美しき”アメリカン・クラシックカーの女王”
クーペというボディ形態を語るときには外せない、1940-1941年型リンカーン・コンチネンタル。そのモノグラム製プラモデルと実車については、前編の記事(下の「関連記事」参照のこと)で解説した通りだ。この作例は、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の、美しいクーペを特集した記事(2010年)用に制作されたもの。このコンチネンタルの制作について、さらにはヒートプレスでボディを作るコツについて、作者・周東氏の文章をお読みいただこう。
【画像57枚】一分の隙も無く仕上がったコンチネンタル・クーペとその制作工程を見る!
「エドセル・フォードのデザイン・スケッチから生まれたリンカーン・コンチネンタルは、“アメリカン・クラシックカーの女王”とも言われ、1952年にニューヨーク近代美術館で開催された『8台の自動車』展にもクーペが選ばれている。このようにデザイン的にも高く評価されているクルマなのだが、モデルキットは1/24でモノグラム製の1941年式が、1/25(?)でリンドバーグ製の1948年式が出ているのみだ。しかしいずれもカブリオレのみで、クーペはリリースされていない。
モノグラムのキットは同社のクラシックカー・シリーズのひとつであり、名作キットと言われているものだ。パッケージアートも素晴らしく、インストも趣のあるものとなっている。初版は1967年、今から45年(注:現在=2022年からすれば55年)も前のもの(No.PC174)だが、今の目で見ても作りやすく、イメージもとても良い。作例で用いたのは1988年の再販品(2312)だが、1994年には初版パッケージの復刻版(No.は同じくPC174)もリリースされるなどしており、入手は比較的容易だ。キットのままカブリオレとして組む場合、ボンネットの収まりとヘッドライトベゼルのゲート処理、スカットル前のボディ両サイドのヒケの対処さえすれば問題なく組める。
さて作例の、クーペへの改造だが、難易度は少々高い部類となる。本作例のようにフロントウィンドウまで含めて作るとなると、なおさら難しくなる。これはAピラーの角度の付け方(内側への傾きおよび後側への傾き)が微妙なためだが、この角度が違っていると全体のイメージもかなり違って見えるものだ。市販されている色々な車種のキットの中にも、この角度が違っているためイメージを悪くしているものが見受けられる。
ヒートプレスの利点、コツ、注意点
それはさておき、流用可能なルーフを持つキットがあればルーフ部分を移植すればよいのだが、これがなかなか見つからない。無い場合は自分で作るしかないが、作り方にはいくつかの方法がある。似たようなルーフを持ってきて削ったりパテを盛ったりして作る方法、プラ板を積層したり箱組みしたりして成形する方法、原型を作りレジンに置き換えたものを使う方法、同じく原型を作りヒートプレスあるいはバキュームフォームしたものを使う方法、などなど。
いずれにも良い点、悪い点があり一概には決められないが、本作例ではヒートプレスを選んでいる。この方法は、他のやり方よりも歪みが出にくく、プラ製のボディへの接合や後処理が楽なこと、および肉厚を薄くできること、コストが安いことなどがメリットである。同一の型で作ってもせいぜい3〜4台、量産するわけでもないので、この方法が私には一番合っていると思っている。
『ヒートプレスのコツは?』と展示会等で聞かれることがある。そんな時私は、『必要以上にプラ板を熱さず、必要以上に力を入れすぎず、原型を包み込むようにすればよい。あとは慣れるだけ』と説明しているが、言葉や文章では上手く伝わらない。そう、慣れが必要な技法なのだ。まずは簡単なものからトライして慣れるのがよい。でも、くれぐれもヤケドと火事に注意!」