おやおや、最近では日村さんも乗っているそうですねぇ…「日産フィガロ」の1/24ミニカーを『相棒』仕様に!前編【モデルカーズ】

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パイクカー第三弾は優雅なクーペ

フィガロは、1980年代後半から日産が進めていたパイクカー戦略の1台として誕生した。「パイク(pike)」とは、槍や鉾、ひいては「尖ったもの」という意味である。とんがったクルマ、つまり時代の最尖端を行く自動車ということになるが、その結果として生まれたフィガロは、実に丸い。丸くて尖ったクルマ、それがフィガロであると言えるだろう。

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パイクカーの第一弾は、1987年に発売されたBe-1である。これは当時の日産マーチをベースに、すこし丸みを帯びた、どこかノスタルジックなボディを架装したモデルであった。前年の東京モーターショーで発表され、翌年に限定販売。あまりの好評に台数枠を拡大したほどで、これを受けてパイクカー第二弾としてPAO(パオ)が登場。これは1987年にやはりモーターショーで発表、1989年に発売されている。フィガロはパイクカー第三弾として1989年の東京モーターショーで発表、1991年に発売された。

フィガロのコンセプトは「日常の中のちょっとしたお洒落、優雅な気分を気軽に楽しめる個性的なパーソナルクーペ」。Be-1、PAOが2ボックス・スタイルを採っていたのと対照的に3ボックスのクーペ・スタイルであったが、ただのクーペではなく、キャビンのサイドを残してルーフ(布地)からリアウィンドウにかけてが開閉する、フルオープントップとなっていたのが特徴である。またクーペであるため、後席は完全に+2として割り切られている。

そのボディスタイルは、Be-1やPAOよりも強くレトロ感覚を打ち出したもので、多用されたクロームメッキがそれを強調している。1930年代のダットサン・ロードスターやアール・デコがその発想源となったと言われているが(ただし日産からの公式な発言としてそれが記録されているのかは不明)、つるんと丸いそのボディ形状は、むしろ1950年代の、フェンダーとボディの完全な一体化が果たされ始めたポンツーン(ポントン)・スタイルを思わせる。

さらに言えば、そうしたスタイルが形になり始めた1940年代の車種に近いものがあり、その観点からすると非常に興味深いのが、1941年に発表されたクライスラーのコンセプトカー、サンダーボルトである。これはフェンダーとボディを完全に一体化したバスタブ型ボディの2ドア・クーペで、しかも電動でルーフがボディに収納されるクーペ・コンバーチブルなのだが、フィガロも開いた幌はボディに収納される仕掛けとなっており、その作動の様がよく似ているのだ。

そうかと思えば、縦に並べた丸型のテールランプには、日産のフェアレディ(初代:フェアレデーおよび二代目)なども想起させられる。こうした考察を述べてみたのは、「元ネタ探し」というような無粋な意味ではなく、フィガロの持つ「お洒落」「優雅」といった感覚が、様々な広がりを持つものであることを言いたいがため、と思っていただきたい。一方、このボディにはリサイクル可能な樹脂外板のフレックスパネルが使用されているのも特筆すべきであろう。これは成型の自由度が高く軽量、錆びないといった利点があるほか、軽衝突時には形状の復元性があるのも特徴で、Be-1以来パイクカー・シリーズで採用が継承されたものである。

Be-1とPAOがそうであったのと同じくフィガロもベースはマーチであるが、具体的にはターボ仕様が用いられている。エンジンは1Lの直列4気筒OHCターボであるMA10ETで、最高出力76ps。変速機は3速オートマチックが組み合わせられた。インテリアはもちろんマーチと異なる専用のもので、エクステリア同様にレトロかつ高級感のあるもの。シートにはアメリカ製の本革が用いられていたが、そのカラーはオフホワイトのみの設定。一方、ダッシュパネルはボディカラーの同系色で仕上げられていた。

フィガロの販売にあたっては、限定総台数の20000台を3回に分けて抽選するという方法を採用。パイクカー・シリーズはこれで終了となったが(ラシーンをその続きとする見方もある)、後年になって思わぬところから人気が盛り上がった。イギリスでとある中古車業者が日本から輸入して販売したところ、女性を中心にそのファッション性が大いに注目を集め、6000台ものフィガロがイギリスへと渡ったというのである。この人気はアメリカなど他の国にも飛び火し、また日本でもテレビでの露出が増えたことで、再び注目が集まっている。

1/24プラモ化を期待しつつ、ミニカーを分解・再塗装!
日産パイクカー・シリーズは、その人気に反してプラモデル化が少なく、Be-1がバンダイによる1/24スケール・モデルとタミヤによるミニ四駆(1/32スケール)となっている以外に、キット化はない。フィガロの1/24モデルの登場は非常に期待されていたところだったのだが、それは思わぬところから実現した。アシェットが展開するミニカー付きブックの「国産名車コレクション」によって、ダイキャストモデル化がなされたのである。

ここでご覧いただいている作品は、この1/24ミニカーを分解・再塗装し、各部をディテールアップして再組み立てしたものだ。シャシーは前述のバンダイ製Be-1のものを流用し、元のミニカーでは省略されていたステア機構の実現も行っている。だが何よりの特徴は、ボディをブラックでペイントすることで、テレビドラマ『相棒』に登場した車両を再現したところだ。その工程については、制作中の写真およびそのキャプションをご参照いただきたい。

作例制作=坂中善之/フォト=服部佳洋 modelcars vol.295より再構成のうえ転載

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