なりに成立している形に手を加えるのは至難の業!
いすゞが残した1960年代国産名車の代表格、ベレットGTRと、それを再現したフジミ製1/24スケールのプラモデル、そしてそれを幅詰めするなどして制作した作例については、前編の記事(下の関連記事参照)ですでにご紹介した。この作品は自動車模型専門誌「モデルカーズ」301号(2021年)の特集記事のために制作されたものだが、ここではそのときの、作者・Ken-1氏による解説をお読みいただきたい。
【画像45枚】幅詰め以外にもあれこれと手を加えた制作工程を見る!
「今回の特集は、定番的な国産名車の、現在も比較的入手が容易なキットを改めて今制作すればどうなるか、がテーマということで、僕はフジミのいすゞベレット GTRをチョイスしました。このクルマのキットはフジミから発売されて久しいのですが、ヒストリックカーとしてのベレットの評価が確立したのちの、2000年代初頭に新規でリリースされています。自分的な感覚としては比較的新しいキットなのですが、20年近くの時が流れているわけで……。ということで、今の目でアップデートした完成品を目指してみることにしました。
このフジミのベレット、そのまま組んでもそれなりに雰囲気よく実車のイメージを捉えている良キットなのですが、編集部からの指摘によると1/24に換算すると少し幅が広いんだそうです。確かにちょっと何か印象が違うような気もするけれど、決して悪くはない。ならば今回、その幅を実際の幅にすればもっとしっくり来るベレットになるのでは……と挑戦してみることにしました。
まあ幅を詰めるだけでグッと良くなるだろうとプランを練っていると、色々気がつくことが。どうやらルーフ/キャビンのバランスは悪くありません。ドア部分のショルダー部分のボリュームが大きすぎる感じと、これも編集部から聞いたので、ルーフ/キャビンを切り離し、ボディの幅を詰めて、その後に再接続という手段を取りました。意外と手間が……(笑)。そして実際作業してみると……に、似てない!? 作業前の幅が広いはずの形状だった方がよりベレットらしさがあったような気がします!
しかし、やはりバランス的に実車の形状に近づいてはいるのです。ならばこの違和感の原因はどこに!? ……と追いかけていくと、ボンネット先端からサイドのラインが怪しいように思えたので、上部正面のボリュームを増し、サイド上部は回り込むよう撫で肩となるよう窄め、バンパー上側に少しボリュームを持たせてみました。オタフクのような下膨れ感を加えた訳ですが、これで大きく実車のイメージに近づきました。さらにライトパーツをひと回り大きくすると、見違えるほどベレット感を取り込むことに成功できたと思います。
こんな風に突き詰めて作るもよし、構わず作るもよし
結果的にはハードな改造となりましたが、デザインとバランスの妙と言いますか、元のキットの形状では、細部を突っ込んで見ると正確な形状かと言えば微妙なものの、そのバランスの中でベレットらしさが再現できていたようです。しかし、それを中途半端に正してしまうと、バランスが崩れて全く違うクルマに見えてしまう訳です。それをまた再構築していくという流れは、謎解きのような、パズルのピースを組み立てていくような……。そして答えが見えた時、一気に視野が広がるような面白さがありました。
とは言え、これが唯一の正解で、こうやって作らなければならないという訳ではありません。今回のような一歩踏み込んだ制作は大変ではあるのですが、自分の持つイメージを再現する。これもまた模型の楽しみのひとつとも言えるのではないでしょうか。あくまでも制作例のひとつとして記事を楽しんでいただければと思います」