「これ以上を望むならコルベットをどうぞ」
なんでもないコンパクト・セダンのシャシーを利用し、その上にスタイリッシュな2ドアクーペ・ボディを被せたスペシャリティカー。1964年にフォード・マスタングが切り開いたこのジャンルには他のメーカーも次々と参入、そうしたクルマたちは「ポニーカー」と呼ばれるようになった。シボレー・カマロも、そうしたポニーカーとして世に出た1台である。
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カマロは1966年に1967年型としてデビューしたが、そのコンポーネンツはシェビーⅡのそれを利用したものであった。オプションパーツを豊富に用意した点もマスタングに似たものだったが、そのスタイリングはよりスポーティさを強調したものだった。登場4年目の1970年型で、カマロは兄弟車ポンティアック・ファイアーバードとともにモデルチェンジを実施。カマロの方は慣例通りの前年秋の発売ではなく、遅れて1970年2月のリリースとなった。この措置は、1969年型の在庫を捌くためだったとも言われる。
二代目カマロは構造的に大きな変化はなく、ホイールベースも前年のままで、基本的にはスキンチェンジと言ってよいが、全長は伸ばされていた。新たなボディは欧州製のスポーツカーを思わせるもので、乗車定員を5名ではなく4名と割り切り、スマートなプロポーションを実現。先代はノッチバック・クーペだったが、この二代目ではファストバック・スタイルを採っている。ボディサイドのくの字断面や、リアエンドの形状などには、フェラーリのディーノなどを思わせるものがあった。
フロント周りのデザインには2種類あり、ベーシック・モデルでは丸2灯ライトに一本のフロントバンパー、その下に配置されたパーキングランプを持つ。もうひとつのフロントマスクは、バンパーが左右に分割され、グリルとヘッドライトの間にパーキングランプが小さな円形で配されるというものであった。このフロントフェイスは、外観のみのオプション・パッケージであるRSで用いられる。ややこしいのは、SSやZ/28といった他のモデル(パッケージ)でも、このRSが選べることだ。
搭載エンジンは230-cid(3.8L)の直6(140hp)がベースユニットで、V8では307-cid(5L、200hp)が標準となる。オプションパッケージのSSには350-cid(5.7L、300hp)と396-cid(6.5L、350hp)の2種類が設定されており、Z/28では同じく350-cidのみとなるが、こちらは360hp仕様とされ、ラインナップ中最も強力なエンジンである。ここからも分かる通り、Z/28がシリーズ中最も本気なハイパフォーマンス・モデルだ。記事冒頭に掲げた文言は、カタログのZ/28のページに書いてある言葉である。
それを反映するように、Z/28ではラジエターやサスペンションが強化タイプとなり、デュアル・エキゾーストやリアスポイラーも装備される。そのほか、外観では専用のストライプ、インテリアでは木目のメーターパネルとステアリングスポークなどが奢られている。「Z/28」とは、オプションコードをそのままモデル名にしたものだが、室内装備のみ同様の場合はZ/23というコードとなる。
後のバージョンでは改められた欠点もあり
1970年型カマロの1/25スケールのプラモデルには、AMTから実車と同時にリリースされたもの(所謂アニュアルキット)があるが、同社では2000年に新規金型でキット化し直している。これは454-cid(7.4L)エンジンを積むBALDWIN MOTION(ボールドウィン・モーション)仕様としてリリースされたものだったが、これのバリエーションとして翌年に発売されたのがZ/28である。以後も何度か両仕様ともに再販されているほか、近年ではパーツの追加により1本バンパー(フルバンパー)・タイプのZ/28も製品化されているが、作例は、2001年版のZ/28(30086)を制作したものだ。
ボールドウィン・モーションとZ/28、両キットは基本的には同じものだが、ボンネットやグリル等がそれぞれの仕様になっており、2 in 1ではなく各仕様にしか組めないものなので、購入する時は注意が必要だ。キットの内容は標準的なものであるが、説明書の部品番号が間違っていたり、ホイールなど説明書ではメッキと書かれていても実際は違っていたりと、チグハグなところがある。
ボディは全体のフォルムは良いのだが、細かいところでいくつか問題点がある。その第一は、ヘッドライト周りの印象が良くないこと。ライトリムが厚く、形状も少し違うようだ。おまけにパーティングラインとも重なっていて、輪郭がアヤフヤな所がある。ここの修正はかなり難しいので、手をつけないで輪郭のスジボリをハッキリさせる程度に止めておいた方が無難だろう。
第二の問題点は、「Z/28」のエンブレムがグリル内のものしか無いこと。ドア前とスポイラー中央のものはモールドもデカールも付属していない。これは他仕様とのボディ共用の弊害だが、せめてデカールだけでも付けて欲しかった(注:フルバンパー仕様ではデカールが付くようである)。ほかには、ルーフ中央とフロントフェンダー前部に見られるヒケや、段差になってしまっているパーティングラインも気になる。これらは修正が必要である。
インテリアはメリハリも利いていてとても良い。注意点としては、押しピン跡がフロアや天井にあり、かなり目立つので整形が必要なこと、シートの合わせ目に隙間が少し生じるので調整が必要なこと、ルームミラーのパーツがキットに無いので何かしらの流用が必要なこと、の3点がある。
シャシーはモールドも良くすばらしい。手を加えるとするならば、サブフレーム上面が凹状となっているので、ここをパテ等で塞いでおくとよいだろう。このサブフレームは、説明書ではシャシーパネルと一体にしてからボディにセットするよう指示されているが、ボディにリアパネルやフロントのバランスパネルを先付けした場合はセットできなくなるので、注意が必要だ。エンジンはそのまま組んでも充分な出来。手を加えるとすればオルタネータの支持ステーをプラ板等で追加するのと、プラグコードの配線を施すことぐらいだろう。