SSSも登場、方向性が固まった二代目
この新たな連載では、懐かしき自動車カタログのあれこれを紹介していきたいと思う。そこでタイトルには「レミニセンス」という語を使ったが、これは「回想」という意味である。またそれだけでなく、この言葉には「一度記憶した事柄が、それを忘れたり記憶が薄らいだりといった経過を経ることで、以前より却って鮮やかな記憶になること」というような意味もあるようだ。ここではそんな、一旦忘れられたような存在となりつつも今では却って強い存在感を放つようなクルマたち、そのカタログを採り上げていきたい。
【画像12枚】「国際感覚」をアピールする411ブルのカタログを見る!
さて、第1回はタイトルに入れたように、”銭ブル”の愛称でも知られる、日産の二代目ブルーバードである。銭ブルとはもちろん「銭形警部のブルーバード」のこと。アニメ『ルパン三世』において、シリーズ一作目からブルーバードのパトカーが登場、これが映画『カリオストロの城』からは埼玉県警と所属も明確になって強いインパクトを残し、以後の作品でも、銭形警部とともにブルーバードのパトカーが『ルパン三世』の名物となっていった訳である。
厳密には、『ルパン三世』におけるブルーバードは前期型であるので、ここでお見せしているカタログの後期型とは異なる。ただし、銭ブルは前期型とは言えその末期、型式名が410から411に変わった後のタイプで描かれているので、この点は些細なこととして笑っていただきたい。……いや、410だの411だのと話が先走っているので、まず実車について簡単に説明していこう。
カタログのちょうど中央では、左右のページが折り畳みになっており、これを広げると、スタンダードとエステート以外のラインナップが、どーんと展開するようになっている。
1959年に登場したダットサン・ブルーバードは、1963年9月のモデルチェンジで、二代目・410型系へと進化した。モータリゼーションの発展に伴い、自動車が徐々に身近なものになってきたことを反映して、それまでの初代よりファミリーカー的色彩を強めていたことが特徴である。ボディは4ドア・セダンと4ドア・ワゴン、エンジンは1Lと1.2Lの2種類、サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後リーフリジッド。
そのボディスタイルは、イタリアのピニンファリーナが手掛けたもので、欧州製小型車を思わせる小粋な味わいを持つものだったが、下降するサイドラインと下寄りに配置されたテールランプ、また実際にリアオーバーハング下端も低い位置にあったことから、「尻下がり」の悪評があり、人気はいまひとつだった。
登場翌年のマイナーチェンジでは、フロントグリルのデザインを繊細なものに変更し、2ドア・セダンも追加。1965年5月のマイチェンではエンジンを1.2Lから1.3Lに拡大し、型式名も411に移行している。そして1966年4月のマイナーチェンジでは、プレスラインの変更を伴うデザイン変更でリア全体を持ち上げ、テールランプ位置を高くする変更を受けた。この時にようやく商用モデルのバンも追加され、翌年にはBWの3速ATを加えたのち、8月にモデルチェンジを行った。
写真を多く使用した、見ていて楽しいカタログ
……という訳で、ここでお見せしているのは1966年4月~1967年5月までの411型系ブルーバードのカタログである。発行年月の記載は確認できないのだが、3速ATモデルの掲載がないところから、そのように判断した。サイズは297×225mm(縦×横)。このカタログに掲載されているのは4ドアおよび2ドアのセダン、そしてワゴンで、バンを除く全ラインナップが掲載されている。
用紙は厚手のなかなか高級感あるものが使われており、「ファミリーカーだから」というような安っぽさとは無縁だ。カタログは冒頭からデザインの一新が謳われており、これが何よりもアピールポイントだったのであろう。昔のカタログと言うとイラスト主体というイメージが強いが、この頃にはもう写真が主流で、背景にも凝っている……と言うより「やりすぎでは?」と思われる写真もあり、見ていてなかなか楽しい。色々と当時ならではのディテールが興味深いので、詳細は各ページの画像を御覧いただきたい。