伝統のエンジン車か革新のEVか――? メルセデスのミドルセダン、EクラスとEQEはどちらがオススメ?

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メルセデスのBEVブランドとしてスタートしたメルセデスEQ。そして2022年9月に満を持して導入されたのが、EV専用プラットフォームを採用したミドルセダンのEQE。同モデルは、エンジン車のEクラスに相当するモデルだ。ここではこの2台を全方位から比較し、走りのテイストや使い勝手がどう違うのかを検証してみる。

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EQEが取捨選択した伝統的な価値とは

今回はEQEのベースグレードであるEQE 350+に試乗。他にはAMGモデルであるEQE 53 4マチック+もラインナップされている。

メルセデス・ベンツの電動車ブランドであるメルセデスEQの展開は、新たな段階に突入している。2018年にエンジン車派生のEQCを発表して以来、EQA、EQBの順で投入。そして2020年、BEV専用プラットフォームを採用するEQSを発表。続いて2021年、プラットフォームを共有するEQEが誕生したのだ。

モデル名の3文字目は、エンジン車のクラスに相当する。EQBまではGL系派生となるが、セダン系のEQSからはデザインやパッケージングがエンジン車とは別路線。ここで紹介するEQEも、Eクラスとは似ても似つかない。ならばまったくの別モノなのか、どちらがオススメなのかという疑問がこのページのテーマだ。

試乗したのは、EQEの350+とE220dだ。EQEのデザインは、エンジン車のCL系に通じる4ドアクーペで、ワンボウラインと呼ぶ弓型に弧を描くフォルムを採用。ただ、エンジンを積まないのでフロントのオーバーハングが短く、ホイールベースは3120mmとSクラスロングの3215mmを超える長大ぶりだ。

なるほど、男性としては大柄な筆者が前席で最適な運転姿勢を選び後席に移っても、膝の前には握り拳を縦にして2つ入るスペースが確保される。ただ、頭上スペースは天井との間に手の平がギリで入る程度。前方視界から得るスペース感も広々とはしていないので、くつろげるのはEクラスの方だ。

前席でも、最適な運転姿勢を選ぶと直前のモニターがステアリングに隠れてしまう。しかも、ボンネットがまったく見えない。Eクラスは、筆者の運転姿勢でもボンネットがよく見えるので車両感覚がつかみやすい。というより、ボディサイズが大きいメルセデス・ベンツは車両感覚がつかみやすく最小回転半径も小さかったので運転がラクという魅力があった。

ただ、EQEはリア・アクスルステアリングを装備するため、低速域では後輪が前輪に対して逆位相で大きく切れる。最小回転半径は4.9mとAクラス(ボンネットは見えにくい)よりも小回りが効くので、車両感覚ウンヌンはさて置きということなのだろう。

ちなみに、60km/h以上になると後輪は前輪に対して同位相に切れる。それでも、ステアリング操作に対する応答性はかなり鋭い。手応えも軽めなので、メルセデスEQならではの展開として新たな味わいになりそうだ。

EQEは、最高出力292ps、最大トルク565Nmを発揮するモーターが後輪を駆動。床に敷き詰められたバッテリーによる走行距離は、624kmに達する。アクセル操作に対する力強さの立ち上がりは、トルクの強大ぶりを余計に演出することがなく滑らか。このあたりは、メルセデス・ベンツの伝統を守っている。

ただ、アクセルを踏み続けてもパワー感が伸びることはない。加速の勢いを際立たせる、エンジン音が重ならないことも理由となる。EQEでも音の演出は選択可能だが、その度合いは控えめだ。刺激を望むなら、626psを発揮する高性能版のメルセデスAMG EQE53でどーぞということなのかもしれない。

エンジン車の味わい深さと無限の可能性があるBEV

2016年に登場した現行Eクラスは、2020年に内外装を大幅刷新。パワーユニットは、ガソリン、ディーゼル、PHEVなど全8種類を用意。

メルセデス・ベンツは、2030年までにBEV(地域によりという注釈つき)ブランドになると発表済みだが、Eクラスが役割を終えそうなわけではない。2Lの直4ディーゼルターボは、アイドリング中にかすかにコロコロという音と微振動を伴う。だが、EQEから乗り換えるとエンジン車の味わいのうちと好感を覚えてしまう。

力強さの立ち上がりは、少しばかり唐突感がある。ただ、トルク特性が自由自在になるEQEと比較してのこと。220dのエンジンは、ISG(モーターを兼ねたジェネレーター)を組み合わせるのでむしろトルク変動が抑えられているのだが、BEVの滑らかさにエンジン車は追いつけない。

なので、EQEがオススメということになりそうだが、結論はまだ先だ。アクセルを踏み続ける場面での加速は、タイム計測をすればEQEが勝るはずだ。ただ、Eクラスはたとえ最高出力が200psでもエンジン音が加速の臨場感を演出してくれる。回転数の上昇に合わせて、グォーンという音量も増してくる。快音とは呼べないしディーゼルなので加速の勢いが持続するのは4000rpmあたりまでだが、やはりエンジン車ならではの味わいとして理解できる。

風切り音やロードノイズを含めた静粛性については、EQEの方が優れている。風切り音については、いかにも空気と一体化しそうなフォルムの効果といえる。もちろん空気抵抗も極小であり、航続距離が伸びることも間違いない。実は、ボンネットが見えない理由にもなっている。

さて、結論だが、慣れ親しんできたエンジン車ならではの味わいがあるEクラスをオススメとしたい。EQEは、伝統的なメルセデス・ベンツらしさからもかけ離れた存在だと思う。ワンボウラインにこだわりすぎたともいえる。

とはいうものの、BEV専用プラットフォームを採用するEQEを含むメルセデスEQの展開には無限の可能性がある。室内スペースの大幅拡大が期待できるEQE SUVもすでに出番待ちだ。

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツE220dスポーツ
■全長×全幅×全高=4940×1850×1455mm
■ホイールベース=2940mm
■車両重量=1870kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1992cc
■最高出力=200ps(147kW)/3600rpm
■最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/40R19:275/35R19
■車両本体価格(税込)=9,030,000円

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツEQE350+
■全長×全幅×全高=4955×1905×1495mm
■ホイール SPECIFICATIONベース=3120mm
■車両重量=2470kg
■電気モーター種類=交流同期電動機
■総電動圧=328V
■最高出力=292ps(215kW)/3559-15913rpm
■最大トルク=565Nm(57.6kg-m)/0-3559rpm
■サスペンション(F:R)=4リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/45R19:255/45R19
■車両本体価格(税込)=12,480,000円

フォト=郡 大二郎 ルボラン2023年4月号より転載

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