総合優勝を果たせば、アメリカ勢としては数十年ぶりの記録に。3台のキャデラックで参戦

キャデラックは、2023年6月に開催される「ル・マン24時間レース」に、新たに「キャデラック・VシリーズR (V-Series.R)」と名付けられた3台で復帰し、ハイパーカー・クラスの総合優勝を競うことになった。キャデラックのグローバル・バイス・プレジデントであるローリー・ハービー氏は、「キャデラック・レーシングのフルメンバーでル・マン24時間レースに復帰できることをうれしく思っています。キャデラック・レーシングは、過去20年にわたり、サーキットでの勝利を積み重ねてきましたから」と語る。

キャデラック・レーシングのラインアップ
キャデラック・Vシリーズ.Rの3台は、2023年1月28日(土)、29日(日)の「第61回 ロレックス・デイトナ24時間」でデビューし、「No.01 キャデラック・Vシリーズ.R」は表彰台を獲得した。「No.02 キャデラック・Vシリーズ.R」は4位、「No.31 ウィレン・エンジニアリング キャデラック・Vシリーズ.R」は5位でフィニッシュした。ル・マン24時間レースでは、カーナンバーを変更したハイパーカー・クラスに参戦し、総合優勝を目指す。

キャデラック・Vシリーズ.Rの2号車は、「FIA世界耐久選手権」にフルシーズン参戦していることから、自動エントリーとなった。ドライバーはアール・バンバー選手、アレックス・リン選手、リチャード・ウェストブルック選手だ。キャデラック・Vシリーズ.Rの3号車は、「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権」にフルシーズン参戦しており、1号車としてレースに参加している。ドライバーはセバスチャン・ブルデー選手、レンガー・ヴァン・デル・ザンデ選手、スコット・ディクソン選手が務める。

311号車ウィレン・エンジニアリング キャデラック・Vシリーズ.Rも、「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権」にフルシーズン参戦しており、31号車としてレースを行う。ドライバーはピポ・デラーニ選手、アレクサンダー・シムズ選手、ジャック・エイトケン選手の3名だ。

GMスポーツカー・プログラム・マネージャーのローラ・ウォントロプ・クラウザー氏は、「キャデラックは、世界で最も過酷なレースのひとつであるこのレースで、国際的に最も優れたドライバーと競い合い、そのレガシーを構築することに興奮しています。私たちはアメリカを代表する存在であり、キャデラック・Vシリーズ.Rは、私たちのレースの伝統を受け継ぐ素晴らしいものであることを誇りに思っています」と語る。

IMSAとWECの耐久レースのトップカテゴリーを収束させるための指針は2020年に発表され、新型レースカーの設計と開発は、直ちに開始された。キャデラック・デザイン、キャデラック・レーシング、シャシー・コンストラクターのダラーラが共同開発したキャデラック・Vシリーズ.Rのデザインは、2022年6月に発表されたプロジェクトGTPハイパーカーが元になっており、このレースカーには垂直方向の照明やフローティングブレードなど、キャデラックの特徴的なデザイン要素が取り入れられている。

キャデラック・Vシリーズ.Rは、ミシガン州ポンティアックを拠点とするGMのパフォーマンス&レーシング推進チームが開発した新型「キャデラック・5.5L DOHC V型8気筒エンジン」を搭載しているのが特徴だ。エネルギー回生システムは、ボッシュ、ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング(現WAE)、エクストラックの3社によって開発された。

「キャデラックがル・マンに復帰し、総合優勝に挑戦することを私たちは楽しみにしています。アメリカのメーカーがこれを達成するのは数十年ぶりのことであり、目標達成に向けて強力にプッシュしていきます」と、ル・マン24時間レースで2度の総合優勝経験を持つバンバー選手は語った。キャデラック・Vシリーズ.Rは、2022年7月にサーキットでの開発を開始し、2023年の「ロレックス・デイトナ24時間」に向け、米国内のレーストラックで12,400マイル(20,000km)以上を走破している。

「このプロジェクトに最初から参加できたことは特別なことだった」とバンバー選手は語った。「2年近く前にシミュレーターでテストして、この旅をスタートしたんだ。この旅は素晴らしいもので、冒険はまだ始まったばかりだ。ル・マンまでの道のりは、きっと素晴らしいものになるはず」

ル・マンにおけるキャデラック
ル・マンに初めて参戦したキャデラックは、1950年にアメリカの起業家でもあるブリッグス・カニンガム氏とアメリカのレーサー、マイルズ&サム・コリアー兄弟によってエントリーした。いずれもキャデラックの5.4リッターOHV V型8気筒エンジンを搭載したシリーズ61クーペだった。マイルズとサム・コリアーは、3号車プチ・パタオを共同ドライブし、総合10位でフィニッシュした。ブリッグス・カニンガムはフィル・ウォルターズと共同でNo.2「ル・モンストル」を操り、序盤にコースアウトするアクシデントがあったものの総合11位でフィニッシュした。同年、シドニー・アラード、トム・コールJr.は、キャデラックを搭載したアラードJ2で総合3位に入賞している。

近年では2000年、2001年、2002年のル・マン24時間レースに、キャデラックの4.0L V8ターボエンジン搭載のノーススターLMPで参戦している。2000年はフランク・ラゴルス選手、ブッチ・ライツィンガー選手、アンディ・ウォレス選手のチーム・キャデラック1号車の「キャデラック・ノーススターLMP」が総合21位、ウェイン・テイラー選手、マックス・アンジェレリ選手、エリック・ヴァン・デ・ポール選手が姉妹車の2号車を駆り、22位でフィニッシュしている。

2001年には、テイラー選手、アンジェレリ選手、クリストフ・タンソー選手の共同開発による「キャデラック・ノーススターLMP01」がLMP900で15位入賞を果たした。エリック・ベルナール選手、エマニュエル・コラール選手、マルク・ホーセンス選手の共同ドライブによる2台目のLMP01は、メカニカルトラブルでリタイヤした。2002年には「キャデラックLMP02」2台で参戦。アンジェレリ選手、タンソー選手、テイラー選手のコ・ドライブで総合9位を獲得した。もう1台のキャデラックLMP02は、ベルナール選手、コラール選手、J.J.レート選手の共同ドライブで、12位でフィニッシュしている。