名物シリーズ、Sパッケージ
「バブル期を象徴するクルマ」と言えば、日産車ならY31型系の初代シーマやグランツーリスモであろうが、内容だけを見れば、次世代のY32型系セドリック/グロリアも負けてはいないだろう。開発期間がバブル期にあたったため、ふんだんにコストをかけて設計されただけに、室内の間接照明などのムダに凝った装備は、今も語りぐさとなっている。
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Y32型のセドグロは、先代で好評を博した方向性をさらに拡張して1991年6月に発表された。特にグランツーリスモは、エアロパーツで武装するというだけでなく、丸型4灯ライトを装備する独自のフロントマスクを与えられたのが特徴的である。エンジンはV6 3LツインカムターボのVG30DETなどを搭載、その走りは先代以上にユーザーを魅了し、販売台数では230型系以来久々にクラウンを上回ったという。
プラモデルは先代同様にアオシマが1/24スケールで発売したが、Y31とは違い他社からのキット化はなかった。アオシマ製品の常として、ノーマル状態だけでなく様々なバリエーション展開がなされたが、ここでお目にかけているのは「Sパッケージ」シリーズ版グロリアの作例である。これは自動車模型専門誌「モデルカーズ」267号(2019年)のセドリック/グロリア特集に合わせて制作されたものだが、そこで掲載された作者自身による解説を以下に引用しておこう。
「今回は、アオシマ製Y32グロリアのSパッケージ版を制作してみた。Sパッケージとはかつて存在していたアオシマ製キットのシリーズで、人気の社外パーツでドレスアップした状態を再現できるものである。SパッケージVer.Rといった派生シリーズもあったが、Sパッケージ自体はそれらとは違い、派手過ぎないエアロパーツをまとった、“大人の”チューンドカーであった。
ビートからシーマまで、そのラインナップはアオシマ製キットを横断したものとなっていたが、どちらかといえばビッグサルーンが多い印象である。もっともこれも、アオシマのモデル化車種を反映したものとは言えるが。いつから開始されたシリーズか今となってははっきりしないが(No.1はなんとイプサムであった)、1990年代の実車世界のトレンドを明確に反映したものと言えるだろう。
さて、制作したSパッケージ版グロリアは、ホイールはシュタークⅠ、バケットシートはブリッドのものが2種類、さらにブーメランアンテナ2種類などがセットされたもの。エアロパーツに関しては特に明記されていないのだが、あるいはアオシマのオリジナルデザインであろうか? 実車の純正オプションで用意されていたサイドスカートやリアアンダープロテクター、リップスポイラーやリアスポイラーに似たデザインのものだが、それぞれ形状がすこしだけオーバーになったような感じだ。
パッケージイラストがなかなか格好良いので今回はこれを再現することとし、選択式のパーツはイラストに沿って選んでみた。イラストは純正色とするとラズベリーレッドメタリックと思われるので、実車のこの色を参考に、スポーティさを加味して意識的に若干明るく調色してみた。……というのは全くの嘘で、調色に失敗して色味を再現できなかっただけである。
目元の表情、ピラーからルーフにかけてのラインなどを修正
キットそのものは20年近く前のものと思われ、デカールは劣化が著しく使用に耐えない状態となっていたので、スキャンした画像データを元に新たに起こしている(協力:秋葉征人/瀧上徳和)。せっかくの新規デカールのため、車検ステッカーなどはイラストには描かれていないが、作例は使用して仕上げた。
実車のY32系にはセドリック/グロリア、シーマ、レパードJ.フェリーの3バリエーション(4車種)があるが、アオシマではその全てをキット化している。ただし、シーマおよびJ.フェリーと比べると、セドグロの出来栄え(主に外観に関してとなるが)は若干落ちるようだ。ボディ形状について、実車とはバランスの異なる点が多々見受けられるのである。作例では修正の容易な点をいくつか加工した。
まず最も目立つのはフロントマスク。違和感を検証してみたところ、ヘッドライトの開口部が小さいようなので、くり抜いて若干拡大してみた。また、ボディとバンパーのコーナー部に余計な贅肉がついて顔の輪郭が下膨れに見えるため、削り込んで改修を試みている。この他、Aピラーからルーフにかけてもラインに乱れが見うけられるため削ると同時に、キットでは捉えきれていないエッジを立ててみた。また、シャシー裏面にも若干のディテールアップを行っている。エンジンはY31シーマとほぼ同じ外観のものなので、これを移植するのも面白いだろう」